ノネコとノラネコ、同じ猫なのに・・・
4万人が署名した「狩猟鳥獣からノネコ・ノイヌを削除」を求める運動が問いかけるもの
2023年7月14日(金)
2023年春、広島・呉で発覚した事件が注目を集めました。
「猫1匹を刃物で突き刺すなどして殺した」として呉市の大学院生の男(24)が逮捕されました。
男は「猫を殺したことに間違いないが、愛護動物にあたらない野猫(ノネコ)だと思っていた」と供述。
この主張はどういうものなのでしょうか。
それは環境省が、鳥獣保護管理法において「ノネコ」「ノイヌ」を狩猟鳥獣として指定しているためです。
ノネコ・ノイヌも実は狩猟鳥獣だったって知っていましたか?
■「ノネコ」「ノイヌ」は、「ノラネコ」「ノライヌ」とは違う?
環境省は、公式コメントとしてこう発表しています。
「生物学的な分類ではペットとして飼われているネコ、イヌと変わりませんが、飼い主の元を離れて常時山野等にいて、専ら野生生物を捕食し生息している個体を『ノネコ』『ノイヌ』としており、飼い主の元を離れてはいても、市街地または村落を徘徊しているようないわゆる『ノラネコ』『ノライヌ』は、『ノネコ』『ノイヌ』には該当せず、鳥獣保護管理法の対象にはなりません」(環境省)
頭が混乱しそうな内容です。
この回答の中に「ノネコ」なのか「ノラネコ」なのか「飼い猫」なのか、あるいは「ノイヌ」なのか「ノライヌ」なのか「飼い犬」なのかを判断する明確な基準が示されていないからです。
「狩猟鳥獣からノネコ・ノイヌの削除」を求める公益財団法人どうぶつ基金(以下、どうぶつ基金)によれば、環境省が明確な基準を回答できないことを解説しています。
「そもそも『ノネコ』『ノイヌ』を見分けることは不可能だからです。つまり、狩猟者自身が対象の猫、犬を主観で『ノネコ』『ノイヌ』と判断すれば、悪質でひどい動物虐待・殺害事件も一転『狩猟』という名のもとに合法化されてしまうということです。環境省が『ノネコ』を狩猟鳥獣に指定していなければ、広島・呉で起きた事件のような、悪質かつ残忍な殺害事件は防げた可能性が高いと考えています」(どうぶつ基金・担当者)
■鳥獣保護管理法と動物愛護法のはざま
こういった人間が設定した曖昧な基準を正すべく、どうぶつ基金は「狩猟鳥獣からノネコ・ノイヌの削除を」と環境省に要請しています。
どうぶつ基金が求める要請に賛同し、署名した人はこれまでに4万筆を超えました。
「環境省が鳥獣保護管理法によって『ノネコ』を狩猟鳥獣に指定していなければ、今回の悪質かつ残忍な殺害事件は防げた可能性が高いと考えています。どうぶつ基金は、今後同様の事件が発生しないために、そして、想像を絶する恐怖と苦痛のなかで命を奪われた猫のためにも、鳥獣保護管理法の狩猟鳥獣から『ノイヌ』『ノネコ』を削除することを求める署名活動を行っています」(どうぶつ基金の担当者)
動物愛護法についても聞いてみました。
「私たちどうぶつ基金は『いきものが自由でしあわせ』を理念に掲げています。人と犬・猫の関係性においても、互いが自由に幸せに共生できることが理想だと考えています。日本には動物愛護法という法律があります。人として彼らと幸せに共生するためにまずやるべきことは、最低限、この法律を遵守した飼い方・接し方をすることです。不備も多く、時に『ザル法』と揶揄されることもある同法ですが、その基本原則には最も大切なことが明記されています。 法律なんて……と思われるかもしれませんが、これすら守っていない動物取扱業者や飼い主がいることはまぎれもない事実です。多くの方がこの法律に目を通し、その理念や内容を理解し、まずは最低ラインを遵守すること。そのうえで、地域事情に合った共生の方法を模索していくことが大切だと考えています」(同)
ノネコとノラネコの違いはあいまい。鳥獣保護管理法の判断では「ノネコを殺す場合は苦痛など配慮は一切しなくていい」ともあります
■鳥獣保護管理法で無罪の可能性も?
前述した「ノネコ」「ノイヌ」に曖昧な基準に加え、鳥獣保護管理法・動物愛護法の双方を照らし合わせてみると、矛盾ばかりを感じますが、どうぶつ基金ではこれらを正し、団体の理念でもある「人と犬、人と猫が互いが自由に幸せに共生する」を実現していきたいと主張しています。
狩猟鳥獣からノネコ・ノイヌの削除を求める活動を積極的に行なっており、さらに多くの署名を求めたい考えです。
「広島・呉で起きた事件は、遠い海外の出来事ではなく、私たちの身近なところで起こった出来事です。地域の方にかわいがられていた『地域猫』が苦痛と恐怖のなかで命を奪われた一方、鳥獣保護管理法のもとで犯人は何の罪にも問われない可能性があります。2023年5月現在、署名は4万筆を超えました。おかしな論理で正当化される動物虐待・殺傷事件を防ぐためには皆さんの声が必要です」と、どうぶつ基金の担当者は署名を呼び掛けています。
公益財団法人どうぶつ基金
https://www.doubutukikin.or.jp/
「猫や犬の殺害犯罪をなくすためノネコ、ノイヌを狩猟鳥獣から削除してください」署名ページ
https://www.change.org/SaveNoneko
(まいどなニュース特約・松田 義人)
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