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保護犬だったいろは、新たな道 音に反応「ペットアラートドッグ」へ

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「素質抜群」なのに人が好きすぎる…
保護犬だったいろは、新たな道 音に反応「ペットアラートドッグ」

2022年4月22日(金)  

犬の「いろは」(メス・1歳)は、耳の聞こえない人をサポートする「ペットアラートドッグ」めざして訓練中です。
元々は、より〝狭き門〟である「聴導犬」の候補でした。
でも、よくほえてしまうのが聴導犬としては玉にきず。
ただ、それ以外の素質は抜群で「なんとか活躍の場を」と「ペットアラートドッグ」の訓練にのぞむことになりました。


犬の「いろは」(メス・1歳)は、耳の聞こえない人をサポートする「ペットアラートドッグ」めざして訓練中です。元々は、より〝狭き門〟である「聴導犬」の候補でした。写真は聴導犬=日本聴導犬推進協会提供

◆保護犬だった
いろはは雑種犬で、飼い主のいない保護犬でした。
公益社団法人「日本聴導犬推進協会」(埼玉県)が2020年11月、聴導犬の候補として引き取りました。
聴導犬は、盲導犬と法律上は同じ「補助犬」。
自動車が近づく音、赤ちゃんの泣き声、火災報知機の音――。
生活に必要なさまざまな音を聞いて探し、飼い主に知らせます。
協会は、聴導犬を育て、耳の聞こえない人に「貸与」する活動をしています。
人間と暮らし社会参加することから、人に対して興味を持てるか、環境に順応できるかが聴導犬にとっては重要な資質です。
候補犬を探しに行った際、5頭ほどの保護犬の中から、いろはだけが選ばれました。
「いろはは、人から離れていきませんでした」。
協会の事務局長で、いろはを訓練する水越みゆきさんは、人なつっこい性格をそう振り返ります。

◆状況を察して自らトイレに
ただ、聴導犬への道は〝狭き門〟です。
1~2年の訓練を経て聴導犬になれるのは、10頭のうち数頭だそうです。
残りは、希望する一般家庭にペットとして譲渡されます。
いろはは、抜群の素質がありました。
音を聞いて探すことはもちろん、「人の行動を読み取るのが得意でした」と水越さんは話します。
訓練のために一緒に暮らす水越さんが出かける支度を始めると、状況を察して自らトイレを済ませるそうです。

◆うれしくてほえちゃう
ところが、いろはには聴導犬としては大きな難点がありました。
よくほえることです。
「怖がっているわけでなくても、誰か好きな人に会うとうれしくなってほえちゃうこともあります」
聴導犬はペットと区別され、飲食店やショッピングセンターへの同伴は「拒んではならない」と法律に記されています。
特別な犬だからこそたくさん訓練されますが、その一環としてむやみにほえないか、評価されます。
「社会に出れば犬が嫌いな方もいます。少しほえただけでも、気分がすぐれなくなる方もいます。だから、不快な思いをさせないように訓練するのです」。
いろはは、聴導犬になるのは厳しいと判断されました。

◆音に反応するペット犬
水越さんは悩みました。
素質のあるすばらしい子で、〝もったいない〟。
でも、ほえやすいのは性格でもある。
無理に抑えこんで訓練をするのは違う――。
そんな時に浮かんだのが、長年温めてきた「ペットアラートドッグ」構想でした。
聴導犬のように電車やバスに乗って社会参加する時のサポートまでは求めない。
けれども、聴導犬と同じように音に反応する。
聴導犬とペットの中間のような、いわば「音に反応するペット犬」を育てて譲渡するアイデアです。
これまでは聴導犬に向かない候補は、ペット犬として一般家庭に譲渡してきました。
うち一部の犬を「ペットアラートドッグ」として訓練することを考えました。
いろはには、「適材適所」の構想です。
「いつか取り組んでみたいと思っていましたが、いろはの存在が後押ししてくれました」と水越さん。
今年度から日本聴導犬推進協会の事業として始めるそうです。

◆深く眠れるように
耳の聞こえない人にとっては、生活の質を上げることにつながりそうです。
事業を始めるにあたり、日本聴導犬推進協会では、試験的に「ペットアラートドッグ」を育てて譲渡しました。
山下智恵子さんは、かつて聴導犬のユーザーでした。
聴導犬が亡くなり、生活に困ることも出てきたそうです。
聴導犬が亡くなるまで、目覚まし時計代わりに起こしてくれました。
亡くなった後は時計のバイブ機能を活用するなどしましたが、起きられるか不安で睡眠が浅くなったと話します。
「ペットアラートドッグ」のベル(メス・7歳)がやってきたことで、「2年ぶりに深い眠りが得られるようになりました」


山下智恵子さん(右)は、かつて聴導犬のユーザーでした。聴導犬が亡くなり、生活に困ることも出てきたそうです。写真は「ペットアラートドッグ」のベル出典:日本聴導犬推進協会提供

◆コロナで協会の収入半減
聴導犬を1頭育てるためには、訓練のための人件費、医療費、えさ代など、300万円前後かかるとされています。
一方で、協会は聴導犬を無償で「貸与」しているため、寄付金や講演などの事業収入でまかなっているのが現実です。
ところが、新型コロナの感染拡大で、事業収入を得るための活動が制約されたり、寄付金が集まりにくくなったりしていると言います。
2020年度は、例年に比べて約半分の収入だったそうです。そのため協会では、活動資金を得るためのクラウドファンディング「聴覚障がい者の日常生活をサポートする聴導犬の育成と普及を」(https://readyfor.jp/projects/hearingdogjp)を、28日まで実施しています。
水越さんは「聴導犬と聴覚障がい者の方が暮らしやすい社会を実現するために、ご支援をよろしくお願いいたします」と話しています。

 
犬の「いろは」(メス・1歳)は、耳の聞こえない人をサポートする「ペットアラートドッグ」めざして訓練中です。元々は、より〝狭き門〟である「聴導犬」の候補でした出典:日本聴導犬推進協会提供


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