兵庫県たつの市のミニ動物園、5年で飼育の47匹が死ぬ
…栄養不足、専従飼育員なし
2021年6月24日(木) 読売新聞
兵庫県たつの市の市立龍野公園動物園で、今年3月末までの過去5年間に飼育中の動物計47匹が死んでいたことが市への取材でわかった。
現在の飼育点数の半数超にあたり、専門家も驚く数だ。
栄養不足など世話が行き届いていないことが原因の事例が目立つ上、24時間開放が動物のストレスにつながっているとの指摘もあり、市は管理体制を見直す。
(北野浩暉)
ヒツジ舎で過ごす2匹のヒツジ。暑い日が続くが、毛刈りがされていない(1日、兵庫県たつの市の市立龍野公園動物園で)=八木良樹撮影
■痩せて脱毛
「栄養不足が疑われる。寒さにより衰弱したと考えられる」。
今年1月に痩せ細って死んだカニクイザルの死亡診断報告書にはそう記載されていた。
昨年3月に死んだ別のカニクイザルも「痩せて脱毛し、栄養状態が悪かったと思われる」との診断だった。
読売新聞が市への情報公開請求で入手した死亡診断報告書などの文書によると、死んだのは2016年4月から今年3月末までにカニクイザル13匹、モルモット9匹、ヤギ4匹など12種にのぼる。
18年2月にはツキノワグマ1頭も死んだ。
「神戸どうぶつ王国」(神戸市)代表で、日本動物園水族館協会(JAZA)の佐藤哲也理事は「動物が死ぬペースが速い。過去には通常以上に痩せた高齢のヤギがいた。冬に弱いカニクイザルを屋外だけで飼うのも疑問だ」と話す。
■24時間開放
園は1955年に開園し、入園無料。
年中無休で、24時間開放している。
現在は約7500平方メートルの敷地に、クマやクジャク、サルなど12種81匹を飼育。
動物は主に姫路市立動物園から無償譲渡されたり、NPO法人から購入したりしている。
合併してたつの市になった2005年度以降、入園者数は09年度の約3万8000人がピークで、19年度は約1万1000人だった。
■管理体制改善へ
背景には、規模の小さな動物園ならではの難しさがある。
園には専従の飼育員がおらず、専門知識のない市職員ら数人が交代で掃除や餌やりなどを担当。
外部からの指摘で、19年秋から市の委託を受けたシルバー人材センターの男性1人が世話をするようになるまでは、休日は誰も出勤していなかった。
一部の動物は出生日や身長、体重などの個別把握もできていないという。
夜間は職員が不在で、過去にはクマ舎に夜中にロケット花火が打ち込まれたこともあった。
クマ舎以外の六つの飼育施設にはバックヤードもない。
ストレスで毛が抜けて治療を受けたクジャクもおり、常に見られるストレスが原因とみられる。
園の予算は近年は年800万~1100万円。
同じぐらいの規模の、ある公立動物園では年間予算は約5000万円だといい、「1000万円では運営は難しいのでは」とする。
一方で、園は市内の児童らが遠足で訪れるなど市民に親しまれており、授業の一環で動物を学校などへ連れて行く取り組みにも力を入れている。
市は「市民の憩いの場でもあり、動物と触れ合える身近な場所が必要だ」として園を存続させる考えで、今後、管理体制の改善を進める。
動物のストレスを解消するため、夜間の出入り口の封鎖を検討するほか、定期健診を担当する動物病院から早期の治療につなげるため、2か月に1回の診察頻度の見直しを求められたことを受け、今後は月1回に切り替えるという。
■レジャー多様化、財政難で環境厳しく…各園、管理体制に知恵
少子化やレジャーの多様化、運営する自治体の財政難などで動物園を取り巻く環境は厳しさを増す。
JAZAによると、加盟動物園数は90園で、この20年で小規模な園を中心に10園近く減少。
旭山動物園(北海道)や大阪市天王寺動物園など一部好調な園もあるが、全体の入園者数は1991年度の計6565万人をピークに減少傾向が続き、2019年度は計4089万人だった。
JAZAは「規模が小さくても、市民に身近な園が果たす役割は大きい」としており、各園も管理体制などに知恵を絞っている。
青森県弘前市の「弥生いこいの広場」の動物園は、14年度に市が3000万円をかけて動物舎の改修に着手。
飼育環境を野生での暮らしにできるだけ近づける「環境エンリッチメント」などに取り組んでいる。
かつて「日本一小さな動物園」と呼ばれた大阪府池田市の「五月山動物園」では、10人の飼育員に加え、近隣の獣医師と嘱託契約を結んで健康状態を随時チェック。担当者は「新しく動物を連れてくるのではなく、今いる1頭1頭を手厚く育てている」としている。
動物園で「5年間で動物47匹」が死亡
ストレスが原因か…クジャクも羽を自ら抜いてしまうほど
2021年6月25日(金) カンテレ(関西テレビ)
兵庫県たつの市の小さな動物園で5年間で動物47匹が死んでいたことが分かりました。
【山本大貴アナリポート】
動物園で「5年間で動物47匹」が死亡 ストレスが原因か…クジャクも羽を自ら抜いてしまうほど(関西テレビ) - Yahoo!ニュース
「兵庫県たつの市にある龍野公園動物園に来ました。こちらは24時間出入り自由で、動物がズラっと並んでいます。こちらご覧ください、クジャクの首元が白くなっています。こちらはストレスが原因とみられていまして首元の羽根を自ら抜いてしまっているそうなんです」
兵庫県・たつの市にある龍野公園動物園で、2016年から今年3月末までの5年間に、カニクイザルやモルモット、ヤギなど、飼育していた動物47匹が死んでいたことが分かりました。
【たつの市都市政策部 野本浩二 部長】 「結果としてこういったことを招きまして、根本的な見直しが必要であることを深く受け止めております」
たつの市によると、この動物園について市民から「飼育スペースが狭い」「日当たりが悪い」「栄養状態が悪い」などの指摘があったといいます。
【来園者は】 「くじゃくがいるところ、羽を広げるにも柵に当たってしまったりして、押し込められている」 「お金は少しとっていただいてもいいので、動物たちがストレスを感じないような動物園になってほしい」
たつの市は、2年前に木を伐採して日当たりを良くしたり、獣医師の指示を受けて飼育スペースやエサの改善を図ったりしたといいます。
【たつの市都市政策部 野本浩二 部長】 「猿はやはり強い者が弱い者から取る弱肉強食の世界がありますので、(改善前は)一匹一匹が均等に餌が与えられていなかったのも事実だったかと考えます」
また平日は市の正規職員などがいるものの、2年前まで土日祝日は職員がおらず、自動給餌機などでエサをやっていました。(現在は土日に臨時職員1人)
日本動物園水族館協会の佐藤哲也理事は、取材に応じて以下のように指摘しました。
「機械で生き物は飼えません。例えば逃走が起こることもあるだろうし、ましてや土日祝は逆に混み合う込み合う日なのであり得ないですね。公立の動物園は全国にたくさんありますけど、通常の動物園であれば、そんなことははあり得ない」
龍野公園動物園について、たつの市は「動物への配慮が欠けているのは、我々も課題と考えている。今後改善していきたい」としています。