「ペットにハリネズミ」が流行中
夜の「たわしタイム」が愛おしい〈AERA〉
2017年3月26日(日) dot
「ハリ会」に集まったハリネズミたち。手作りの帽子をかぶって記念撮影した。インスタグラムから
20~40代を中心に、ハリネズミを飼う人が増えている。
飼い主たちはインスタグラムで情報交換し、「ハリ会」なるオフ会に集うという。
居間の片隅に置かれた、カバーに覆われたケージ。
のぞき込むと、ソフトボール大にまるまったハリネズミが顔を見せた。
「こんなに素晴らしい生き物はいません」
飼い主で会社員の近藤千尋さん(37)は、「たわし」と名付けたハリネズミを手のひらにのせて、そう顔をほころばせた。
都内のマンションで一人暮らしの近藤さんは2年前の春、ペットショップでハリネズミと出会った。
生後1カ月、わずか100グラムの小さな体に心を奪われ、手の上にのぼってきたメスを飼うことにした。
●狭くても飼いやすい
ハリネズミは夜行性なので、仕事から帰宅した夜の1時間ほどが「たわしタイム」だ。
ケージから出して、一緒に遊ぶ。
「たわしと遊んでいると緊張が緩んで穏やかな気持ちになります。仕事モードからリラックスモードへの切り替えもできるようになりました」(近藤さん)
ハリネズミの飼育頭数が急増していると話すのは、ハリネズミの飼育書などの監修もしている獣医師の三輪恭嗣さんだ。
三輪さんが院長を務める東京・駒込のみわエキゾチック動物病院には、最近、1日に20~30匹ものハリネズミが来院するという。
「4、5年前から急増し、いまでは来院する動物の2~3割がハリネズミ。見た目がかわいくて、マンションなど狭いところでも飼いやすい。人にもよく慣れる。飼い主は、以前は変わった動物好きの男性が多かったのですが、最近は幅広い層に受け入れられていて、20~30代の女性が増えてきました」
とはいえ、犬や猫ほど一般的なペットではない。
情報交換の場となっているのがインスタグラム。
「#ハリネズミ」で検索すると30万件以上ヒットする。
雑誌でハリネズミを見かけたのをきっかけに2年半前から飼い始めた横浜市在住の女性(33)は、「mugi」と名付けたハリネズミの情報収集のためにインスタを始めた。
ハリネズミは偏食で個体差も大きい。
専用ペットフードもあるが、そのままでは食べないこともある。
「インスタで質問すると、ペットフードを水でふやかすといいとか、どのヒーターがいいとか、経験談がすぐ集まるんです」
いまではすっかり使いこなし、インスタで知り合った飼い主仲間が集まる「ハリ会」にも顔を出す。
ハリネズミを連れていくこともあるという。
「オフ会には参加したことがありませんでしたが、ハリネズミの情報収集のために参加するようになりました。珍しい動物を飼っている飼い主はみんな手探り。連帯感も強いんです」
●冬眠しないので暖かく
この女性と前出の近藤さんも、ハリ会で知り合った。
「たわしを通じて人脈も広がりました」(近藤さん)
飼育書や診てくれる動物病院も増えてきたが、「かわいい!」と飛びつく前に知っておいてほしいこともある。
ペットのハリネズミのほとんどは「ヨツユビハリネズミ」という冬眠しない種だ。
冬はヒーターなどで保温が必要。
また、ダニが寄生していたり、カビに感染していたりすることがあるし、メスには子宮の病気も多い。
購入時にダニがついてきてしまうこともあるので、「症状がなくても動物病院に連れていき、駆虫剤を投与しておくと安心です」(三輪さん)
(編集部・長倉克枝) ※AERA 2017年3月27日号