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障害者が犬猫と暮らすグループホーム増加 アニマルセラピーの効用に期待

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障害者が犬猫と暮らすグループホーム増加
 アニマルセラピーの効用に期待

河北新報

障害のある人たちが犬や猫と暮らすグループホームが全国で増えている。
動物の存在が利用者の生活を豊かにするアニマルセラピーの効用が期待され、重い知的障害のある人の気持ちの安定につながっている事例もある。
動物との共生を掲げ、東北に相次いでオープンした施設を訪ねた。
(生活文化部・安達孝太郎)

2020年4月に開所した二本松市の障害者グループホーム「すばる」(定員10人)の事務所に、少しいびつな紙粘土の置物が飾られている。
「みっちゃん」と呼ばれる37歳の男性入所者が、ホームから通う生活介護施設で看板犬の「昴(すばる)」を作った。
「人の名前をなかなか覚えられず、自分の意思で物を作ることも少ないみっちゃんが、『すばる!』と言って持ち帰って来た。うれし涙が出た」。


みっちゃんが紙粘土で作った昴

ホーム運営法人代表の菊池幸美さん(58)が振り返る。
みっちゃんには重い知的障害がある。
自宅で暴れたり、入浴の介助が必要だったり。
「グループホームに入るのは無理ではないか」。
家族は当初、そう考えていたという。
20年7月、ホームの雰囲気を体験するために初めて家族と訪れたみっちゃんを、日本スピッツの雄犬、昴が出迎えた。
昴はみっちゃんに懐き、体を寄せた。
最初は5分だけだったみっちゃんの滞在時間は徐々に延び、10月の入所時にはすっかりホームに慣れた。
みっちゃんの自宅では3年ほど前まで犬を飼っていた。
母親(67)は「ワンちゃんがいると教えたら、ホームに行くことに前向きになった」と振り返る。


みっちゃん(左)の膝の上で甘える看板犬の昴。右は菊池さん

「犬は無償の愛をくれる存在」と幼少時から犬を飼っている菊池さん。
「世話を受ける側のみっちゃんが、昴をなでたり、おやつをあげたりする。世話をする存在ができたことで、みっちゃんが自信を持てた面もあると思う」と話す。
昴は職員の飼い犬で毎日、施設に連れられて来る。
ほかに、菊池さんが保護団体などから引き取った犬4匹がいる。
菊池さんは「ほかの利用者さんも通所作業施設でうまくいかなかった時に、犬に話し掛けて元気になっている」と言う。
「すばる」の運営法人は、保護犬・猫と共生する障害者グループホーム設立のノウハウや運営システムなどを提供するアニスピホールディングス(東京)のビジネスモデルを活用している。
18年からアニスピとその提携法人によるグループホームが開設され、昨年12月時点で全国に約780施設がオープンした。
その一つ、山形市の障害者グループホーム「わんらいふ 山形駅西口」の運営会社は、20年に施設を開所させた。
社長の阿部憲和さん(45)が飼っているダックスフントの「ふく」が、男性棟(定員5人)と女性棟(同7人)で入所者を癒やしている。
今後は「ふく」との相性をみながら、保護犬や保護猫を引き取るという。
阿部さんは「犬がそばにいると会話が少ない人でも口数が増える。気持ちが穏やかになっている。そんなちょっとした変化を大切にしたい」と言う。

豊かな社会への一助に
アニマルセラピーは、どんな点に注意して行われているのか。
人と動物の触れ合い活動を推進する日本動物病院協会員で、障害者の通所・入所施設で動物介在活動のボランティアを続けるあべ動物病院(石巻市)の阿部俊範院長に聞いた。


「人だけではできないことを、動物と活動して実現できている」と語る阿部院長

適性があって最も活躍しているのが犬だ。
褒めて育てられ、人や他の犬ときちんとコミュニケーションが取れることなどが条件になる。
外飼いの犬は屋内に入るとストレスがかかるので適していない。
衛生面では感染症などを防ぐため、施設に行く前に必ず診察し、前日にシャンプーも行っている。
犬のストレス対策も大切だ。
飼い主は、ストレスにいち早く気付くためにもしっかりと愛犬を観察してほしい。
飼い主にはボランティア精神が求められる。
当院では、しつけ方教室に参加している飼い主に、見学などを通じて活動の趣旨を理解していただき、協力を呼び掛けている。
今は新型コロナウイルス禍のため休止中だが、以前は犬5~8匹と月2回活動していた。
施設利用者が椅子に座って円形に並び、飼い主にリードされて回ってくる犬を抱っこしたり、なでたりする。
24年間活動して、精神疾患や知的障害のある人の変化に驚くことが多かった。
情緒が不安定だった人が落ち着き、無表情だった人が笑顔になった。
動物も楽しめることが前提だが、この活動が広がればより社会が豊かになると思う。

▽ ▽ ▽

[アニマルセラピー]犬や猫といった動物を介在させて、障害者や高齢者らの生活の質を向上させる活動。
触れ合いを通じて対象者を癒やす「動物介在活動」や、医療従事者が主導する「動物介在療法」などがある。
科学的に未解明の部分も多いが、犬と人が触れ合い、互いの体内で安心を感じるホルモン「オキシトシン」が増加するといった研究結果がある。


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