救助犬4頭、懸命の捜索 泥まみれで作業 熱海土石流
2021年7月15日(木) あなたの静岡新聞
熱海市伊豆山で発生した大規模土石流災害の現場で14日まで、4頭の災害救助犬が大量の土砂が流れ込んだ厳しい現場で行方不明者の捜索に当たった。
残念ながら、発見にはつながらなかったが、救助犬の訓練などを担うNPO法人災害救助犬静岡専務理事の市川金子さん(58)=掛川市=は「少しでも、必死の作業を続ける救助隊の助けになれば」との思いで活動を支えた。
土石流災害の現場で行方不明者の捜索に尽力した4頭の救助犬ら=12日、熱海市
参加したのは県内から集まったラブラドルレトリバーのゴン(12)、ウィル(5)、ジュリエット(11)、アド(7)。
厳しい訓練を重ねた捜索の“スペシャリスト”で、5人の同NPO会員と共に災害現場に足を踏み入れた。
災害救助犬は現場で移動しない人間のにおいを嗅ぎ分け、行方不明者が居る可能性の高い場所をピンポイントで特定し、効率的な救助の一助を担う。
災害発生当日から出動の準備を始め、受け入れ態勢の整った11日から活動を開始。
土石流で住宅地が流され一面が土砂で埋まった現場を、粘土質の泥に足を取られながら進んだ。
地面にガラス片など危険物があるか確認してから救助犬を放し、人間の足がすねまで埋まる深い土砂の下に行方不明者がいないか探し続けた。
連日の暑さや突然の雷雨などにも苦しみながら、泥まみれで作業した。
20人以上いる会員はほとんどが一般の飼い主で、救助犬も家に帰れば普通の愛犬。
野営や力仕事も必要な厳しい活動を支えるのは「愛犬を役に立てたい」という思いだ。
これまでも、東日本大震災や広島土石流災害など全国の多様な災害現場で活動してきた。
熱海の土石流災害はいまだに16人の行方が分かっていない。
救助犬隊長を務めた金原優海さん(36)=浜松市=は「一刻も早く皆さんが見つかり、復興へと進んでいってほしい」と願った。
熱海で献身的捜索 災害救助犬が空自・浜松基地に帰還
2021年8月3日(火) 中日新聞
熱海市で発生した土砂災害現場で安否不明者の捜索に当たった航空自衛隊浜松基地の災害救助犬、アナ号(雌、五歳、ジャーマンシェパード)とジャッキー号(雄、四歳、ラブラドルレトリバー)が、任務から引き揚げて浜松に帰ってきた。
捜索活動から帰還したアナ号(左)とジャッキー号(右)=浜松市中区の警備犬訓練所で
がれきの中から生存者を捜し出す訓練を受けてきたが、現場は一面の土砂という全く初めての環境。
人間が埋まるほどの泥の中を、ハンドラー(訓練士)が抱え上げて捜索場所まで向かった。
嗅覚がさえぎられ、直射日光にさらされる中、休みをはさみつつ活動を続けた。
特にジャッキー号は毛が黒いため熱を集めやすく、細心の注意が必要だったという。
石が転がり落ちるなど危険な瞬間もあった。
けがや体調不良にも見舞われた。
同基地では、特殊な環境でも対応できるように、さらに災害救助犬の訓練を重ねるという。
(糸井絢子)