「ハトへの餌やり」禁止で街の猫たちにも影響が?
野良猫を守るために
2022年7月29日(金) 石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
読売新聞オンラインは、東京都大田区が今春、駅前や公園での餌やりを禁止する条例を施行したと伝えています。
これは、ハトの餌やりだけではなく、野良猫の餌やりも影響してくるかもしれません。
今回は、ハトや野良猫への餌やりについて見ていきましょう。
イメージ写真(写真:イメージマート)
◆ハト・カラスへの給餌による被害防止条例とは?
大田区の大森駅の周辺で、高齢の男性がスーパーで大量のペットフードを買い込み、ハトに餌をやるためにペットフードを路上にまいていました。
ハトが最大150羽もやってきて、そのフンが通行人にかかったり、食べ残しを狙うネズミが出てきたりして、衛生的によくない環境になったりしました。
その男性に、ハトへの餌やりをやめるように注意しましたが、聞き入れられず、大田議会で「区ハト・カラスへの給餌による被害防止条例」が制定されたというものです。
イメージ写真(写真:イメージマート)
◆野良猫への無責任な餌やりが問題に
野良猫は、人間が遺棄したりして作り出したものです。
野良猫は、人間の生活圏で暮らして、ネズミや残飯などを食べて生きています。
野良猫は、もちろん愛護動物になるのですが、その餌やりが問題になっています。
京都市では、2015年から京都市動物との「共生に向けたマナー等に関する条例」があり「市民等は、所有者等のない動物に対して給餌を行うときは、適切な方法により行うこととし、周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌を行ってはならない」とされています。
つまり、野良猫に餌やりをするときは、適切な方法でする必要があり、そして生活環境に悪影響を及ぼすような餌やりは禁止されているのです。
◆野良猫の餌やりのなにが問題?
東大阪市 無責任なねこのエサやり迷惑しています(啓発用リーフレット)より
一番の問題は、衛生的ではないということです。
・野良猫の排泄問題
猫は、食後に排泄をすることが多く、それが放置されるとフン尿の被害が起こる
・キャットフードを置いておくと、ハエ、ゴキブリが来る
ハエやゴキブリが、猫の食べ残りに群がり不衛生
・キャットフードを置いておくと、カラスが来る
カラスがキャットフードを食べに来て、そのときに収集用のゴミも狙い、周りにゴミが散乱して不衛生になる
衛生的なこと以外にも以下のような問題もあります。
・不妊去勢手術をしないで、餌やりをしていると野良猫が増える
・野良猫が集まってくるので騒音問題になる
◆適切な野良猫への餌やりとは?
(写真:イメージマート)
・野良猫が食べきれる量にする
・キャットフードを置きざりにしない
・食べ終わった容器はすみやかに回収する
・野良猫は、食後にフン尿を排泄することが多いのでフン尿をすみやかに処理
・深夜や早朝は避けて決まった時間にやる
野良猫は、過酷な環境で生活をしていますが、人の生活環境に悪影響を及ぼすような餌やりをしてはいけません。
野良猫に餌やりをする人を届出制にしている行政もあります。
よく調べましょう。
京都市の条例には罰則規定があり、不適切な餌やりをして市長の勧告・命令に従わなかった場合は「5万円以下の過料に処する」とされています。
2003年06月12日の朝日新聞によりますと、餌を与えたので野良猫が集まり、フン尿による悪臭被害を被ったなどとして、神戸市内で居酒屋を経営する女性らが近隣住民4人を相手に損害賠償を求めた裁判がありました。
その結果、前坂光雄裁判官は、フン尿被害について「受忍限度を超え違法」として、隣家の夫婦に40万円の支払いを命じたということもありました。
◆まとめ
イメージ写真(写真:イメージマート)
野良猫は、過酷な環境で生きています。だからといって、餌だけあげるのでは不幸な猫達を増やすだけなのです。
野良猫に餌をあげるときは、その自治体のルールに従って適切に餌やりをしてあげてください。
そして、望まない命を増やさないために、猫を飼うときは、不妊去勢手術は基本です。
石井万寿美
まねき猫ホスピタル院長 獣医師
大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は栄養療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医師さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らす。
石井万寿美の最近の記事 もっと見る