うさぎブーム過熱に懸念…安易なお迎えが保護うさぎを生む
知ってほしい正しい知識
2023年1月7日(土)
「2011年の卯年後には、たくさんのうさぎたちが捨てられるという事態になりました」……そう語るのは、一般社団法人WILL&LOUISの代表、熊谷彩さん。
近畿地方を中心にうさぎの正しい飼育知識の周知活動を行っている同団体は、これまでの「SAVE THE RABBITS」活動でたくさんの小さな命を救ってきました
卯年の2023年は過剰なうさぎブームが起こる可能性も。安易にお迎えすることがないよう、「かわいいだけではないうさぎについて知ってほしい」と熊谷さんは語ります。
保護うさぎの実情などについて、お話を伺いました。
2019年に保護されたカヌレくん【写真提供:一般社団法人WILL&LOUIS】
◇ ◇ ◇
◆12年前の卯年以降、多頭飼育崩壊が増加傾向に
私が保護活動を始めた理由には、「捨てられるうさぎを救いたい」という思いよりも前に、適切な飼育環境といった「正しい知識を広めたい」という思いがありました。
言葉を話せない動物ですから、そういった生き物たちが何を考えて、今どう思っているのかを考えるようになり、「これは本当にうさぎのためになっているのか?」と常に疑問に思っていることがあったからです。
私がうさぎを飼い始めたのは12年前の卯年です。
卯年を意識していたわけではなかったのですが、今思えばペットショップにはたくさんのうさぎが並んでいました。
この年はうさぎの数が足りず、海外からもどんどん輸入されたと聞いています。
翌年から多くのうさぎが保護され、殺処分も一気に増えていることを知りました。
当時、私がボランティアで通っていたNPO法人では、施設にいつも4~5匹の保護うさぎがいました。
卯年前には0匹になったこともあるそうですが、卯年後は毎月のように保護して、年間で26匹に上ったそうです。
また、それまでほとんどが単頭保護だったのに、多頭での保護が増えたそうです。
当時、保護されたのは若いうさぎも多く、今も存命している子がいます。
フードや医療の質が向上したことで、寿命が10歳を余裕で超える子が多くなりました。
多頭飼育崩壊がそれまでなかったわけではありません。
しかし12年前の卯年から現在に至るまで、多頭飼育崩壊は増加傾向にあります。
ペットショップやうさぎ専門店が一気に増え、うさぎと暮らす方も増えました。
その一方で、飼い方についての知識がないまま「いつのまにか増えた」という流れで、アニマルホーダー(編集部注:ホーダーとはためこみ症のこと)になるケースが非常に増えています。
◆飼えなくなった動物の引き取り屋さんではない
うさぎ飼育に関するコミュニケーションイベント【写真提供:一般社団法人WILL&LOUIS】
うさぎを保護する場合、通報や行政からの依頼があった時、または私たちの判断で行うため、保護数は毎年異なります。ただし私たちは「保護団体」ではなく、「うさぎという生き物について知る」啓発活動や、うさぎとの暮らし・飼育に関する勉強会やセミナーなどを主に行う団体です。
そのため、保護数の大小は語れないと思っていますが、活動地域内だと直近で最も多かったのは2017年の40匹。
一方、2022年は1匹でした。
特に「飼えなくなった」というお話を伺った時、ご自身で里親を探していただくようにアドバイスしています。
私たちは飼えなくなった動物の引き取り屋さんではありません。
どうしても飼い続けられない事情があるのなら、大切にしてくれる次の方に託すまでが飼い主の責任だと思います。
大きな多頭飼育崩壊などのご相談も受けます。
このようなことが二度と起こらないためには、慎重に動かなければいけません。
行政や愛護センターなどをできる限り巻き込んで、うさぎの多頭飼育崩壊が存在していることやその大変さを、社会的にも共有していくべきだと思っています。
有志のボランティアたちだけで対応するのは限界があるからです。
◆うさぎは温度管理された室内でしか生きていけない
たくさんの保護うさぎが新しいおうちに迎えられるのを待っている【写真提供:一般社団法人WILL&LOUIS】
うさぎを終生お世話するためには、お迎えする前に正しいイメージを持つことが大切です。
世代にもよるかもしれませんが、うさぎの住環境といえば「学校の飼育小屋」というイメージが根強いように思います。
屋外で飼い、集団で暮らし、野菜のクズ(キャベツやニンジン)を食べている姿から、ペットとして室内で飼うというイメージがあまり湧かない人も多いでしょう。
一方で最近は、ふれあい施設やうさぎカフェが増えました。
そこから小さくてふわふわでおとなしいイメージや、ケージに入れてエサを与えたら飼える簡単な生き物と考えてしまうことも。SNSではかわいらしいお洋服を着せた姿や、外に連れ出してお友達のうさぎさんと「うさんぽ」する様子なども、ここ10年で見られるようになりました。
ペットのうさぎであるカイうさぎは、実のところ日本の気候にはあまり適していません。
そのため、室内で飼育し、部屋の温度や湿度を十分に管理しなければいけません。
特に夏は24時間のエアコン管理が必須になり、冬には関西の屋外で飼われていたうさぎが凍死した話もあります。
エアコンはもったいないから扇風機で……ではうさぎは死んでしまうでしょう。
◆ケージの中に閉じ込めておくことはストレスや運動不足の原因になる
保護うさぎたちのケージ。限られたスペースの中でも清潔に保ち、毎日40~60分運動する時間を設けている【写真提供:一般社団法人WILL&LOUIS】
うさぎを飼うのに「ケージ」と呼ばれる小屋を購入する飼い主さんは多いでしょう。
ただし、金魚を水槽で飼うようにケージの中だけでうさぎが飼えるわけではありません。
うさぎは薄明薄暮性なので、基本的に昼間は寝ています。
ケージはそうした寝床やエサを食べる“絶対的な縄張り”として存在しますが、運動や家族と一緒に過ごす時間はケージから出します。
狭いケージに閉じ込めておくと、うさぎでもストレスが溜まったり、運動不足で体調が悪くなったりするからです。
うさぎはおしっこする場所を決める習性があります。
ただし、草食動物であるうさぎの消化管は常に動いているので、うんちは意識せずにポロポロと出てしまうのです。
そのため、部屋でフンをされることに強い抵抗がある場合は、うさぎを飼うことが難しいかもしれません。
うさぎは一日でとてもたくさんのフンを出します。
フンを見て健康管理をするといっても過言ではないくらいです。
トイレでフンをするというしつけは、犬に対するトイレのしつけとはまるで意味が違ってくるので、同じようにはいきません。
◆うさぎの寿命や自身のアレルギー、動物病院の知識も大切
保護うさぎたちの紹介や生態を説明するカードを掲示【写真提供:一般社団法人WILL&LOUIS】
うさぎをお迎えする心がまえとして、適切な飼育環境を知ることはもちろんですが、他にもさまざまなものがあります。
例えば子うさぎを迎えた場合、10年以上一緒に暮らすことになるかもしれません。
そのため、10年先までお世話ができるかといった将来的なイメージや、いろいろな準備が必要になるでしょう。
若い方はライフスタイルが変わることもありますし、高齢の方はうさぎが年を取るにつれて自分も年を重ねるわけですから、10年先を視野に入れてほしいと思います。
飼育者のライフスタイルが変わったことで手放されるうさぎは、実はとても多いのです。
また、アレルギーが理由で手放す方も多いですね。
うさぎの毛などで引き起こされる「うさぎ上皮アレルギー」と、うさぎが食べているイネ科の植物に関するアレルギーがあり、後者の方が割と多いと感じます。
かゆみ、腫れ、咳など症状はさまざまですが、呼吸困難になるような重い症状の方もいらっしゃるので、何かしらアレルギーをお持ちの方はうさぎを迎える前に検査を受けてみると良いかもしれません。
うさぎの主食は牧草ですので、代用が難しいのです。
他には、お迎えの時にあまり考えることのない動物病院についても知っておくべきことがあります。
どんな動物でも診てもらえると思いがちですが、うさぎが対象外の病院はまだまだたくさんあります。
「犬、猫、うさぎ」と掲げられていたとしても実際は……という病院もあるので、お迎えしたショップや保護団体といった詳しい人に聞くなどして、事前に調べましょう。
口コミだけを鵜呑みにせず、また自宅から近いという人間側の都合だけではなく、きちんと診断できる病院を探すのが大切であり、また意外と大変なことかと思います。
【動画】33匹のうさぎをお世話 毎日のお掃除ルーティン
Hint-Pot編集部
【関連記事】
「飼いやすいはデマ」 ウサギの安易なお迎えを注意喚起する漫画に大反響
ウサギの“足ダン” かわいすぎる怒りの仕草に海外からも大反響「永遠に見ていられる」
ウサギはどこを撫でればいい? “十兎十色”を伝えるイラストが話題「うちもこんな」
“ウサギリュック”を背負う元保護ねこ 家族を救った仲良し姿に大反響 「私も欲しい」
ウサギを飼う人が増加 コロナ禍ブームで中年男性も虜
2023年1月7日(土)
令和5年の干支は「卯」だが、動物のウサギをペットとして飼う人が増えている。背景には、長引く新型コロナウイルス禍で生活に癒やしを求めるペット需要の高まりがある。
特にウサギは鳴くことがなく、散歩の必要もないため、比較的飼いやすいとされていることも人気を集めている。
愛らしいウサギに癒やされる人も多い=東京都武蔵野市
「名前を呼ぶと駆け寄って来るし、芸もできる。知能はネコと同程度」。
ペットショップ「うさぎのしっぽ」の玉城和則さんはこう話す。
ウサギは鳴かないことから感情表現が乏しく、なつかないようにみえがちだが、実際には全身を使って飼い主に感情を伝えたり、しつけもできたりするという。
同社は首都圏で複数店舗を展開しており、売上高はコロナ禍が始まった令和2年が元年比で約21%増、3年は2年比で約7%増。4年上半期は、3年同期比で約3%減だった。
コロナ禍に入り、家族連れを中心にペットを求める人が増加。
来店者のうち6割が女性だが、熱心に世話をして何度も来店するのは、中年男性が圧倒的に多いという。
「ウサギは女性や子供が好きな印象を持たれるが、男性の方が魅力にはまりがち」と話す。
ウサギを求める人が増えた要因には、犬・猫の販売価格の高騰もある。
大手ペットショップ関係者は「需要に対し繁殖が追い付かず、価格はコロナ禍前の2倍になった」と明かす。
ウサギは数万円から購入できることから、費用面で考え直す人も多いようだ。
ペット用品を販売するイオンペットの調べによると、エサやケージなどウサギを飼うのに必要な商品の市場動向はコロナ禍でバブルが起き、3年に過去最高を更新したという。
4年は反動減もみられたが、コロナ禍前の元年よりは高い水準で推移する。
同社は、卯年の今年、例年よりウサギの露出が増えることで売り上げも〝躍進〟すると予想している。
【グラフでみる】ホームセンターのペット用品販売額がコロナ前より増えている
(飯嶋彩希)