「スイスは世界一動物に優しい国」
訪れて感じた動物がストレスなく暮らすための配慮
2020年10月6日(火) sippo(朝日新聞社)
スイスは世界一動物に優しい国
公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)代表理事の西平衣里です。
「犬や猫のためにできること」がテーマの連載。
私は昨年の夏に子供の都合でスイスに行かねばならず、であれば動物保護施設をぜひ視察したい、とオファーしました。
動物に向き合う姿勢が日本とは全く異なると感じたスイス、そこで感じたことを今回は記事にします。あれから、あっという間の1年。コロナ禍、早く海外に自由に行ける日を夢見つつ……。
いつでもどこでも犬と一緒
街の中心にあるルガーノ湖でのボート遊びも犬と一緒。一緒に飛び込んで楽しそうに泳いでいました
スイス在住の方に犬との暮らしをインタビューをしたことがあります。
「スイスはどこでも犬と一緒に行けるのよ」と語っておられ、本当に?と思いました。
実際行ってみると、それは大げさではなく事実そのもの。
カフェの足元には犬が優雅に寝そべり、高級ホテルのロビーは当たり前のように犬がゲストとして闊歩、世界遺産の観光地だって「ここはドッグラン併設?」と勘違いするほど、いつでもどこでも犬がいました。
元軍事施設を保護施設に
バカンスシーズンのためか、飼い主から預かっている犬たちも多くいました。とても衛生的でした
スイスの南側 ルガーノ湖を挟みスイスとイタリアの国境近くにあるSociera Protezione Animali Bellinzona (通称 SPAB)は、街の中心から車で30分程度。
豊かな緑に囲まれた施設はティチーノ州内に5カ所ある保護施設の中では一番大きな施設でした。
現在の代表のお父様が創設し66周年を迎えた民間の動物保護施設です。
もともとの軍事施設を動物用に改築し運営していました。
取り組んでいる業務は、保護された動物の管理、動物に対しての敬意推進、保護施設にいる動物の新たな環境探し、傷ついた動物の救急応対、施設訪問者の応対およびガイド。
年間1000件の動物に関する問題に、約30名の運営スタッフ(ボランティア)で取り組んでいるそうです。
小学生に課外授業も
壁に描いてある動物たちがティチーノ州に暮らす動物たちだそう
SPABでは、年間に500名の小学生の訪問があり、動物についての課外授業を行っています。
それは、まずティチーノ州にどのような動物が住んでいるか、を子供たちに説明するそう。
ルガーノという街の中心地は湖沿いにあり、水鳥がたくさん住んでいます。
豊かな山々に囲まれとても自然が多い環境。
たくさんの自然動物が住んでいます。
ペットの犬猫だけでなく日常的に動物が身近な環境なのでしょう。
日本の保護施設は犬猫(たまにウサギやフェレットなども保護していますが)が中心です。
しかしこちらの保護施設は野生の鳥や大型動物(馬や牛、アルパカなど)も多数いました。
犬猫だけではなく、同じスイスに暮らす動物の存在がごく身近にあると感じました。
「世界一自然と動物に優しい国」
施設長であるエマニュエルさんから日本の現状に関して質問をもらいました。
殺処分はいまだあること、動物福祉に関する認知が低いこと、などを正直に伝えると、さすがスイスだと思えるお話をしてくださいました。
「スイスでは、動物のメンタルを何より重視します。動物の身体の安全や健康だけを配慮するのではなく、サイコロジカル(心理的)なアプローチをなにより大事にしています。 本来集団で生きる動物であれば、その環境を整える。暑さ寒さをどう感じるのか動物の気持ちになって考える。高いところが苦手な動物であれば飼育環境に配慮し整える。 スイスは世界一自然と動物に優しい国だと言えるでしょう。それは法律にも反映されています」
自信をもって自国の自慢ができる、というのは本当にうらやましいと思いませんか?
スイスの中でも小さなティチーノ州。
人口は38万人(ちなみに東京は1380万人)、スイスの中で唯一アルプス以南に位置する温暖で小さな州です。
SPABの施設自体は元々軍事施設ですので動物のために作られたわけではありません。
かつ古い建物ですから、色々と工夫をしながら使っている印象です。
むしろ日本の動物愛護センターの方が立派だと思いました。
しかしながら、動物福祉、という点では日本では考えもおよばない配慮を感じました。
その動物が本来の性質でストレスなく暮らせるようにしています。
例えば、うさぎたち。
もともと土を掘る性質があります。
だから自由に土を掘って楽しんでいました。
集団生活をする動物は1頭飼育をしてはいけない、という法律があることも驚きでした。
いつか私も「日本は少し前までは動物にひどいことをしていたけれど、すごく日本は良くなった」と子供に伝えることを目標にアニマル・ドネーションを運営していきます。