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保護猫「だいすけ」

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保護猫「だいすけ」 一緒に生活、
 潤いと命を預かる責任 ボランティアの負担大きく

2023年2月22日(水) 

「保護猫を預かってみませんか」。
昨年、長崎県大村市内で猫の保護活動に取り組むNPO法人「アニマルレスキューハッピーりぼん」代表理事の田﨑直美さんから、こんな提案があった。
猫と暮らす楽しさや保護猫を知るきっかけにしてほしいとの理由だったが、私は猫を飼った経験はない。
単身生活のため寂しい思いをさせないだろうか、世話もきちんとできるだろうか。
不安はあったが猫との生活には興味があり、悩んだ末に今月初め、法人のシェルターへ足を運んだ。
シェルターは木造民家を改装した造りで、現在約35匹を保護している。
「まずはおやつをあげて仲良くなって」と田﨑さんに促され、部屋の中へ。
人に慣れているのか、数匹の猫はすぐに擦り寄ってきて私の手からおやつを食べ始めた。
そんな中、少し離れた場所でこちらを見つめる黒猫が目に入った。
名前は「だいすけ」。
飼育頭数が多過ぎて適切な世話ができなくなる「多頭飼育崩壊」の現場から保護された雄。
他の猫に先を越され、おやつは欲しいけれど割って入れない-。
そんな控えめな様子を妙にいとおしく感じ、一緒に生活してみたいと思った。
保護猫を新たな飼い主につなげようと、県内で保護団体による譲渡会が開かれている。
全国的にも多い長崎県の殺処分数の減少に向けた各地の取り組みを取材する。
私は「だいすけ」と暮らしながら。


一緒に暮らす保護猫の「だいすけ」。おとなしく控えめな性格=大村市内

22日は「猫の日」。
猫の保護団体は、新たな飼い主につなぐ譲渡会に力を入れている。
「アニマルレスキューハッピーりぼん」(大村市)は月に1回、市内で企業の施設を借りて開催している。
飼い主希望者によっては「一目ぼれ」という人もいれば、家族会議を重ねて迎え入れる人もいる。
ただ猫をその場で渡すことはない。
同団体は飼育の経験や世話をする人、飼えなくなった場合の対応などを確認。
一生面倒を見られるか考えてもらった上で、まずはトライアルという形で託す。
代表理事の田﨑直美さんは「誰でもいいというわけでなく、一生かわいがってもらえるかが大事」と話す。
私が迎え入れた「だいすけ」は、初日はケージから出てくることはなく、周囲を警戒している様子だった。
「すぐに慣れてくれるだろう」と考えていたが、お互いに手探りの状況が数日続いた。
ようやく外に出るようになっても、近づくと威嚇してケージに戻ってしまう。
多頭飼育崩壊の現場で「人にかわいがられる経験がなく育った」(田﨑さん)
だいすけと距離を縮めるには、時間をかけるしかないそうだ。
同団体は高齢者福祉施設などに保護猫を連れて行き、触れ合ってもらう活動にも取り組んできた。
「猫をなでていると自然と笑顔になる人も多く、癒やし効果は抜群」と田﨑さん。
だいすけも1週間ほどたち、ケージの中では手に擦り寄り、おなかをなでさせてくれるようになった。
ふわふわで温かい触り心地に癒やされる。
何より、1人暮らしでは普段使わない「行ってきます」「ただいま」を言えることがうれしかった。

◆県は今月、手狭で老朽化が進む県動物管理所について、大村市の県工業技術センターグラウンドを候補地案に、建て替えの検討を進める方針を示した。
全国でも多い長崎県の殺処分数を“ゼロ”にするため、県は「収容数削減の『入り口』と譲渡推進の『出口』、県民との連携の3本柱で取り組む。
(新施設は)気軽に立ち寄れる雰囲気で、教育や啓発の場としての機能を持たせたい」とする。
同市内で地域猫活動などに取り組む「おおむら桜ねこの会」の山石みほ子代表は、譲渡会では場所探しや会場設営、広報など「開催の負担は大きく、環境が十分とは言えない」と指摘。
「ボランティアだけで回すのではなく、行政も積極的に関わって」と求める。

◆2週間近くたったある日、だいすけが私の横にちょこんと座ってきた。
少しなでると、すり抜けて逃げていき「ミャア」とひと鳴き。
まだケージの外では触らせてくれないらしい。
初めは短期間の預かり予定だったが、もう少し仲良くなりたいと思い、延長をお願いした。
「『猫を飼いたい』と思っている人の選択肢に保護猫が入るようになれば」と田﨑さん。
だいすけと一緒に暮らしてみて、確かに生活に潤いが生まれたと感じる。
同時に、命を預かる責任や保護猫を飼う意味も考えさせられた。

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