飼い主をじっと見つめ…元保護犬が散歩をねだるようになるまで
立ち上がると身長をゆうに抜かす”超大型犬”を飼う覚悟と責任
2021年12月26日(日)
2匹の大型犬が家の中をドッグランのように駆けまわる姿が話題に。
2匹は元保護犬で、一般家庭からの飼育放棄だったり、生後間もない時に劣悪な環境から保護された経緯がある。
飼い主さんは犬たちと快適に暮らすために一軒家を購入し「滑りやすい床は犬の足腰や関節に負担をかけるから」と、家のフローリングを玄関床に改築した。
飼い主さんをじっと見つめて「散歩に行きたいです…」とアピールする様子がSNSにはアップされているが、その関係性に到達するまでには様々な困難があったという。
超大型の保護犬と暮らすために、飼い主さんがしてきた覚悟とは。
「散歩いきませんか…?」2匹の超大型犬に、じっ…と見つめられる飼い主さん(画像提供:肩幅広美さん)
■「犬を飼うこと自体が向いてないのかと、泣いたこともありました」
ツイッターの投稿には、2匹でワンプロにはげむ様子、飼い主さんに遊びの誘いを断られてシュンとする様子も。
立ち上がると飼い主さんの背丈を超えるほどの”超大型犬”だが、それをまったく感じさせないひょうきんな一面が載せられている。
犬の名前は、ゼッゼ(5歳、42kg)と、りっちゃん(1歳、55kg)。
先住犬のゼッゼを迎えたときは「保護犬の大変さも全く知らなかった」と飼い主さんは振り返る。
「正直にこんなことを話すと批判も出てくるかもしれませんが、当時は『犬を迎えるなら里親で』と決めていただけで、あとはただ大型犬と暮らすハッピーで楽しい日々しか考えていませんでした。実際に迎えてからの苦悩は相当でしたね。ゼッゼとの関係作りに行き詰って悩み、犬を飼うこと自体が向いてないのか、私はゼッゼを幸せにできないのかと泣いたこともありました」
力が強い大型犬を飼う、覚悟と責任。
飼い主さんは「ちゃんと扱わなければ!」という責任感から、しつけばかりに一生懸命になっていた。
「一緒にいて楽しい、愛おしいと思う反面、しんどい、苦しいと思うことも多かったのが正直なところです。目の前にいるゼッゼそのものを全く見れていなくて、ゼッゼの心がもっと遠くなっていると感じる瞬間もありました」。
「ゼッゼには本当に申し訳ないことをしたと思っています。もっともっと早く『この人は大丈夫!』と安心させてあげたかった」と飼い主さん。
解決の糸口が見えたのは、しつけは無茶苦茶でもいいから、とにかく犬と楽しく過ごそうと思うようになってから。
犬が大好きな散歩、走ること、山の散策など、1日に何時間も続けたという。
「もっとむちゃくちゃな犬になるかもしれない…という不安は気合いでドブに捨てました。体力勝負でしたね(笑)。そんな日々の中でだんだんと心の距離が縮まって、ゼッゼの信頼を感じるようになりました。そこから新たに出会ったいろんな方の協力もあって、今の私とゼッゼがあります」
■超大型犬を2匹飼うための工夫、20代で一軒家購入してフローリングの改築も
オール玄関化した床にちょこんと座り、飼い主さんを迎えてくれる先住犬・ゼッゼ。ここまでの関係性になるには大きな苦労があったという
最近仲間入りしたりっちゃん(1歳、55kg)は、保護活動をしている人から里子として迎えられた。
かなり劣悪な環境からの保護だったという。
飼育が難しい超大型犬は、保護されてから長い間里親が見つからないケースもある。
応募があっても、安心して託せる先なのか、より慎重に判断しなければならないからだ。
「りっちゃんの場合も、応募はあっても安心して託せる方がいなかったそうです。今月中にりっちゃんの貰い手が現れなければ、保護主さんが引き取るかわりに保護活動は諦めると決めていたと…。そんな中で私がりっちゃんの募集を見つけて応募しました」
トレーナーでもある保護主さんは、先住犬・ゼッゼの飼育のことで相談をしていた間柄だった。
だからこそ「りっちゃんも安心して託せます』と言ってくれたことで自宅に迎えることに。
連絡をとった三日後にはトライアルに来ていたという。
飼い主さんは、超大型犬を2匹飼うために様々な工夫をして、必要な知識も蓄えてきた。
20代での一軒家購入、フローリングを玄関床のタイル素材に貼りかえる改築工事も行い、ドッグランのように室内を自由に駆け回る犬たちの様子はSNSでも話題になった。
「滑りやすい床は犬の足腰や関節に負担をかけるので、家の床をオール玄関化しました。若いうちから足腰や関節などの身体的な健康には重きをおきたいと思ったからです。栄養についても同じように考えていて、シニアになって蓄積された栄養不足や偏りが何らかの形で表面化しないよう、今のうちからシニアになることを視野に入れて生活環境や栄養状態を整えています。あと、家の中では常にフリーにしています。犬たちが自分で、過ごし方や場所を決められるように、選択の自由を大切にしています」
彼らの幸せを追求するには、「とにかく勉強です」と飼い主さん。
「彼らと私は、言葉での明確な意思疎通ができません。なので、私から彼らを彼らの目線で理解しようと努力する必要があります。ゼッゼとの苦しい経験からも、世間に溢れかえる情報や知識の正誤を判断するには、それ以上の情報と知識が必要だと思いました。なんて言ってますが、勉強してもしても知らないことが多すぎて際限がなくめっちゃ大変です。時間もお金もかなりかかります。私がもう少し学びを深めたら、困ってる飼い主さんと犬の力になる活動をしたい。犬たちが与えてくれる全てのことが私の人生や心を豊かにしてくれています。たくさんのことを与えてもらっているのは私だなといつも思います」
飼い主さんのお母さんに甘える、りっちゃん (C)肩幅広美/@Ayoster_classic
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