盲導犬利用者に声掛けて 支援の缶バッジ
2017年1月30日(月)中日新聞
「盲導犬総合支援センター」が製作した盲導犬利用者への声掛けを促す缶バッジ
「『お手伝いしましょうか』の声かけをお願いします」-。
視覚障害者の駅ホームからの転落事故が相次ぐ中、一般社団法人「盲導犬総合支援センター」(横浜市)がインターネットで資金を募り、こんな文字が書かれた缶バッジを盲導犬利用者に贈る活動を始めた。
「利用者に着けてもらうことで声掛けを促し、不幸な事故をなくしたい」という願いが共感を広げている。
支援金は一口千円。
同センターのウェブサイトから送ることができる。
昨年8月に東京メトロ青山一丁目駅ホームで起きた盲導犬利用者の転落死亡事故を受け、センターには「困っている盲導犬利用者がいれば助けたいが、どうしたらいいか」との声が多く届いた。
一方で利用者からは「助けを求めたいが、ためらうことがよくある」という声が上がっていた。
それぞれの思いをつなごうと、センターの岩間智美さん(26)は妊婦への思いやりを呼び掛けるマタニティマークをヒントに、缶バッジ製作を思い付いた。
今月7日に資金の募集を始めた直後の14日、埼玉県のJR蕨(わらび)駅のホームで、盲導犬利用者の転落死亡事故が発生。
「声掛けの徹底があれば防げたかもしれない」と、ツイッターで活動をPRすると、障害者スポーツ支援にも力を入れる元陸上ハードル選手の為末大さんが共感しリツイート(転載)。
17万件以上の反応があり、27日までに計43万6千円が集まった。
2月以降、3百個の缶バッジを作るめどが立った。
岩間さんは「予想を上回るペースで多くの支援が寄せられた」と感謝する。
センターによると、全国の盲導犬利用者は約960人。
横浜市港北区の盲導犬利用者、碇谷(いかりや)純子さん(53)は既に缶バッジを着けて外出している。
過去に二度、ホームと電車の隙間に落ち、体が挟まった。
「転落防止にホームドアの設置は効果的だが、乗り降りの際の事故までは防げない。声を掛けてもらうことが最大の防止策」と話す。
使い慣れた駅でも、人や荷物などを避けているうちに思わぬ方向に歩いていることも。
「声がする方向に手助けを求めようとするが、近づくと声をひそめ気配を消してしまう人もいる」という。
碇谷さんは「声掛けは手の甲や肩をトントンとたたきながら正面か横方向から。誘導は『あっち』『こっち』ではなく『正面』『右』などと具体的な指示を出し腕を支えながらしてくれるとありがたい」と話す。
問い合わせは、月-金曜の午前10時~午後5時に同センター=電045(949)0323=へ。
(加藤豊大)
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