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安易に買う人を止めない限り不幸なペットは増え続ける

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浅田美代子と杉本彩が断言。
安易に買う人を止めない限り不幸なペットは増え続ける

2021年6月10日(木) 現代ビジネス

◆コロナ禍で高騰するペットの価格

photo/Getty Images

コロナ禍で家時間が出来て、高まるペット需要。
しかし、一時的な感情で購入し、失業、転職などで飼育できなくなるケースもある。
劣悪な繁殖業者だけでなく、求める側の意識も変えていかないと不幸の連載は終わらない。
トイ・プードルやボストン・テリアが70万円以上、猫ではベンガル、スコテッシュフォールド、ブリティッシュ・ショートヘアなどが30万円、40万円以上……。
大手ペットショップのサイトで人気の犬種や猫種をチェックしてみて、驚いた。
コロナ禍でおうち時間が増えたことで、触れ合える癒しを求めてペットを買う人が急増し、子犬や子猫の値段が高騰し続けているというので、覗いてみたのだが、まさかこれほどとは……。
しかし、高いお金を出してペットを買ったはいいが、「やっぱり飼うのは難しい」と、わずか数日で飼育放棄するケースが続出しているというのだ。
長年、ペットの飼育放棄などの動物愛護問題に向き合い、活動を続ける女優の浅田美代子さんと杉本彩さんが、杉本さんが主宰する『公益財団法人動物環境・福祉協会Eva』のYouTube「Evaチャンネル」で対談を行った。
前編では、ペットブームの背景にある、悪徳な繁殖業者の実態と壮絶すぎるペットの現実をお伝えした。
後編では、ペットを迎える側の消費者も意識を変えていってほしい、という二人の想い……。
新たに解説などを加え、改編しお伝えしたいと思う。

※記事では、動物たちの現実を多くの方に知っていただくために、浅田美代子さんから劣悪繁殖業者の現場写真をお借りし、一部掲載しています。ご覧になるの際にはご注意ください。

◆ペットは可愛さや癒しだけの存在ではない

photo/Getty Images

よく考えずにペットを購入し、「鳴き声がうるさい」「臭い」と飼育放棄する人も後を絶たない。
「緊急事態宣言が延長されて仕事を解雇され、犬を飼う余裕がなくなった、という経済的理由による事例もありますが、驚くことに“思うようにしつけができなくて、どこででもオシッコをしてしまうから”とか“鳴き声がうるさいから”など、飼い主の身勝手な理由で捨てられるケースも多いのです」と話す、浅田美代子さん。
しかも、自身で責任を持って親族や友人などに当たり引き取り先を探すならまだしも、自治体の動物愛護センターや保健所に持ち込む人が続出しているというから、事態は深刻だ。
愛護センターや保健所に預けられたら、引き取り手がない場合、それらのペットの末路は最悪、殺処分になるわけで、長年、ペットと暮らした経験のある人からすれば、耳を疑うような話だと思う。
どうしてこんなことが起きてしまうのだろうか。
「残念ながら、そこには消費者の意識の低さもあると思います。ペットを飼うということは、生活を共にする家族が増えるということ。しかも犬や猫は自分で食事を作ったり、トイレの掃除をしたりすることはできないので、飼い主が世話をしてあげなければいけないのです。  人間と同じように、病気になることもあるし、高齢になったら介護が必要になることも。そうやって10年、15年と一緒に暮らし、最後まで面倒を見ることができるのか、ということをよく考えて(飼う人は)決断するべきなのに、ただ“可愛いから”とか、“癒されたいから”など、一時の安易な気持ちで飼っている人が、どれほど多いか……」(浅田さん)
ショップのケージの中でスヤスヤ寝ていたり、チョロチョロしている愛らしい姿が永遠に続くわけではないということを、じつはわかっていない人が多いのではないか、と浅田さんはいう。

---------- 浅田美代子さん
女優、歌手。73年ドラマ『時間ですよ』でデビュー。国民的人気者に。映画『釣りバカ日誌』シリーズ(94年~09年)、河瀬直美監督『あん』(15年)、『朝が来る』(20年)など多数出演。動物愛護活動にも熱心に取り組んでいる。 ----------

◆高齢者に子犬を売るペットショップも

写真提供/公益財団法人動物環境・福祉協会Eva

「もちろん、すべてのショップがそうだというわけではありませんが、たとえば70代のおじいちゃんおばあちゃんに平気で子犬を売っている店もあります。高齢のお客さんに対して、“この子はこれから14~15年、長ければもっと生きます。ちゃんと看取ることができますか? ”と確認したり、“そのお年では子犬は無理ですよ”と助言したりするようなお店は、とても少ないですね」(浅田さん)
浅田さんが見聞きした事例では、こんなケースもあったという。
「ジャック・ラッセル・テリアは本来、元気いっぱいで活動的な犬です。それを“この子はそんなにお散歩に行かなくても大丈夫ですから”と嘘の情報を与えて高齢者に売っているお店がありました。命を渡すわけですから、きちんとそのペットの性格や特徴を説明して、納得してもらった上で販売するのが、本来あるべき姿なのではないでしょうか」
杉本さんが理事長を務める「公益財団法人動物環境・福祉協会Eva」では、現在、ペットショップで犬や猫を買おうとする人たちに向けてチラシを作成し希望者に無償配布している。
そこには「動物を迎える前にすること」として、具体的なお世話の内容の確認、周囲への配慮、(飼おうと思う)動物の性格を知ること、家族の同意はあるか……など、飼う前に改めて確認してほしい事柄がまとめられている。
「何か購入するときに、その背景を知ることはとても大切。今は、食品や医薬品、その他さまざまな製品について、トレーサビリティ(その品物がいつ、どこで、誰によって作られたのかを明らかにすること)は常識になっています。それはペットも同じで、ペットを購入する・迎える側がもう少しその背景を知るアクションを起こしてほしいですね」(杉本さん)

---------- 杉本彩さん
 女優、作家、ダンサー、実業家、リベラータプロデューサー、公益財団法人動物環境・福祉協会Eva理事長。 2014年「一般財団法人動物環境・福祉協会Eva」を設立し、理事長になり、動物愛護活動に力を注ぐ。『動物たちの悲鳴が聞こえる – 続・それでも命を買いますか? 』(ワニブックスPLUS)が話題を集め、今月『動物は「物」ではありません!  杉本彩、動物愛護法“改正"にモノ申す』(法律文化社)を出版されたばかり。 ----------

◆近親交配の乱繁殖で体調に問題がある動物も
少なくともどこのブリーダーなのか、犬舎の名前、親の名前など、その子がどこから来たかという情報は確認しておきたい、と浅田さんもいう。
たとえば皮膚病は親からの遺伝の場合もあり、事前に親の過去の病歴を知っておくことで、自分が迎えたペットがもし発症した場合でも、慌てずに対処することができるのではないだろうか。
「持病があることを知らずにペットショップで犬や猫を購入して、その子がのちに発症したとしても、多くの飼い主さんは、何年も一緒に暮らした家族だからと、簡単に手放したりはせず、病院で治療を受けさせています。  でも中には、ペットショップに文句をいいに行く飼い主もいる。すると、それに対して“じゃあ、別のに取り替えます”というショップもあって……。その取り替えられた子は、一体それからどうなってしまうのかと思うと、本当に恐ろしい」(浅田さん)
ショップでよく売れる人気の犬種、たとえば今ならチワワ系やプードル系などを“悪徳繁殖業者”が次々と乱繁殖させてオークションに持ち込んだり、直接、ペットショップに卸したりしているケースもあると聞く。
「次々と子供を生ませようということで、近親でも気にせずに交配させているケースもあり、そのような乱繁殖によって奇形の子が生まれてくることも少なくありません。奇形や病気をもって生まれた子たちはペットショップに並ぶはずもなく、あっさり処分されてしまうのです」(浅田さん)
とにかく「幼くてかわいい」ことが重宝されがちだが、動物たちは人間のエゴを満たすための“かわいいおもちゃ”ではなく、命の受け渡しをしているのだということを、売る側も買う側も、改めて考えてほしい。二人はそう訴え続けている。

◆高齢になって捨てられる動物たち

保護犬だった浅田さんの愛犬のアヴィちゃん。12年間過ごし、見送ったばかり。写真提供/浅田美代子

「動物愛護センターには、今も多くの老犬が持ち込まれています。10年以上、一緒に家族として暮らしてきた犬を、“足腰が弱って自力で立てなくなったから”とか“オムツを毎日替えるのが大変だから”といって飼い主自身が飼育放棄しにくるのです。  いきなり家からセンターに連れてこられた犬は“もう自分は捨てられた”ということがわかるのでしょう。ショックで生きる気力を失って2~3日で亡くなってしまう子もいます。とてもやりきれないですね……」(浅田さん)
これまでに高齢ペットの介護や看取りを何度も経験している浅田さんと杉本さん。
二人は「動物たちの介護はものすごく愛おしいことだ」と口をそろえる。
奇しくもこの取材中も、美代子さんは老犬の介護生活の真っ最中だったし、杉本さんの愛犬も闘病生活を送っていた。
「12年前に私が初めて飼った保護犬で、アヴィさんといいます。飼い始めたときに推定年齢5~6歳だったので、今は17~18歳ぐらいでしょうか。昨年、急性腎不全と診断され、皮下点滴をしています。  足元がちょっとおぼつかなくて、おしめをするのは衛生的に気になったので、うちでは“おねしょ”です(笑)。アヴィさんはおしっこが出ると、たいてい ワッ! と吠えるので、あ、出たなと思って見に行くと、シートが濡れている。はいはい、といって取り替えてあげると、そこからまたスーっと眠りにつく。  その様子がかわいいんですね。おしっこをした後にヨロヨロと立ち上がろうとするときは、思わず“頑張れ、頑張れ! ”と声をかけたりして……。ご飯を完食してくれたらそれだけで嬉しいし、日々、アヴィさんと気持ちが通じていることを感じています」(浅田さん)
排泄物を片付けたり、洗濯したり、見守ったり、介護生活ですることはたくさんある。
でもそれを苦痛と感じないのは、愛情があるからこそ、と杉本さんも話す。
「介護をしながら、生活の中で小さな愛を発見したり、自分の心の中にこんな感情があったんだ、という嬉しい気づきがあったり。あたたかい気持ちになれる時間だと思います。 そうやってペットが最期まで安心して過ごせるようにして、看取ってあげるのが、飼い主の責任だと思いますね」(杉本さん)
この対談の後、5月初旬にアヴィさんは浅田さんの腕の中で静かに息を引き取ったという。

◆動物販売の矛盾をいっしょに考えてほしい
日本では、ペットショップというとまさに“ペットを売っている店”のイメージだが、ヨーロッパでは事情が違うようだ。
「ドイツやイギリスのペットショップにはフードやリードなど、ペットの生活に必要な物が売られているだけです。 犬や猫を飼いたい人はブリーダーから直接、購入したり、動物保護団体の施設から引き取ったりするのが普通です」(浅田さん)
日本では生体販売が認められているため、ペットショップでペットを買う行為を責めることはできないが、せめて、飼いたいと思った犬や猫の素性や背景をちゃんと知り、長い付き合いになるという覚悟を持って迎え入れてほしいと二人はいう。
「購入するのであれば、ブリーダーさんを訪ね、仔犬子猫の飼育環境など納得したうえで迎えてほしいですね。ペットショップで購入する際も、様々な質問をしてきちんと答えられる店舗なのか、迎える側も慎重になってほしいと思います。  そういう消費者一人ひとりの姿勢が、一歩ずつ不幸な動物を増やさないことにつながっていくと思います。でも、こういうことをいうと“じゃあ、買う人が減ってきたら、ペットショップにいる子たちは一体どうなっちゃうんですか! ”って、変なことをいう人たちもいて……」(浅田さん)
「それをいい始めたら、動物の不幸の問題は終わりません。需要が増大することが悪徳繁殖業者の乱繁殖につながるわけですから、そういう業者が入る余地をなくすために、まずは安易な気持ちで買わないこと。こういった悪徳な飼育業者や販売業者もいるという現実を知って、消費者も意識を変えていくことが大事だと思うのです。  不幸な命を増やさないように、これからもできる限りの呼びかけを続けていきたいですね」(杉本さん)
最後に、前編でもご紹介した、浅田美代子さんがレスキューで入った劣悪な繁殖業者の現状を伝える写真を掲載する。
ペットを求める人が居続ければ、こういう繁殖業者は増え続けてしまう。
そろそろ本気で、蛇口の元を締める法整備が必要なのではないだろうか。

【写真】閲覧注意!劣悪繁殖業者の現場写真と愛情いっぱいに看取られた愛犬愛猫の違い

文/牧野容子
FRaU編集部

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