幼い犬猫の販売規制へ 「8週齢規制」6月1日に施行
2021年5月3日(月) 共同通信
生後56日以下の子犬や子猫の販売を原則禁じる「8週齢規制」を定めた改正動物愛護法が6月1日に施行される。
幼いうちは感染症リスクが高い上に、早くに親元から離すと、かみ癖や攻撃性が増すといった問題行動につながる恐れがあるとされるためだ。
成長後の飼育放棄防止が期待される一方、幼いほど売れ行きやコストで優位という事情もあり、悪質業者が生後日数を偽り販売することを懸念する声もある。
「画面A、トイプードルが落札されました」。
3月末、埼玉県内で開かれたペットオークション。
繁殖業者が持ち込んだ犬猫約800匹の映像が、生年月日や血統などの情報とともに複数のモニターに表示されると、集まったペット店関係者は次々と競り落とした。
モニター画面に映し出された、ペットオークションで売買される子犬=3月、埼玉県上里町(モニター上の金額にモザイク加工しています)
環境省などによると、国内で売買される犬猫の約6割は、こうしたオークションを経由するという。
「生後日数が浅いほど小さくてかわいいと人気で、高値がつきやすい」と話すのは繁殖歴40年のブリーダーの男性(60)。
会場内にある販売規制強化の掲示を見ながら「決まったことだからきちんと守るだけだが、子犬は10日で見た目が変わってしまう」とも語った。
現行の動物愛護法は、本則で生後8週に当たる56日を超えるまで販売を禁止しているが、実際には付則に基づき、7週に当たる49日を超えれば販売できる。
この日も子犬、子猫の多くが50日目で出荷されていた。
ペットオークションの前に獣医師の検査を受ける子犬=3月、埼玉県上里町
“二重基準”となった背景には愛護団体側とペット業界の長年のせめぎ合いがある。
団体側は母親らと触れ合う期間が不十分だと、かみ癖などの問題行動が出やすくなり、嫌がる飼い主の飼育放棄につながると主張。
これに対し、業界は「『8週齢』の科学的根拠があいまいだ」「飼育コストがかかる」などと猛反発し、激変緩和措置として付則が設けられた。
その後も生後日数の線引きを巡る議論は国会議員らを巻き込んで紛糾。
消費者の動物福祉への意識向上を追い風に、今回の改正で付則は削除されることになった。
ペット販売大手のコジマが「個体の健康を考慮する」として56日を超えた引き渡しの推奨に先手を打つと、他社にも広まった。
それでも懸念は残る。
生年月日について、日本獣医生命科学大の田中亜紀講師は「現状は繁殖業者の申告制で、いくらでも調整できる」と指摘。
生後日数が意図的に変えられても、それを見た目だけで見抜くのは獣医師などのプロでも難しいとして「ペット業界は信頼を高めるため、第三者のチェック機能や自主規制が働くような仕組みの導入を検討すべき」と話した。