Quantcast
Channel: 動物たちにぬくもりを!
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3575

書籍「犬がいた季節」

$
0
0

犬のコーシローが12年間見つめた地方の進学校に通う18歳の青春
『犬がいた季節』

2020年11月14日(土) ダヴィンチニュース

(ブックレビュー:小説推理2020年12月号掲載)


伊吹有喜インタビュー


伊吹有喜さん

伊吹有喜 いぶき・ゆき
●1969年、三重県生まれ。2008年、『風待ちのひと』で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞してデビュー。『四十九日のレシピ』『ミッドナイト・バス』『カンパニー』など、ドラマ化、映画化、舞台化された作品も多数。『雲を紡ぐ』が第163回直木賞候補に。近著に『天の花 なでし子物語』など。

『犬がいた季節』は三重県の進学校を舞台に、18歳・高校3年生の生徒たちの物語を描く連作短編集。
作中で流れる12年間は、生徒たちによって学校で飼われていた白いふかふかの毛の犬・コーシローが生きた時間。
地方の進学校も、コーシローも、伊吹さんの母校と、そこに実在した犬がモデルだ。
「コーシローは、昭和49年から60年までの12年間、実際に学校で暮らしていました。私は61年卒なので、そのころはもうよぼよぼで、いろんなところでべたーっと寝ていて。たまにあくびをして、生徒を見て“おお、がんばっとるなあ”みたいな感じでのそのそ歩いていく。5話のコーシローが、私が見たころの姿です。入学して最初に、廊下ですれ違った時は、学校という管理されている場所に、リードのない犬が自由に歩きまわっていることに驚いてしまって。まぼろしでも見ているのかと」

打ち合わせの雑談でそんな話をしたのが、この小説が生まれたきっかけになった。
「時代は1988年から2000年の12年間に変えました。どこか不穏で、ざわめいていた昭和と平成の境目の年に始まり、20世紀が21世紀になっても日常に変わりはないのに、再び時代の境目にいるように感じた年で終わり、というのを書きたくて。12年かけて、18歳の生徒たちの物語を犬の目を通して語ることで、時代が移って変わるものと、時代が移っても変わらないもの、その両方を描けるんじゃないかと」

作中に出てくる音楽がエンディングに流れるイメージ
それぞれの物語は、その時代に流行っていた音楽、流行、時事ニュースなどを背景に語られ、とりわけ当時のヒット曲からは、時代の空気感が伝わってくる。
「連載中は取り上げるその時代の音楽が、各話のエンディングに流れるようなイメージで書くことを心がけていました。書き終わってから気がついたのですが、ヒットした曲って、本当によく時代に合っているんです。“歌は世につれ世は歌につれ”と言いますが、まさにその通りだなと思いました」
第1話「めぐる潮の音」(テーマ曲は氷室京介の『FLOWERS for ALGERNON』)は、7日間しかなかった昭和64年(平成元年)に卒業した優花の物語。優花が作中でよく聴くアルバムが『FLOWERS for ALGERNON』で、東京の美大を目指す同級生の早瀬は小説『アルジャーノンに花束を』を読んでいる。
三世代同居で、男尊女卑の家風に従っていた優花は、早瀬との交流をきっかけに、祖父母が望む地元ではなく、東京の大学を志望校に選ぶことになる。“東京”への思いは、優花以外の物語でも通底して描かれている。
「私も18歳のとき、東京の大学に行きたい気持ちがあり、優花ほど反対されずに上京できましたが、世代的には、女の子は短大か、四大に進学するとしても地元が主流でした。おそらく今も地方ではそういう傾向はあるのではないでしょうか」
平成12年に卒業した大輔(第5話「永遠にする方法」。
テーマ曲はGLAYの『HOWEVER』)は、教師とこんな会話を交わす。
〈東京に住んでいる奴はいいな。地元に残るか離れるか、迷わなくていい。入試だって家から行ける。通勤、通学もそうだ〉〈ここだって名古屋なら家から通えるよ〉〈でも、俺は東京に行きたい〉。
「東京の人からするとなんでそんなに?と思うかもしれませんが、なにか焼けつくような衝動なんですよね。ここではないどこかへ行きたい。近所の大都市ではなくて、日本の首都に行きたい。そこになにがあるかは行かなきゃわからない……。そんなひりひりした18歳もいれば、〈この町が好きだから、きっと死ぬまでここにいる〉という18歳もいる。地方で暮らす18歳は卒業後に、まずどの街へ行くかで、大きくその後の生活や人生が変わるんです」
〈この町が好き〉な18歳は、第4話「スカーレットの夏」(テーマ曲はスピッツの『スカーレット』)に登場する鷲尾だ。
鷲尾は、学校で一番美しい同級生の詩乃に恋をしているが口に出せない。
父親がいない詩乃は愛情がない母と暮らす家を出て東京で生まれ変わるための資金を、放課後の援助交際や、母親のスナックでの秘密の接客で貯めている。
やがて二人はお互いを特別な存在だと感じ始めるが――。
「詩乃はすごく頭がいい女の子ですが、周囲の大人の誰にも相談することができなかった。とにかく自分の過去を誰も知らないところへ行きたくて、一人で全部決めて、手っ取り早くお金を稼げる方法でなんとかしようとする。賢いけれど、それゆえに一人で思いつめて暴走してしまうんです。鷲尾は、詩乃が飛び抜けて賢くて綺麗なので、おっかなびっくりで手が出せない。高校生の不器用さというか、互いにまだ世間的な知恵がない状態なので、育った環境が違う二人はうまくいきません。でも大人になって振り返ったとき、それゆえに二人の関係は、永遠に色褪せない初恋になるんです」
今作ではいくつかの恋愛が描かれるが、あえて恋愛を書こうと意識したわけではなかったという。
「働かなくてもいい18歳の高校生は、極論ですが、勉強と恋と放課後の活動が主な仕事。もちろんそれ以外にもいろいろあると思うんですけれど、振り返ると、その3つが印象深いのではないでしょうか。私自身は当時、眠狂四郎に恋していたので、生身の男の子より本があればそれでよかったのですが(笑)」

18歳で選択をした後も人生にチャンスはある
作中には地方都市ならではのリアリティも、随所に盛り込まれている。
三世代にわたる人間関係の濃密さや、車がなければ生活が成り立たない感覚などがそれだ。
「地方都市だとおじいちゃん、おばあちゃんはとても大きな存在。関係が近い分、18歳は半分大人として頼りにされてしまう反面、都合のいいところでは、子ども扱いで遠ざけられたりもする。そのいらだちやモヤモヤした感じは自分の中にもありました。それはすなわち、高校3年生という身分の不安定さなんですけれど、そのあたりはとても意識して書きました。車に乗らないと、買い物も、病院に通うのも大変なので、車に対する近さ、というのも地方ならではの感覚ですよね」
卒業後、早瀬や鷲尾は地元に残り、優花や詩乃や大輔は上京する。
人生最初の大きな選択をした彼らのその先の人生を、令和元年が舞台の最終話で知ることができる。
「18歳で進路を決めても、また行き先を変えることもある。社会人になって5〜6年経つと、転職したり、結婚したり、地方の実家に戻ったり、多くの人が人生の岐路に立つと思うんです。私も28歳で会社をやめてフリーランスになりました。人生にはいろいろなチャンスがありますが、30歳になる前を目安に、人生を切り替える人は多いのではないでしょうか。18歳の頃の選択と違うのは、親がかりではなく、自分でお金を貯めて、進路を決めて舵を切っていけること。18歳で選択をした後にも人生にチャンスはあるし、そのときにはもっと選択肢が広がっているかもしれない。そんな可能性を物語に託しました」
優花と早瀬の両片思い、広い世界へ飛び出した詩乃、少年時代を地元に置いて、安い混載便で東京へ向かった大輔――。
彼らの行く末を確かめたあとに、ぜひカバーをめくってみてほしい。
そこには素敵なプレゼントが隠れている。

取材・文=波多野公美 写真=下林彩子

『犬がいた季節』
伊吹有喜 双葉社 1600円(税別)
1988年から12年間、三重県にある進学校・八稜高校には、自由に校内を歩き回る犬「コーシロー」が暮らしていた。最初に卒業していった優しい少女を思い続けるコーシローの一生と、大人でもなく、子どもでもない18歳の生徒たちの青春の一幕を、時代を彩った音楽を背景に連作で描く、傑作青春小説。


「犬がいた季節」 感想・レビュー
「読書メーター」より 抜粋

・第5話で主人公の優花が言った「絵や写真って一瞬を永遠にする方法だと思う」という言葉が沁みた。人のコウシロウとユウカに出会い、高校で飼われて大勢の子どもたち(高校生)と共に過ごした犬のコーシロー。昭和の終わりから令和の初めまでの約30年間、世相の変遷と青春群像が描かれていく。最終話で、この作品のタイトルとつながり、最後の一文が深く温かい余韻を残して物語は閉じる。

・昭和63年から始まるコーシローとの物語はその時代時代を感じられて懐かしい。未来への扉が開く高校3年生。淡く青い恋や友情、人と人とをコーシローが繋ぐ。胸がキュンとする場面もあればずっしりと沈んでしまう場面もあったりとこの緩急の付け方と構成がうまい。ラストも爽やかでこれぞ青春!

・おすすめです! 高校に迷い込んだ子犬は、コーシローと名付けられ、高校で飼われることになる。連作短編で、コーシロー目線の話が挟まれつつ、18歳の高校生たちの恋や決意が描かれる。18歳ってなんでこんなに眩しいんだろう。12年間高校で過ごしたコーシローは、多くの生徒の入学と卒業を見てきたけど、ずっと会いたいと思い続けてきた人がいる。甘い香りのするユウカ。ユウカの匂いに気づいて一目散にユウカに飛び込んでいくシーン、可愛かったー!そして、ラストにはやられました。胸キュン!

・品川図書館本。余韻を繰り返し味わうことができるから、伊吹氏の作品がとても好きだ。多くを語り過ぎず、自分の心の中で、ゆっくり咀嚼する時間を残してくれる。ハチコウと呼ばれる三重の高校に迷い込んできた白い犬。飼い主は見つからず、高校で飼う事に。その犬コーシローの世話をする生徒達のそれぞれの思い、迷いをコーシローは、ずっと見ている。感じている。犬の寿命は、人のように長くはない。時代が移り行く中、毎年の生徒の卒業による別れだけでなく、自分自身の旅立ちの時もくる。人も犬も命の重さを感じる。

・三重県の進学校で犬の「コーシロー」と過ごす生徒達の連作短篇集。犬と一緒の学校生活なんて楽しそうでも本作は家庭に事情を抱え、自分の進路、将来に苦悩する高校3年生達で、恋もままならず苦く切ない。そんな彼等の癒しとなり11年間見守り励まし送り出してしてきたコーシローがとても愛しい。未熟な18歳に時にもどかしさを感じ、時に涙が浮かび、時を経た最終章では笑顔にしてくれた。実際の出来事も折り込まれていて、悲しい記憶や懐かしい記憶に込み上げてくるものがある。大好きな伊吹さん♡今作も凄く良かった。

・私の高校生の頃とは状況も時代も何もかも違うのに遥か昔の自分の青春を思い出し、悲しくはないのに涙がこぼれた。最終章の犬がいた季節はラストも含め素敵すぎてしばらく余韻に浸りました。今年のマイベスト本に決定!

 

・とても爽やかな読後感満載! 縁あって八稜高校にやって来た犬コーシロー。年代を越え生徒達を見つめて来た。名付けの元となった光司郎、パン屋の娘優花の淡い恋心…堀田五月、相羽の鈴木サーキットで過ごした濃い3日間。夢を追いかける為手段を選ばず進む詩乃。幼い頃の初恋の人優花と教師と生徒として巡り逢えた中原大輔。どの時代もコーシローとのふれあいが温かく、せつなく胸に染みるよう…みんなの幸せを予感するようにコーシローは静に逝った…

・コーシローと呼ばれた犬が高校生たちと紡ぐ切ない短編集。高校生の年代の生活は意外に過酷。部活に受験に恋愛、そして家族。初代コーシローの会の優花と光司郎から始まるそれぞれの季節。鷲尾と誌乃の章がが切なすぎた。子どもを応援しない親が哀しい。違う自分になりたい誌乃と今の友人と家族を愛せる鷲尾。二人触れ合った日の熱にやるせなく涙を堪えた。「言葉が話せるなら伝えてあげたい」コーシローだけに伝わるそれぞれの秘めた想い。そして最終話、胸が優しい感情で満たされる。光司郎の絵は希望だ。思い出と共に彼らの物語は希望へと続く。


・高校時代の思い出もすっかりおぼろげになってしまってるけど、この本を読んで胸がきゅんとなった。良い時代だったなぁ…。コーシローみたいな犬はいなかったけど、たった3年間、期間限定の、今思えばまさに表紙のように桜が咲き乱れて静かに花びらが舞うような、良い季節だったような気がする。まあ遠い昔にはなってしまったけど、まだまだこれからもう一花、ふた花咲かせられるように頑張ろう。


・昭和の終わりに、三重県の高校に迷い込んだ白い犬。『コーシロー』と名付けられたその犬は、生徒たちの奮闘によって、校内で暮らすことになり、それから約12年間、沢山の生徒たちと共に過ごした。迷いや悩みを乗り越え、それぞれの道に巣立っていく彼らを見送ってきたコーシロー。卒業生たちが、創立100周年記念式典で集う最終話では、ウルッとしてしまった。各時代の出来事や流行の絡ませ方や、人の繋がり方が絶妙。犬を介して描かれる、生徒たちの青春時代は、切なくもあり、ほろ苦くもあった。ラストの二人に、コーシロもホッとしただろう。

・犬は、一緒に過ごす人たちの幸せを一生願っている、そう感じた。人間も周りの人の幸せを願っているはずなのに、気持ちのすれ違いや環境の変化やタイミングのずれなどによって、存在を重荷に感じたり、憎みあったり疎遠になったりする。まっすぐにひたすらに相手の幸せを願うことは、とても難しい。サクラの花が咲く頃にもう一度読みたい。

・本当にいい話だった。読みながら頬伝う涙も散る桜花のように清々しい。この物語の生徒たちと同じ時代を生き、その場所を知る者にとっては、個人的な郷愁が倍々増しで付加価値となる。でもそれを差し引いても、高校にやってきた犬のコーシローがそこにいた時間が、世代を超えて関わった彼らを繋ぎ、共通の忘れ得ぬ思い出・戻れる場所・心の拠り所となって、それぞれの生きる道を照らしていたことに、胸があたたかで優しい思いで満たされる。コーシローが人の心の機微を嗅ぎ取り、伝えようとするさまが愛らしい。私の大切な珠玉の1冊がまた増えた…。

・自分自身の冴えない学生生活さえ、「あの頃はよかった」と思い起こさせてくれる作品でした。第1話と第2話が自分の学生時代とリンクして、登場する当時の流行った曲がめちゃくちゃ懐かしい(浜田麻里とかプリプリとか!)第1話の最後の一文、早瀬の想いがぎゅっと詰まっていて、一気にグッときました(ノД`)最終話で、卒業生が一堂に会するシーンが今のご時世からすると、とても贅沢でうらやましくなりますね。彼らが犬のコーシローという存在で繋がっていること、素敵だなぁと素直に感じられて、いい余韻が残りました。


・捨て犬コーシローが高校で飼われることになり、ともに過ごした学生たちとの日々。昭和から平成へと時代は変わり、悩み多き学生たちのそばでいつもコーシローが寄り添ってくれた。登場人物たちの青春と自分の過去を重ね合わせながら、甘く少し苦い思いで読み進めた。先に旅立ってしまうから辛いなと覚悟していたけれど、なんて優しいお別れのシーン。きっと幸せだったよね。


・昭和天皇ご崩御の日、大学生の私は友達とスキー旅行中だった。青春真っ只中のその日から、平成の終わる三十年間は、私にとっては自分の力で世界を切り開くことに夢中だった大切な日々。捨てられた白い犬コーシローが、放り込まれた高校で大切にされ、伸び伸び生きた12年間は、あの頃の自分を思い出させてくれるもので溢れていた。歴代のコーシロー会の会員達も、恋、友情、進路、それぞれに悩みを抱えながら、前に進むことを恐れず歩み出す姿が清々しかった。恋の匂いを嗅ぎ取るコーシロー、最後に大好きなユウカさんの色を見られて幸せだったね。

・1988年春、捨てられた仔犬が四日市の高校に迷い混む。当時の高校3年で美術部の早瀨光司郎や塩見優花たちが学校で犬を飼うことは前例がないという校長を説得し「命を預かるとはどういうことか身をもって考えるように」と教育的指針のもと世話をする。仔犬はコーシローと名付けられ「コーシローの会」が発足。以後、12年間受け告げられそれぞれの時代の生徒の青春とコーシローの成長を綴る。共通一次、F1のセナ、阪神大震災、ノストラダムスの大予言など時代背景が懐かしい。卒業時に会の代表が日誌に書く最後の一言に胸にジーンとくる。


・初代の会長の光司郎が書いた表紙カバーの下の絵、2020年の創立100年に再会時、画家になった光司郎かを贈った絵に描かれた校舎の三階から見下ろす少女とコーシロー、グランドのバックネット裏から見上げる学生服の少年。光司郎の優花への儚い恋もホロッとした。コーシロー目線での話が挟まれており、改めて犬も親身になって世話をしている飼い主はわかっているんだなと思った。とても、いい本が読めた。

・吹有喜さん、4冊目にしてユキさんと読み、女性だと初めて知りました。てっきりユウキで男性かと…(^_^;) 三重県の進学校で飼われていた犬コーシローと、入学し卒業していく高校生たち…。時代的には自分よりひと昔若い時代設定だから、完全にシンクロは出来なかったけど、懐かしく甘酸っぱい高校生時代に浸らせてくれた。ラストもハッピーエンドで良かった!こんな学校犬⁈がいたらいいなぁ〜。コーシローの5年日誌の表紙の裏の絵にキュンとした。 でもやっぱり「雲を紡ぐ」「彼方の友へ」は越えられなかった。


・伊吹さん、初読み。紹介で最高傑作とあり、期待していましたが期待以上に素晴らしかったです。単に青春を描いたけじゃなく家族との描写も多いです。 歳を重ねて自信がついた光司郎。終わり方にホッとしました。日誌の表紙に描かれた絵にも感動したし、あー、すごく良かった。あっという間に読み終えました。コーシロー、いつもそこにいてくれてありがとう。

・あの頃の想い出の中にいつもいた白い犬。高校で育てられてるコーシローと平成の時代。ユウカの花が咲くと子どもたちは入れ替わり、3年経つとその場所から去る。誰にも言えない想いをコーシローは知ってる。幼い想いだけど、その深い想い。どの時代の子どもたちも抱えてるもの。見守るコーシローが愛しい。光司郎と優花は鉄板に甘酸っぱいけど、セナの友情がすごく楽しかった。鈴鹿サーキット、興奮するよね!そしてラスト、今までの登場人物たちが勢揃いして、私まで招待されたかのように懐かしむ。終始ゆるゆる。すごくよかった!

・高校へ迷い込んだ捨て犬のコーシローは美術部有志の熱心な説得のおかげで学校で飼われる事になる。入学し、学び、巣立っていく子供達…コーシローと共に過ごした大切な時間を6つの物語が紡ぐ。昭和、平成、令和…それぞれの時代で起きた事件を交えながら展開するストーリー。コーシロー目線で見た少年少女の姿…友情、恋愛、夢…ストレートに言い出せない…伝えられないもどかしさ…温かく、甘酸っぱい思いが胸いっぱいに広がる。昭和天皇の崩御、ノストラダムスの大予言、阪神淡路大震災…自分もあの時代を生き、同じ事を感じたと懐かしく思い出す。

・ユウカを待ち続けるコーシロー。ワンコって本当、そうなんだよね…人間より短い時間軸を生きるから…時間の経過は人より長く感じるらしい…まさに一日千秋の思い…文句を言うでもなくじっと黙って帰りを待つ。再会を…また会える事を信じて疑わない…なんて愛おしい生き物なんだろう。悩み、苦しみ、迷って、傷ついて…それでも立ち上がって歩いてきた。帰ってきた懐かしい学び舎にはコーシローとの思い出がいっぱい詰まっている。彼の描いた絵にはその思いが込められているんだろう…登場人物それぞれの現在…待ち続けた二人に幸せが訪れますように。


・かつて高校生だった私をコーシローが思い出させてくれた。心に残る物語。自分の力だけではどうにもならなくて模試のように答えがなくて、でもチャンスは沢山あってそれに必死で向かっていて…コーシローと過ごした生徒達に切ない程共感して涙が溢れ落ちた。コーシロー目線での文章がもう可愛くて可愛くて「ユウカさん」って尻尾を振るシーンなんてもぅ顔がほころびます。印象的なシーンが多く中でもうみてらす14での暗幕シーンが秘密基地みたいで素敵過ぎる!他にも十四川沿いの桜並木、鈴鹿のレース、フレアスタックなど動画検索でも見て凄さ実感。

・昭和の終り、進学校「ハチコウ」に迷い混んだ白い犬。コーシローと名付けれた彼は美術部員や生徒会の熱心な訴えで、ハチコウで暮らすことになる。悩みや希望で揺れ動く高校生活。コーシローと共にそんな青春の三年間を送ったハチコウ生たちの日々が時代を追って描かれる。章ごとに描かれるその時代の世相は懐かしく、いきいきとした高校生たちの姿が心に響く。震災を扱った『明日の行方』は涙が溢れ、『永遠にする方法』はグッと心掴まれた。間に挟まれたコーシローの視点が物語を温かく見守る。伊吹さんらしい優しい気持ちになれるおすすめの一冊。

・四日市のある高校に迷い込んだ捨て犬コーシローと、共に過ごし卒業していった生徒たちの12年程を描いた作品。もう、すごく良かった!懐かしかったりほろ苦かったり、その時々の時事を織り込みながら、子どもでもない、大人でもない時代の生徒たちの揺れ動く様が切なく心に響きました。突飛な事件はないけれど、誰もが通り過ぎた青春時代を描き、だからこそその甘酸っぱさを思い出し胸が締めつけられるのでしょう。涙、涙でした。この本、なんと献本プレゼントで当選しました!素晴らしい作品と出逢わせていただけた事に感謝です。まさにアニマルセラピーの双方での効果が伝わる物語でした。

 

・校門の横、教室の後ろ、美術室、バックネット裏、図書館の裏、十四川の桜並木の下、コーシローは何処にでもいるね。卒業生の皆や俺の心にもいつまでもいるよ。コーシローのことを想うと涙が…(ノ_<)


・涙が止まりません。私は隣県出身ですが同時代を過ごした世代で作中に繰り広げられる時事が懐かしく何度も頷きながら読みました。犬のコーシロー、彼が見つめた甘くて苦い青春を過ごした生徒たち。高校生の学生生活を綴る物語のように見えて、実は極上のラブストーリーが仕込まれていて胸がキュンキュンします。「however」の絶妙な誤訳「永遠にする方法」が素敵なラストの展開に効いてきます。爽やかな読後感とは正にこの作品を言うのではと思いました。この高校に通う人間にコーシローが生まれ変わり、桜の花を見ることが出来ますように。

・昭和平成令和と時代の移り変わりとともに、犬と高校生たちの交流を描いた心温まる物語。自分自身も昭和生まれで、令和の時代に生きている今、各時代の出来事や流行っていたものにも深く懐かしさを覚え、また自身の学生時代のことも思い出し、ああ、青春時代っていいなぁ、とか、あんなことあったよなぁ、とか、いろいろな思いが溢れてきて…またまた伊吹さんに泣かされました。

 

・伊吹作品はインパクトは少なめだけれどその独特の優しくて静かな空気と濃くなりすぎないのがとても心地良い。昭和63年から始まる物語。三重県の進学校で保護された犬のコーシロー。コーシローが亡くなるまでの11年間の生徒達の物語が時代背景と共に連作短編集のように繋がってゆく。F1の3日間は共に興奮し、阪神大震災はあまりにも生々しく思い出され一緒に涙した。そしてユウカと人間コーシローの物語。時々現れるキーワードに予感と期待を持ちながらラストまでじんわりしっとり楽しめました。伊吹さん、やっぱり好きだなぁ♡★

 

・何がやれるのか分からないから、行くんだよ。HOWEVER しかしながら。絵や写真は一瞬を永遠にする方法。犬は次の世も犬に生まれ変わるのか、それとも人に生まれ変わるのか、今度生まれかわった時も、あなたに出会えれば・・・捨て犬から進学校の飼い犬になったコーシローを通して昭和の終わりからの12年間をクロニクルにした青春のお話。斉藤和義のずっと好きだった♪が頭の中でリピートしています。幅広い世代に手にとって欲しい1冊。

 

・思わず甘い溜息をついてしまうようなラストに、素敵な未来を想像せずにはいられない。八稜高校で飼われた白い犬、コーシローが見守った出会いと別れと再会と…。小さな繋がりの連鎖が偶然とも奇跡ともいえる結末を紡ぎ出し、時代が流れても青春を過ごした生徒達の想いの残像は消えることなくそこにあり続ける事を知る。昭和から平成、平成から令和、彼らの悩みはどの時代も変わらない。恋に友情に夢と現実、胸の奥がジンと痺れるような切なさの後に希望が湧き出る微かな光がそこに差す、その瞬間がとてもよく見える小説だった。おそろしく愛おしい。

 

・とても、良かったです。三重の進学高校に保護された雑種犬のコーシローの12年間。彼を世話する高校生たちの仄かな恋心やら友情やら家族の問題やら。コーシローが彼らを気遣っている姿も実に良い。ラストも素敵だったけれど、みんなに愛されて犬生を全うしたコーシローが一番良かった!本当に素敵な物語でした。


・ある高校に子犬が迷い込む。高校生たちが校長に直談判し「コーシロー」と名をつけ学校犬として飼うことに。 連作短編。高三たちのそれぞれの進路決定を描きながら、彼・彼女たちの、迷いや悩みや決断を描く。 初編の高三。昭和最後の年末というのが私と全く一緒。あの頃の空気感が蘇り、一気に読了。 年号が変わり、大きな地震が二回もあって、さらに年号が変わった。 阪神淡路大震災の年の「明日の行方」が泣けて泣けて。 見守ってくれる存在としての犬「コーシロー」の物語。

 

・桜の匂いに満ちた18歳の出会いと別れ。人生で多くの人が通る一瞬を切り取り、コラージュし、それらを永遠にする。 予想はつくが、彩り方、光の当て方、影のつけ方、風景の流れなどの描写、家族の不和や死の通奏低音などが、景色や日常にさり気なく溶け込んで書かれている。押しつけがましくなく、大事件もなく、日常生活の延長上の物語に仕上げてあり、穏やかな感動に包まれて読み終えた。伊吹さん、すばらしい作品をありがとう。(私の声が届きますように) コーシロー、私が電車を乗り降りする姿も見ていたんだね。

・素敵な物語だった。 2回、3回と読み直すとその素晴らしい世界観に深みが増すと思う。 ※これからすぐに読み返します。 連作短編形式で、どの物語も良いのですが、その中心には必ず犬のコーシローがいる。 自分の学生時代を思い返せる良作でした。コーシローが語る描写は泣かせますね。

・高校生活の3年間、子供から大人になって行く貴重な時。きっと誰もが何かしら覚えのあるような高校生の日常。でも過ぎてしまった今となってはそんな日常も眩しく懐かしい。そしてそこで共に成長していくコーシロー。コーシローのお世話をするコーシロー会の生徒たちは、きっとお世話を通じての心の成長と青春もあったのでしょうね。私もコーシローと共に青春を送りたかった!読んでいる間は遥か昔の高校生の自分に戻ったような気分でした。

・プルーフ読了。伊吹さんらしい、切なさや瑞々しさを備えたすてきな青春小説。物語を通して学生たちのそばに寄り添う学校犬・コーシローの存在がいい。コーシローから見れば3年間を共に過ごした遠ざかっていく学生たち、その存在の儚さ。逆に学生たちが高校生時代を思い出すとき、常にそこに在って記憶に残り続けるであろうコーシローの姿。儚さと永遠性、相反するどちらもが青春そのものを象徴していると思うのだ。早瀬が「本当の忘れ物」を取り戻すラストも良くて、読んでるこちらまで幸せな気分になる。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 3575

Trending Articles