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一斉不妊手術で減らせる野良猫と子猫の悲劇

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猫ブームの光と陰
一斉不妊手術で減らせる野良猫と子猫の悲劇

2016年12月7日 経済プレミヤ 駅義則/ジャーナリスト

不妊手術・現場ルポ(2)
猫の不妊手術リポート、今回は新潟市で見た手術の光景を紹介する。
獣医師の腕がよく、通常であれば1匹あたり10分もかからない。
人間の身勝手な見方かもしれないが、出産を続けることによる母体への負担や、大量に繁殖した野良猫の子猫が死んでいく不幸の連鎖の重さに比べれば、不妊手術を「かわいそう」とは言えないというのが筆者の思いだ。
新潟市の東のはずれ、新潟東港の公園にすみついた野良猫を集めた公益財団法人「どうぶつ基金」(兵庫県芦屋市)の一斉不妊手術。
1日半で59匹の猫に手術を施した。
全身麻酔を受けて抗生剤やワクチンを打たれた後、不妊手術の証しである耳先の「V字カット」をされた猫たちに対して、獣医師2人が慣れた手つきで執刀にあたった。

オスは数分、メスは10分程度の手術
性別によって手術の過程は大きく異なる。
オスの場合は局部周辺の毛を丁寧に剃った後、メスを使って睾丸(こうがん)の間に切れ込みを入れ、中から精巣二つをつまみ出して結合部をさっと切断する。
最後にキズ薬と消毒薬を注入しておしまいだ。
この間、せいぜい数分程度。


オスを手術台に安置=駅義則撮影

一方、メスはすべての足をひもで手術台に固定する。
バリカンで毛を剃られた下腹部一体に消毒薬を塗った後、数センチの傷をつけ、ピンセット状の器具で押し広げる。
専用器具を傷口に差し込み、子宮と卵巣を注意深くすくい上げて結合部を縛り、手順を踏んで丁寧に切断する。
そして薬を注入した後、溶ける糸を使って傷口を丹念に縫い合わせる。
メス猫が妊娠していた場合は堕胎を行うため、かなりの手間を要する。
しかし、そうでなければ10分もあれば手術が完了する。
性別を問わず、大量の出血は見られなかった。


下腹部をバリカンで剃られるメス=駅義則撮影

ひと晩静養させた後、元の場所に
手術が終わると背中に生理食塩水を注射し、水分補給をする。
麻酔が効いている間、猫はずっと目を開いているため、眼球の乾燥を防ぐため目薬をさす。
そしてケージや捕獲器に戻して別の保管場所へ。
麻酔が切れた後にひと晩静養させた後、元の場所に放す。
飼い猫の場合は、手術後に傷口をなめて開いたりしないようにするため、首の周りに「エリザベスカラー」と呼ばれる円錐台形の保護器具を一時的に巻き付けたり、退院後のために抗生物質を処方したりすることもある。
どうぶつ基金が手がける野良猫の手術ではそこまではしないが、手術後に死亡することは極めて稀だという。
麻酔をするとはいえ、痛いし、怖いだろうな、とは思う。
手術中に足をピクっと振るわせる猫もいる。
だが、出産を繰り返してボロボロになったメス猫や、事故や病気で苦しむ野良猫の子猫をみとった経験からすれば、そうした悲劇が無くなるのならこれで良いのでは、というのが偽らざる実感だ。


手術台に安置されたメス=駅義則撮影

全国に広がる協力病院
どうぶつ基金は1988年に設立され、当初は動物保護施設の運営にあたっていた。
そして2005年、寄付金や基金運用収益を活用し、猫の不妊手術を開始した。
実業家をやめて財団運営に専念した佐上邦久氏が理事長を務め、ベテランの獣医師である山口武雄氏が顧問として、手術の総指揮をとっている。
協力してくれる動物病院が全国に広がっており、こうした協力病院とともに各地で活動を行い、累計で約3万5000匹の猫に不妊手術を無料で施した。
愛護意識の高まりなどを背景に、手術数はここ数年で急増している。


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