「ペトハピ」からです。
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賢者の目 Vol.12
ペット販売の「8週齢問題」を考える
動物愛護の先進国と日本の規制の違いは何か?
2016/2/18 太田光明
「動物」に関する課題の中で、今、わが国が適切に対応しなければならない喫緊の課題は「幼齢動物の母子分離」である。
2012年の「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護法)改正では、生後56日まで生まれた環境から子犬を引き離さないようにする「8週齢規制」導入が模索された。
しかし、附則によって実効性のないものになっている。
つまり、附則では、「生後56日」を「生後45日」齢とするとして、まさに意味のわからない内容になってしまっている。
イギリス、フランス、ドイツ、アメリカなど欧米先進国では、明確に母子分離を8週齢以降と定めている(下の表)。
動物愛護法改正(2012年)に際し、本当は欧米並みの「生後56日齢」(生後8週齢)にしたかったと考えられる。
しかし、さまざまな反対があり、やむを得ず「生後45日齢」(生後6.5週齢)にしたと推測される。
さまざまな反対とは何であろうか?
犬や猫のために反対したとは考えられない。
また、将来の「飼い主」のためとも考えにくい。
なぜなら、動物愛護の最先進国と言われるイギリスが、人(飼い主)と動物のために「生後8週齢」としているからである。
これは「人間のため」と言うより、まさに「ビジネス」の都合であろう。
小さくて、見るからにかわいらしい時期を逸すると売れなくなるから、との勝手な都合によって、「生後45日齢」になってしまった。
ペット先進国である欧米には、1960年代に「動物の5つの自由」(The Five Freedoms for Animal) が提唱されており、その理念の中では「本来の行動する自由」がうたわれている。
これは動物本来の生態や習性に従った自然な行動により、8週齢という最低ラインが設定されて、現在に至っている。
「生後8週まで子犬、子猫は親元に 札幌市「努力義務」全国初の条例化へ」との見出しが先の朝日新聞に掲載された。
条文を盛り込んだ市動物愛護管理条例案を2月17日に始まる市議会に提案し、10月からの施行を目指すという。
「8週齢」と明記して規定する、いわゆる「8週齢規制」の条例化は全国初である。
条例であれ、好ましい健全な市民の声である。
「動物愛護法」は5年ごとの見直しが附則で決められているとおり、少しでも欧米の先進国に近づくためには、きちんとした見直しが必要なのだ。
マハトマ・ガンジー(1869-1948、インド建国の父)の
“The greatness of a nation and its moral progress can be measured by the way in which its animals are treated.”(Mahatma Gandhi)(国家の偉大さや道徳的な進化の度合いはその国が動物をどのように扱っているかで判断できる)
という言葉を肝に銘じたい。
太田光明
昭和23年3月7日生まれ。東京農業大学農学部教授、並びに麻布大学名誉教授。International Society for Animal-Assisted Therapy 副会長。「大地震の被災動物を救うために:兵庫県南部地震動物救助本部活動の記録」等、著書多数。