日本犬のしつけ、5つの御法度 厳しいだけでは悪影響も
2016年1月2日(土) sippo(朝日新聞)
厳しいだけのしつけは悪影響も
日本犬は忠犬のイメージが強いせいか、厳しく育てようとする飼い主が多く見受けられる。
しかし近年は動物行動学の発展により、体罰を加える叱り方や厳しいだけで意味がない習慣などは、犬との関係に悪影響を及ぼすことがわかってきた。
監修の獣医師である山下國廣先生に、飼い主が注意するべきことをうかがった。
「トレーナーやインストラクターによって、しつけ方はさまざまです。しかし、中には絶対にやってはいけないことがあります。私が知っている例では、飼い主さんが食事を与えていることをわからせるために、途中で取り上げるように指導されたケース。その結果、犬は上目遣いで落ち着かず食べるようになり、手を近づけるだけで噛むようになってしまいました。犬はこの習慣を始める前まで、無邪気で全く攻撃性はなかったそうです。その他、犬を過剰に触ってうなられたらマズル(鼻口部)をつかむ、ひっくり返す、リードでショックを与える、といった指導を受けた結果、犬がひどく噛みつくようになってしまったなど。中には一度叩いただけで過敏に手を避けるようになったケースもあります。誤った指導を受けて悪影響が出た例は、枚挙にいとまがありません」
飼い主がしてはいけないこれらのしつけや習慣は、とりわけ日本犬に強く悪影響が出るという。
マズルをつかんで叱るのもダメ
5つのしてはいけないこと
動物行動学が発展する前、さまざまなしつけや習慣が考案された。
現在になっても、正しいもの、誤っているもの、日本犬に向いていないものなど玉石混合の状態なので見直そう。
1)誤ったしつけによる無理な姿勢の強要
「服従心が身につく」といわれるホールドスチール(犬を背後から抱える)や、ロールオーバー(犬をひっくり返す)などの姿勢の強要はNG。
叱るためにマズルをつかむこともいけない。
これらは動物行動学が発達していない昔の誤った考えによるもので、現在は意味がないといわれている。
服従心が身につく姿勢はないので、犬と充実した暮らしを送りながら良い関係を築こう。
2)無意味な習慣や犬が好まない触れ合い
いつもオスワリばかり強要していると、犬は「とにかくオスワリすればいいんだ!」と思い込み、他の行動を引き出しにくくなる。
また、急に手を伸ばして頭を撫でられることを好まないので避けたい。
信頼関係が大事
体罰は通じない
3)叱っているつもりでも犬にとっては暴力
お尻をペンペン叩く体罰的な叱り方は犬に通じない。
人は言葉を理解しているから通じることもあるが、犬は教えられた号令などの単語以外はわからないので、体罰、説教、大声で叱る、といった叱り方は暴力でしかない。
誤った叱り方を続けると、犬は暴力を振るわれる前に身を守ろうと、先制攻撃をするようになるかもしれない。
4)食事時の誤った習慣で攻撃的になることも
犬がゴハンを食べている時、食器に手を入れたり食器を取り上げたりしない。
飼い主は食べ物を奪う存在と教えているようなもので、犬によってはゴハンを守って攻撃的になる。
逆に犬がひとりでゴハンを食べる習慣も、独占欲が強くなるのでNG。
ゴハンはごほうびとして飼い主の手から与える方法が理想だ。
5)上下関係などの横暴で一方的な関係
人が上位で犬が下位、といった上下関係などの誤った関係づくりは避けたい。
犬は人の言うことを聞いて当然という考え方は、横暴なワンマン社長が牛耳るブラック企業の経営に近い。
日本犬は繊細なコミュニケーションが得意な犬種なので、上下を争う関係よりも楽しい双方向のやりとりに時間を使おう。
(辰巳出版「Shi-Ba」より)
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