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犬猫のマイクロチップ義務化、注意すベき点を日本獣医師会に聞いた

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犬猫のマイクロチップ義務化 健康上の問題は?
 注意すベき点を日本獣医師会に聞いた

2022年4月29日(金) 

◆個体識別番号が入ったマイクロチップを専用の注射器で首の後ろの皮下に埋め込む

犬猫のマイクロチップが義務化へ(画像はイメージ)【画像:イラストAC】

動物愛護管理法改正により、6月1日からペットショップなどで販売される犬や猫についてマイクロチップの装着が義務化される。
生体の体内へのマイクロチップ装着は心理的な抵抗感も根強いが、導入の背景や課題にはどのようなものがあるのか。
環境省とともに導入を主導した日本獣医師会の境政人副会長に聞いた。
(取材・文=佐藤佑輔)

マイクロチップは直径2ミリ、長さ8~12ミリの円筒形で、表面にはアレルギーや拒否反応の起きづらい生体適合ガラスが使用されている。
装着は獣医師と愛玩動物看護士のみが行える診療行為で、専用の注射器で首の後ろの皮下に埋め込む。
マイクロチップの中には15桁の個体識別番号が入っており、専用のリーダーを近づけることで個体を識別、サーバー上のデータと照合することでペットの特徴や所有者の個人情報の検索が可能となる。
科学的な安全性、有効性は保証されているというマイクロチップだが、ペットの体内に埋め込むことには心理的な抵抗感を感じる人もいるだろう。
健康上の問題はないのだろうか。
「注射器を使うので、入れるときに針を刺す痛みはありますが、一度入れてしまえば痛みはまったくありません。世界中で広く使われていますが、拒否反応や腫瘍となるようなケースもほとんどない。皮膚の下を動いてしまい、どこに行ったか分からなくなってしまうことはまれにあります。異物を入れるのが不安という気持ちは分かりますが、健康上の害はまったくないものと思って大丈夫です」
欧米ではペットの迷子や遺棄防止のため、広く普及しているというマイクロチップ。
国内でも任意の装着は進んでおり、日本獣医師会が管理するシステム「AIPO」ではすでに280万頭が登録されている。
この他、いくつかの民間団体がそれぞれ独自のシステムを運営しており、今回の義務化はそれらを一本化する目的もあるという。
義務化となることで現在ペットを飼っている人や新たに購入を考えている人にはどのような義務が生じるのか。
「今後ペットショップ等で販売される犬や猫にはすべてマイクロチップが装着されており、買った際には購入者自身による所有者の登録変更手続きが必要です。現在飼育しているペットや、知人や保護団体などから譲り受けた場合は装着は努力義務ですが、なるべく装着していただきたい。費用は動物病院によって異なりますが、概ね3000~5000円ほどになります。1度装着した場合は譲渡はもちろん、住所変更があった場合にも手続きが必要になります」

◆販売業者による代理登録ができない、獣医師にアクセス権限がないなどの懸念点も

マイクロチップの販売ルート【写真:環境省ホームページから】

環境省とともにマイクロチップ義務化を主導してきた立場の日本獣医師会だが、一方で今回の法改正にはいくつかの懸念点もあるという。
境副会長は、販売業者による代理登録ができないことで制度が形骸化しかねない点、獣医師にチップ読み取りの権限がなく実効性に疑問符がつく点を挙げる。
「ペットショップで購入後、お店ではなく購入者自身が登録をしなければならず、仮に怠ったとしても罰則はありません。せっかくマイクロチップを入れても購入者が登録を忘れてしまっては何の意味もありません。また、個人情報保護の観点から、データベースの閲覧が動物愛護センターか警察署に限られ、獣医師にはアクセス権限がないというのもどうか。例えば迷子のペットが事故にあったとき、まずは動物病院に運ばれてきますが、飼い主が分からなければ治療ができず、たらい回しになることが予想されます」
それまでAIPOを運用してきた日本獣医師会からすると、そのノウハウを無視した環境省のデータベースは無駄が多く、またブリーダー、ペットショップ、購入者の3者からそれぞれ手数料を徴収しても大きな赤字が見込まれるという。
自治体が各地の獣医師会に委託しているという狂犬病予防ワクチンのデータとの一本化もできず、手続きの煩雑さだけが増える結果になるのではと危惧をする。
「これまでは任意でしたが、ちゃんとした飼い主はやっていた。義務化しただけで罰則がない以上、飼い主によっては忘れてしまったり、あえて登録しないということも考えられる。マイクロチップの導入で虐待や遺棄が減少するとは一概には言えません」
きちんと運用できれば不幸なペットを減らせることにもつながるマイクロチップの装着義務化。
飼い主一人一人が正しい知識と責任を持ってペットを迎え入れることが肝心だ。

佐藤佑輔


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