虐殺か?東京・三鷹で高齢の地域猫が不審死…
「犯人逮捕」を求める署名運動に芸能人も反応
2020年12月8日(火) まいどなニュース
東京都の調布・三鷹地区で20年近く暮らしていた高齢の地域猫が不審な死を遂げてから1カ月が過ぎました。
保護ボランティアや地元住民らによると、遺体の状況から何者かに暴行を受けるなどして虐殺された可能性があるといい、いまだ真相は分からず。
地元住民らは不安な日々を過ごしているといいます。
亡くなった地域猫は長毛でサビ猫の雌。
長年、「タヌキ」ちゃんなどと呼ばれ親しまれていたそうです。
三鷹市内を流れる川沿いの土手で亡くなっていた高齢の地域猫「タヌキ」ちゃん。亡くなった2日前は元気にご飯を食べていた(提供写真)
タヌキちゃんのことをよく知る、保護ボランティア「調布地域猫の会」の代表は「亡くなる2日前にタヌちゃんと会ったばかり。口の中が痛いのか、エサやりさんからもらうドライフードを食べにくそうにしていました。もう高齢で今年の冬はきついだろうと、寒い冬になる前に、タヌちゃんを私の自宅で余生を過ごさせてあげたいと思い、いつ保護しようかと考えていた矢先のことでした。まさかこんなことになるとは。今となっては、そのときに保護していれば…」などと悔やんでいます。
■地域で親しまれていた「タヌキ」ちゃん
11月4日早朝、ボランティアが川の土手で遺体を発見 「調布地域猫の会」によると、タヌキちゃんが遺体で見つかったのは11月4日の早朝。
ボランティアの女性が午前6時ごろ、いつもの場所にえさをやりに行ったところ、タヌキちゃんの姿が見えなかったといいます。
「おかしい」と思った女性は、周りを見回したら、下方の川の土手で血を流して倒れているタヌキちゃんを発見。駆け寄ったところ、顔面の一部がどうなっているのか分からないほどひどい状態になり、お尻から腸も出て、苦しんだように大きな口を開け、変わり果てた姿に。
ショックをうけ、慌てた女性はその場で助けを呼んだそうです。
さらに騒ぎに気付いた通り掛かりの男性が交番に届け、警察も現場に駆け付けたといいます。
遺体があった場所は、タヌキちゃんがエサをもらっていた遊歩道から数メートルも下方の土手。
遊歩道は道路から程遠く、長年タヌキちゃんを見てきたボランティアは、これまで一度も道路まで出るのを見たことはなかったそうです。
わざわざ土手まで遺体を運んでくるなどしない限り、交通事故は考えられず、遺体の状況も含め、虐殺されたとみられています。
タヌキちゃんの遺体が発見された土手(提供写真)
■土手は普段「タヌキ」ちゃんが行かない場所…遺体周辺には血や毛が飛び散る
同会の代表は「川の土手には普段タヌちゃんが行かない場所でした。タヌちゃんの遺体周辺には血や毛が飛び散っていたと聞いています。よほど苦しみもがいたのでしょう。穏やかで物静かで人を癒し続けてきてくれた子がどうしてこんな目に…一生懸命生きてきただけなのに…どんなに痛かったことか」と言葉を詰まらせます。
■亡くなる2日前に会っていたボランティア 「タヌキ」ちゃんを保護する予定だった
また、亡くなる2日前に「調布地域猫の会」のメンバーAさんと一緒に「タヌキ」ちゃんと会ったばかりだったという代表。
「16年前にこの川沿いでAさんが保護して我が家の家族となった猫ボスくんが9月に他界。ちょうど11月2日はボスくんの四十九日で、近くのペット霊園に供養に足を運んでいたんです。その帰り際、川沿いに暮らしているタヌちゃんともう1匹の茶トラ白のカツヨリくんの様子を見に立ち寄りました。高齢のタヌちゃんと仲の良かったカツヨリくんを一緒に保護するタイミングを考えていたのですが…その日はえさやりのメンバーが来て、おいしそうに食べていたタヌちゃんたちを見て少し安心してしまって。そのまま帰りました。その2日後に亡くなっているなんて」と涙ぐみながら振り返ります。
そして、タヌキちゃんが亡くなった2日後の6日、Aさんが独りぼっちになっていたカツヨリくんを急きょ保護したそうです。
「タヌキ」ちゃんと一緒に仲良く暮らしていた地域猫の「カツヨリ」くん(右)
◇ ◇
■17年ほど前、警戒心が強かったタヌキちゃん…今はおとなしく懐いていた
「調布地域猫の会」は、調布市を拠点に市内外の地域猫を巡る問題を解決するためのお手伝いや猫の保護・里親探しなどを行おうと2002年に結成。その後、代表が市外に転居したため、拠点地は変わったものの、調布市含め周辺の自治体を中心に活動を続けていました。
今回の事件を知り、タヌキちゃんを殺した犯人を野放しにしておくわけにはいかない、早く犯人を捕まえてほしいとの思いから、会のブログやTwitterで情報を発信しています。
タヌキちゃんとは、(「調布地域猫の会」のメンバー)Aさんが17年ほど前に三鷹市の川沿いで地域猫のTNR活動を個人で始めたばかりのころに出会いました。
当時のタヌキちゃんは人に対して警戒心が強く、近付いて触ることはできなかったといいます。
避妊手術をする際は地域のボランティアと協力して捕獲器で保護したそうです。
その後、避妊手術済の印である耳ピアスをつけていたので、散歩でよく通り掛かる人からは「ピアス2世」と呼ばれたり、他にも「ポンタ」と声を掛けたりする人も出てくるなど、地域住民からかわいがられるようになりました。
保護ボランティアをしているAさんたちに対しても少しずつ警戒心が解けて少しずつ近くに寄ってくるようになったといいます。
元気だった2008年ころの「タヌキ」ちゃん
今年に入り、既に20歳は超えていのではないかと言われていた「タヌキ」ちゃん。
最近ではすっかり以前のような警戒心もなくなり、おとなしい猫でボランティアの人たちに懐いていとか。
エサやりのメンバーが来ると、すぐに「トトトト」と走ってきて喜んで食べていたそうです。
亡くなった今、タヌキちゃんが倒れていた土手やえさを食べていた場所などに手を合わせたりお花を供えたりする人が後を絶たないといいます。
「タヌキ」ちゃんが亡くなった現場付近では、今も花を供える人が絶えないという(提供写真)
■動物愛護団体も「犯人逮捕」を求める署名運動、二階堂ふみさんらもインスタで呼び掛ける
「今回のタヌちゃんの不審な死は遺体の状況などから虐殺されたとみられています。今、警察やTwitterでタヌキちゃんの死を知ったボランティアの方々に夜間などにパトロールしていただいていますが、これ以上、猫だけでなく人にも、他の動物にも被害が出ないよう願っています」と「調布地域猫の会」の代表。
さらに、「動物を虐待死させること、遺棄することは犯罪です。調布地域猫の会の代表は、無抵抗な弱い動物を虐めて楽しむような人がいる限り、その地域の安全・安心は保障されない。犯人を早く捕まえてほしいという願いから、Twitter等でも情報を求めています。有志の方々が自主的にパトロールを始めたり、不審者情報を求めるチラシを配ったりするなど、支援の動きも出てきているとのこと。事件前夜から当日の朝に限らず、不審者等に関する情報を何かお持ちの方は、三鷹警察署までお寄せください」と訴えます。
タヌキちゃんの不審死を受けて「調布地域猫の会」は、管轄の三鷹警察署に捜査を訴える要望書を提出。このほか、公益財団法人動物環境・福祉協会「Eva」も同様の要望書を提出したほか、ホームページで警察署への情報提供を呼び掛けています。
さらに、動物愛護団体「多摩ねこの家」の代表者は、オンライン署名収集サイト「Change.org」で同署長に犯人逮捕を求めるための署名を募っています(11月29日、三鷹警察署に要望書と署名を既に提出)。
タヌキちゃんの署名サイトについては、女優の二階堂ふみさんや小松みゆきさんなど芸能人もインスタグラムで紹介して犯人逮捕を求める署名を呼び掛けました。
◇ ◇
【TNRとは】
Trap・Neuter・Return(トラップ・ニューター・リターン)を略した言葉。
捕獲器などで野良猫を捕獲(Trap)し、不妊・去勢手術(Neuter)を 行い、元の場所に戻す(Return)こと。
◇ ◇
※注:調布地域猫の会は、東京都調布市の登録ボランティアではありません
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)