「殺処分ゼロ」へ道模索 民間団体の協力がカギ(山形)
2016年1月26日 朝日新聞
県内で犬や猫の殺処分を減らそうと、行政や民間団体が取り組んでいる。
2014年度の殺処分数は、13年度と比べて707匹減り、1661匹に。
法律の改正が後押ししたが、それでも千匹以上の命を奪わざるを得ない状況が続いている。
「殺処分ゼロ」に向けた課題を探った。
置賜保健所から譲渡された、後ろ脚が不自由な猫ミーコ。飼い主に脚をマッサージしてもらっている=寒河江市
「中にはリピーターのように毎年保健所に子猫を持ち込む人も多いんです」。
村山、最上、置賜、庄内の4カ所の保健所を統括する県食品安全衛生課の斎藤立(たつ)さん(52)はそう話す。
県内の犬や猫の収容数、殺処分数は共に減少傾向が続き、殺処分数は6年前と比べて犬で2割、猫で6割にまで減った。
だが、それでも14年度は、犬286匹、猫1712匹が収容され、このうち犬47匹、猫1614匹が天童市の動物指導センターで二酸化炭素により殺処分された。
殺処分数が大きく減ったのは、改正動物愛護管理法が13年に施行され、保健所が犬や猫の引き取りを拒否できるようになったからだ。
斎藤さんは「『本当に飼えないんですか、飼ってくれる人はいないんですか』と問い続けたことで持ち込みが減り、殺処分減にもつながったのでは」。
それでも「引っ越し先で飼えない」「飼えないけど生まれてしまった」などの理由で持ち込まれる犬や猫は後を絶たない。
特に猫は、避妊・去勢手術をしていなければ外で繁殖する可能性が高く、引き取り数も減りづらいのが現状だ。
県は譲渡事業に力を入れる。
離乳が済み、人に慣れている犬や猫の情報を各保健所のホームページに掲載。
14年度は犬92匹、猫93匹が希望者に譲渡された。
だが、人をかむなど凶暴だったり病気を持っていたりする場合は殺処分の対象となる。
また、生まれて間もない子猫の場合も、世話をして育てるには手間がかかるため、ほとんどが殺処分されている。
斎藤さんは「今はまず、『犬や猫を捨てないで』と呼びかける入り口部分の対策から始めている段階」という。
■凶暴・病気の犬 引き取りも
一方、県外では犬について殺処分ゼロを達成した自治体もある。
ポイントは民間団体の協力だ。
札幌市では14年度、山形県より多い301匹の犬を収容したが殺処分はゼロだった。
同市動物管理センターの高田泰幸指導係長によると、同市は凶暴だったり病気だったりする犬の情報もホームページに掲載。
すると近年「トレーニングしてあげる」「寿命までみとりたい」との申し出が多くなり、全ての犬が引き取られた。高田さんは「ボランティアの協力があってこそ達成できた」と振り返る。
子猫に関しては、譲渡できる大きさまでボランティアが育てる取り組みもある。
盛岡市では所有者のいない猫を地域のルールで管理する「地域ねこ事業」を6年前から展開。
メス猫の避妊手術を1匹1万円まで助成している。
5年間で134匹の手術が実施され、猫の引き取り数も減少しているという。
県内でも同様の動きはある。
県獣医師会は14年度、猫40匹の避妊・去勢手術費を補助。
市民団体も犬や猫を保護したり里親を探したりしており、置賜保健所管内では病気の犬などの一部を保護している。
だが、受け皿の規模はまだまだ小さい。
昨年、殺処分ゼロを求める署名を5万人分集めた「やまがた小さな命を守る会」の佐藤ひろ美さんも「個人の活動では限界がある」と話す。
「まずは飼い主の責任が大切。息を引き取るまで飼ってほしい。その上で行政には、殺処分を減らすために避妊・去勢手術費の補助などで協力してほしい」と訴える。
県は14年3月に「県動物愛護管理推進計画」を10カ年計画で改定。
殺処分数を12年度の半数以下に減らすことや、保護された犬や猫を見られるよう開放されたセンターの整備などを目指すとしている。
だが、避妊・去勢手術は「飼い主の責任」として、補助は考えていないという。
(多鹿ちなみ)