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飼い主の責任考える

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飼い主の責任を考える田中麗奈&リップ、アロエ

2015年1月21日 sippo編集部






(写真 岡田晃奈)

20歳の時に始めた犬との暮らし。
2匹の「家族」とともに年を重ねてきた。
気づけなかった病気。
深まった絆。
改めて思う。
飼い主の責任の重さ。

「飼い主としての責任が、どんどん大きくなっているなと感じます」
田中麗奈さんと一緒にスタジオにやってきた、リップ(メス、14歳)とアロエ(メス、11歳)。
2匹とも、活発で機敏な性格が特徴とされるチワワ。
でも、以前と比べるとずいぶんゆっくり歩くようになったリップたち。
その姿を見て、田中さんは、表情を引き締めた。
リップとは、一緒に暮らし始めてもう14年になる。
アロエが加わってから数えても11年。
地元・福岡から上京し、忙しい日々を送る田中さんのそばに常にいてくれた、小さな「家族」だ。
楽しい時間を共有しながら、ともに年を重ねてきた。
「リップを飼い始めたころは私も20歳。私も彼女たちも元気いっぱいでした。おもちゃを買ってあげて、いろんなところに散歩に行って。いま振り返ると、そういう楽しいことばかりに気が向いていました。でも2匹とも年を取り、病気もするようになった。飼い主として真剣に考えてあげなきゃいけないことが、増えてきたと思うんです」
2年ほど前、リップが心臓に病気を抱えていることがわかった。
普段から通っていた動物病院では発見が遅れ、別の動物病院で初めて症状があることが判明したのだ。
心臓に、血液が逆流してしまう病気だった。

■リップの投薬治療を早めに始めていれば
「年を取ったので健康診断を受けようと思っていたんですが、受けられていませんでした。たまたま別の動物病院にかかる機会があり、そこでは健康診断を勧められました」
田中さんはそう振り返る。
「獣医師の先生から『10歳を超えたのにまだ健康診断を受けていないんですか?』と言われちゃいました。それで健康診断をしてみたら、病気が見つかったんです。自分も年を取って、年齢にあった健康法を心がけていた。それなのに、リップのことは気づいてあげられなかった・・・。犬も人間と一緒で、年に1度は健康診断を受けるべきだとつくづく思いました」
リップの病気は、早めに投薬治療を始めていれば、症状の悪化が抑えられた病気。
それだけに後悔がある。
基本的に完治が見込めないため、いまは薬と療養食で症状を抑えている。
「この子たちの健康管理ができるのは私だけ。かわいいとか癒やされるとか、そういうことだけじゃダメなんです。命を預かっているんだという意識と覚悟が絶対に必要です」
ただ病気とその治療を通じて、リップとの絆はより深まったと感じている。
病気が見つかった前後、リップからは「ああ、私もうダメかも」という雰囲気が漂っていたという。
ところが治療を始めると、それまで以上に明るくなった。
「なんとなく『麗奈ちゃんのために長生きするよ』って思ってくれてる気がするんです。私を1人にさせるわけにはいかないという危機感が、リップにはあったように感じました」
リップは、アロエにとってはお姉さん的存在でもある。
リップは冒険心や好奇心が旺盛で、人なつこく、ちょっと無鉄砲なところもある。
一方のアロエは人見知りで甘えん坊、少し頑固な性格だ。
アロエを迎えた当初こそリップも警戒気味だったが、すぐに仲良くなり、アロエの「しつけ」までするようになった。
例えば荷物の配達などで人が訪ねて来ると、人見知りのアロエは吠(ほ)えかかろうとする。
それをリップが体でストップをかけ、吠えるのをやめさせるのだ。
「リップは、アロちゃんにとってお姉さん。頑固なアロちゃんは自分の場所って決めたところから動かなかったりする。そういう場合、リップは優しく譲ってあげます。リップが心臓を悪くして入院した時は、アロちゃんも落ち込んでいました」

■それぞれの「役割」が定着してきた
長く一緒に暮らしているうちに、1人と2匹の間にはそれぞれの「役割」が定着してきた気がする。
田中さんにとってリップは、いつも見守ってくれる「お母さん」のような存在。
「リップはすごく私のことをわかってくれる。しゃべることができたらどんな助言をしてくれるんだろうって、いつも想像してます。たぶん、こういう癖があるけど直したほうがいいんじゃない?とか言ってくれる(笑)。家の中のことも私より詳しそう」
対するアロエはやはり「子ども」。
時々、何を考えているのかぼんやりしていることがあり、そんな姿を見ると、思わず抱きしめたくなる。
「ずっと赤ちゃんぽいところがあるんです。ぼんやりしているのに、時々はしゃいだりする。そういう時は本当にうれしくなります。この子には私しかいないんだ、って強く思わせるのが、アロちゃんです」
田中さんといえば、2008年に公開された映画「犬と私の10の約束」で主人公あかり役を演じたことが、犬好きの間では特に強く記憶に残っている。
飼い主に対して犬が望む約束事をまとめた「犬の十戒」をモチーフにした映画だ。
犬と飼い主の関係はどうあるべきか――。
この映画への出演は、そのことを考える大きなきっかけにもなった。
そしていまも、リップとアロエと過ごす時間を大切にしながら、日々を過ごしている。
「最近、動物を虐待するような事件のニュースを目にすることが多いですよね。なんでそんなことをする人がいるのか、本当に信じられません。犬や動物は言葉がしゃべれないから、もどかしいところもあります。でも絶対に、犬と人間はお互いにわかりあえていて、お互いの存在を必要としている。犬って、私たち人間にとってそんな大切な存在だと思うんです」
田中さんは来年1月から放送される連続テレビドラマ「美しき罠~残花繚乱~」(TBS、毎週木曜午後9時から)で主演する。
その撮影に入ると、2匹の留守番は普段より少し長めになる。
毎日、部屋の温度に気をつけ、空気が循環しているかを確認し、お水をたっぷり準備して、家を出る。
そして帰宅すると、2匹は全力で田中さんを迎えてくれる。
ドラマのテーマが男女の愛憎劇なだけに、より「家族」の大切さが実感できる瞬間だ。

◇田中麗奈(たなか・れな)
1980年福岡県生まれ。98年に放送されたCM「なっちゃん」で人気を集める。「夕凪の街桜の国」「犬と私の10の約束」「源氏物語 千年の謎」「夢売るふたり」など数々の映画に出演。2015年1月からTBSとNHKBSプレミアムで、主演を務める連続テレビドラマがそれぞれ始まる。

この記事は『sippo』(2014年12月発行)に掲載されたものです。
内容は取材当時のものになります。


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