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ペット販売業の数値規制は犬や猫の飼育環境を改善するためのもの

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数値規制は犬や猫の飼育環境を改善するためのもの
 改善努力を伴わない業者の主張は筋違い

2020年11月11日(水) sippo(朝日新聞社)

繁殖業者やペットショップが犬猫を飼育・管理する際の数値規制案を、環境省が10月7日に取りまとめた。
これまで、劣悪な環境で飼育を続ける一部の悪質業者を、明確な基準がないために行政が適切に監視、指導できていなかった状況にメスを入れ、業者のもとにいる犬猫の飼育環境を改善することが目的だ。来年6月に施行される。


7歳まで繁殖に使われていたメスのチワワ。飼い主との出会いを待っている

◆問題は犬の繁殖業者
飼育ケージの広さや構造を具体的に規定し、メスの交配年齢や出産回数に上限を設けるなど、多岐にわたる規制が実現する。
なかでも悪質業者の改善、淘汰に効果を発揮しそうなのが、職員(飼育者)1人あたりの上限飼育数だ。
業者は一般的に、なるべく少ない人数で、なるべく多くの犬猫を飼育しようとする。
その割合が適正値を超えれば、どんなに施設が立派でも、犬猫の飼育環境は劣悪なものとなる。
これまで取材した問題業者の多くは、1人で30~50匹、なかには100匹以上もの面倒を見ていた。
規制案では、繁殖業者は飼育者1人あたり繁殖用の犬は15匹、猫は25匹、ペットショップは販売用の犬は20匹、猫は30匹が上限となる。
大手ペットショップでは既に対応できているところが多い。
猫の繁殖業者も、環境省の線引きが25匹と甘めで、メスの出産回数も制限されないため、ハードルは高くないとみられている。
問題は犬の繁殖業者だ。
「被毛の手入れや運動させることなどを考えれば、1人で面倒を見られるのは5、6匹」という、単犬種にこだわる「優良」な業者も少なからずいる。
しかし、はやりにあわせて多犬種を扱う業者では、これから家族やアルバイトを含めて、飼育者集めを迫られるところが多そうだ。

◆「繁殖犬が行きどころ失う」と主張
このためペット関連の業界団体や一部業者らは、廃業や飼育数の削減に追い込まれる業者も出るとして「10万匹以上の繁殖犬が行きどころを失う」「そのぶん殺処分が増える」と規制案に反対している。
だが、数値規制は犬猫の飼育環境を改善するためのものだ。
業者には動物愛護法で「終生飼養の確保」を図ることも義務づけられている。
改善努力を伴わないこうした主張は筋違いだろう。
犬の価格は近年高止まりしている。
オークション(競り市)での平均落札価格は10年前の3倍程度。
コロナ禍でペット需要が高まった今年は例年のさらに2倍、20万円台に乗った。
そもそも「定価のない商品」であり、人件費などのコストが増えても価格転嫁は難しくないのだ。
もちろん、全国的な人手不足で飼育者集めがスムーズに進まない可能性は考慮すべきだ。
環境省は、上限飼育数の段階的な施行は検討する必要があるだろう。

◆引退犬・猫を救う策を示すべき
何より、繁殖から引退する犬猫はこれまでもいて、今に始まった問題ではない。
規制の趣旨を理解するペット業界の一部では、繁殖から引退する犬猫がペットとしての「セカンドライフ」に順調に移行できるような仕組み作りが、既に始まっている。
数値規制を盛り込んだ環境省令の施行までにはまだ時間はある。
規制への準備を進めるとともに、業界をあげてどのように悪質業者を淘汰するのか、引退犬・猫を救っていくのか、その策を示すべきだ。
それが利益をもたらしてくれる犬たち、猫たちに報いる道ではないだろうか。

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