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塩村あやか:「闇処分」を生みだした「ペット殺処分ゼロ」の罠

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塩村あやか:「闇処分」を生みだした「ペット殺処分ゼロ」の罠

2016年12月15日(木) nikkei BPnet


黒猫の「たまこ」とキジ白の「ちみ太」

政治家を目指すきっかけとなった動物愛護問題
今回は、私が精力的に取り組んでいる活動のなかでも、政治家になった理由のひとつでもある「動物愛護問題」についてお話したいと思います。
そもそも、動物愛護に興味を持ち始めるようになったのは、現在一緒に暮らしている黒猫の「たまこ」とキジ白の「ちみ太」という2匹の猫たちがきっかけでした。
2007年に住んでいるマンションがペット可になり、商店街を歩いていたところ、「里親募集」という黒猫の写真を発見。
うちで引き取ろうと考え、愛護団体に連絡をしたのが最初の出会いです。
その後、「預かりボランティア」という動物愛護活動を始めることになり、5~6年ほど「処分寸前の子猫を預かり、里親を探す活動」をやっていましたが、動物殺処分問題は解決されず、「それなら自分でやった方が早いのではないか」と気づき、政治の勉強を開始しました。
東日本大震災や非正規雇用で生活が安定しないことなど、日々さまざまなことに問題を感じており、そこに動物愛護問題も重なることで、その気持ちは揺ぎ無いものへとなったのです。
今、たまことちみ太は11歳ですが、せめてこの子たちが生きてる間に動物愛護法の法改正をと願い、日々活動をしています。
それは、「8週齢規制」の改正と「飼養施設基準」の2つです。
まず、8週齢規制というのは、生まれて8週間は親元や生まれた環境から離してはいけないというもの。
なぜこの規制が必要かというと、幼少期に親兄弟と過ごすことで動物にとって社会化ができます。
早くに親から引き離すと免疫の面でも未熟になってしまう可能性が指摘されています。
2013年に改正された動物愛護管理法で「8週齢規制」が設けられましたが、「附則」が付いていて、骨抜きになってしまっているのです。
そして、飼養施設基準とは、日本のペットショップのような狭いところに詰め込んで飼育してはいけないという趣旨で数値規制が各国では敷かれています。
例えば、ドイツではどんな小さな犬でも2メートル四方より狭いところに入れると違法です。
日本のようにペットショップで狭いガラスケースに入れられて売られていることも、子犬繁殖工場といわれている狭小ゲージの中で劣悪な環境下で子犬を生産している「パピーミル」も存在しないのです。

動物福祉にかなう形の法改正を
ドイツでは「ティアハイム」と呼ばれる民間のシェルターが全国に約1000施設で動物を保護していて、そこから譲渡を受けるという形が一般的です。
ペットショップがあったとしても、存在が許されているのは極めて厳しい数値基準を満たしたショップだけなのです。
ところが、できるだけ幼齢を好み、狭いペットショップで売っている日本では、ビジネスモデルとして成り立たないので、これらの基準を低くしようという勢力があります。
日本も2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、動物福祉先進国にならなくてはいけません。
動物福祉にかなう形の法律にしなくては、世界から訪れる人に対して日本は恥ずかしいのです。
私は世界のペット先進国と肩を並べる国に日本を変えたくて、政治家になったといっても過言ではありません。
これらの法律を制定できると、パピーミルでどんどん繁殖させることができなくなります。
犬をどうしても購入したい人は専門ブリーダーに注文をします。
ブリーダーは注文にあわせて繁殖をさせていくことになるため、「動物福祉」と「質の向上」につながります。
結果、売れ残って闇へ流されたり、衝動買いで捨てられたりする数も減るはずです。
そこを目指すべきなのです。
つまり、法改正でやるべきは、命を無駄にしないようにペットを量産しにくいシステムを作ることです。
大切なのは、そのことによって、いかに動物福祉を保てるかということなのです。
しかしながら、現在の動物殺処分問題について、具体的に知らない方も多いと思うので、問題点を簡単にご説明したいと思います。
まず、動物愛護では、「殺処分ゼロ」というのを達成した自治体が近年はたくさん出てきているので、処分は減ってるんだと思う人が多いかもしれません。
しかし、それは半分正解で半分不正解。
確かに各自治体の動物愛護センターや保健所で殺処分する数自体は減っていて、ゼロになっているところもあります。
しかし、その一方で議会や有権者が殺処分ゼロを求めるあまり、引き取りを絞り、譲渡を拡大することで「殺処分ゼロ」を達成している自治体もあるからです。

前回の法改正で新たな問題も
実は、前回の法改正で、動物愛護センターや保健所が「業者からの引き取りを拒否」することが可能となったため、引き取りを絞ることでゼロに近づけたり、譲渡の拡大でゼロにしていったりしている自治体もあるのです。
一方で、努力を重ねてゼロにしている自治体もあり、殺処分ゼロの形態にはさまざまなものがミックスされているのが現状です。
昔は「迷惑をかけるんだったら殺処分」という流れでしたが、最近では、動物愛護の意識も高まってきているので、「譲渡をして命を生かそう」という流れが生まれています。
それは正しい考えですし、私も大賛成です。
しかし一方で、自治体が譲渡の拡大を声高に主張することで、一部の愛護団体たちに負担を強いていて、崩壊状態になっている団体もでてきているという新たな問題もあるのです。
私が知っている人でも1人で何百頭と引き受けて飼っているような人もたくさんおり、さらにそれを支援する人が必要になるというような状況なので、それでは抜本的な解決とはいえません。
小池知事も「殺処分ゼロ」と言い始めましたが、本当にゼロと言えるかというとそこは要注意だと感じています。
また、全国的にみてもペットショップで動物がガラスケースに入ってたくさん売られていますが、全部が売れているわけがありません。
売れ残った動物たちがどこにいっているかが一番の問題でもあります。
法改正により、行政は業者からの持ち込みを拒否できることになり、拒否された売れ残りのペットがどこでどう処分されているのかも行政では把握ができなくなりました。
このため、それらの動物たちをペットショップから引き取る「引き取り屋」という業種が出てきており、一部は繁殖に回されていることが明らかになりました。
こうしたペットは、行政からの監視もない状態で、狭くて汚い場所で何回も繁殖をさせられているのです。
繁殖の上限というのはだいたい5~6歳といわれているので、天寿を全うするまでそこにいられるわけではなく、繁殖の適齢期を終えたら、その犬たちはどこかに消える運命なのです。

殺処分ゼロの裏に隠された真実
2014年、栃木県の鬼怒川の河川敷で大量の犬が遺棄された事件もありました。
引き取り屋が、繁殖の役目を終えた犬たちを運ぶ途中で死なせてしまったから捨てたということでした。
これは氷山の一角で、たまたま明るみに出たため事件として報道されました。
しかし、他の犬たちもまともなところに行っているとは思えません。
つまり、行政で行われる表の殺処分がゼロになっているだけであり、裏で処分されている動物たちの数が増えているということなのです。
表の数字だけ見て「殺処分はゼロになったからもう問題ない」と思ったら大間違いです。
こうした誤った考えが流布する危惧があります。
殺処分ゼロを目指した法改正の裏で、このように闇で処分されている動物たちが増えているというのが現実です。
そこに目を向ける必要があるのです。
ペットショップで売れ残った犬を保護犬だと言って、ペットショップの客引きに使う悪質な業者も思っているよりも多いのです。
それに騙されないことも大事です。
そうでないとこうした悪質なペットショップに加担することになり、本来、保護して欲しい飼い主を求めているペットたちの行き場がなくなってしまうことにつながるのです。
保護犬や保護猫を引き取る場合でも、自分で調べることはもちろん、信頼できる専門家の意見を聞くことが大事になってくるでしょう。
残念ながら、「殺処分ゼロ」や「動物愛護」という言葉には気をつけなければいけなくなってきているのです。
小池知事が殺処分ゼロの方針を打ち出したのはいいことではありますが、東京都のやるべきことは、まず国に対して「ペットの大量生産ができる現状を改める」法改正をしっかりと要求することです。
そして、狭いところに詰め込んで乱売するような行為をやめさせることなのです。

ぜひ保健所や動物愛護団体からの引き取りを
現在のペット産業は1兆5000億円という規模であり、ペットの数は子供の数よりも多いのです。
つまり、いまや業界団体の動きは政治にも関わってきています。
実は、小池知事は国会議員だったとき、自民党動物愛護議連の会長でしたが、そのときに8週齢規制に大きな抜け穴を作ってしまいました。
それによって闇での処分が増えているのが現実であり、小池知事には表の処分だけに注力するのではなくて、そのときの責任も踏まえ、8週齢規制と飼養施設基準の法改正について行動に移して頂きたいと思っています。
私は法改正については、都議会議員としても、個人としても声を上げていきますし、これからもできることはやりながら、どんどんと発信はしていくつもりです。
私と同じように本気で殺処分ゼロにしたいと考えている人には、譲渡という言葉だけに騙されずに、裏で増えている問題にも気がついてもらいたいです。
次の法改正が迫っていて、話し合いが始まっていくところなので、国の方でもドイツのような動物福祉に鑑みた施策を入れてほしい、と皆さんも声をあげてください。
うちの猫たちは保護団体から引き取った雑種ですが、本当にかわいい家族です。
ペットに興味のある皆さんにはぜひ動物愛護センターや保健所、または、きちんとした考えを持って活動をしている動物愛護団体から引き取ってほしいと思っています。

(インタビュー・構成=志村昌美)


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