囚人と捨て犬が助け合う、ハンガリーの刑務所
2016年5月18日(水) AFP=時事
ハンガリー東部の町デブレツェンの刑務所で、犬の服従訓練の用意をする囚人たち(2016年2月5日撮影)。
【翻訳編集】 AFPBB News
ハンガリー東部にあるデブレツェン(Debrecen)刑務所では、金曜日は「犬の日」だ。
近くの保護施設から来た5匹の捨て犬たちが楽しそうにしつけを受ける。
しつけているのは、受刑者たちだ。
2014年に始まったこの革新的な事業は、囚人と犬の両方が社会復帰するために役立つ社会的能力の習得を支えている相互に有益なプロジェクトだ。
地元の犬の訓練士、アンナマリア・ナジ氏は意外な組み合わせを眺めながら「囚人と捨て犬の運命はとても似ている。それぞれの道を切り開くために、お互い助け合っているのだ」と言う。
7週間のプログラムの期間中、規律、喧嘩の回避、口輪をはめる訓練など、受刑者たちは犬と一緒に10項目の課題に取り組む。
受刑者の中には暴力犯罪を犯した者もいる。
5匹は11月に、森の中で捨てられ寒さで震えた状態で発見された。
コーカシアン・シェパードの雑種で、だらりとした耳と頭に黄色の毛の房が生えているのが特徴だ。
「近づく事さえ大変だった」と訓練所の行動専門家、アグネス・ニューソさんが振り返る。
このプロジェクトはハンガリーで開発された「ミラー・メソッド」と呼ばれる技法を採用している。
トレーナーが犬ではなく、自分の過ちを修正することに焦点を当てた技法だ。
犬は単にトレーナーの過ちを「鏡写し」にしている。
雑種犬はしつけが難しいため、引き取りたがる人がいないとナジ氏は言う。
しかし、この犬たちはそれが理由でわざと選ばれている。
コースが始まってからたった数週間後には双方の絆はすでに固く結びつき、受刑者らが部屋に入った途端に犬たちは飛び跳ねて迎えに行く。
人間の方も同じ気持ちだ。
受刑者のローランドさんは犬に口輪をつけ、抱擁してなでながら「このコースは私にも犬にも良い影響を与えている。犬に会った後は何日も、ずっといい気分だ」と語った。
■犬との触れ合いで消える不信感
普段、囚人は内に引きこもっているが、犬といると気持ちが和んでいると刑務所の職員は言う。
同刑務所のサンドル・ペーテル・パンチュサク所長は「(受刑者たちは)自分がどこにいるのかを少し忘れることができ、不信感も消える。犬は人間よりも正直だ」と話す。
プログラムへの参加は長い順番待ちとなっており、そのこと自体も受刑者が元から持っているポジティブな面の強化や、少なくとも維持につながると言う。
「忍耐強くなり、他人をよりよく理解することに役立ち、最終的には(刑務所の)外でよりうまくやっていけるようになる」と同所長は言う。
刑務所にいる約300人の受刑者のうち30人が、これまでにこのプロジェクトを完了した。
職員によると、プロジェクトの「卒業生」は誰一人としてその後、犯罪に関与していない。
そして犬の方も7週間のコースを完了して証明書を受け取った31匹のうち、12匹が新しい飼い主に引き取られた。
デブレツェンの端にある動物保護施設「Together for Animals」のトロさんは「囚人たちの犬のしつけは魔法みたい」だと言う。
この施設では、飼い主に捨てられたり虐待されたりした約200匹の犬と猫が、暗い犬舎で檻の中に入れられ、平均3~4年を過ごしている。
「かわいくなければ、ここにいるのは6年にも、7年にも、もっとにもなり得る」とトロさん。
人の足音が聞こえると犬たちが騒がしく吠えたてる。
「刑務所に行くことは犬にとって、とても大きな冒険のようのもの。誰かにやっと気をかけてもらえるのだから」
【関連写真】囚人と犬たちの訓練風景
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囚人と捨て犬が助け合う、ハンガリーの刑務所
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