犬や猫の虐待事件をなくすために
弁護士と獣医師がタッグを組む日も近い!?
2020年7月20日(月) sippo(朝日新聞)
弁護士と獣医師がタッグ!?
動物に関する専門家――と言えば、多くの人は「どうぶつのお医者さん」である獣医師をイメージするでしょう。
動物愛護管理法には、当初は獣医師に関する条文はなかったのですが、法改正のたびに獣医師の関係する規定が入っています。
昨年の法改正では、殺傷や虐待されたと思われる動物を発見した獣医師は、関係機関へ通報する義務が定められました。
◆世論の高まりを受けて
実は、この「獣医師通報制度」は、2012年改正のときにすでに導入されていました。
虐待事件が起きてから時間がたつ前に、動物の専門家である獣医師が虐待の証拠を保全できる制度であると、個人的には期待していました。
しかし、獣医師にあまり重い義務を課すことは妥当でないとして、努力義務にとどまるものとされ、そのため具体的な通報先や通報手順なども特に決められなかったことから、これまではほとんど活用されなかったのではないかと思われます。
それが、動物虐待事案を何とかすべきだという世論のさらなる高まりを受け、獣医師による通報制度を実際に活用されるものにするために、通報が義務化されたものといえます。
◆言葉を話せない動物ために
動物虐待をなくすために
一方、弁護士という職業は、動物愛護管理法にはまったく出てきません(憲法の中にも出てくる、けっこうレアな職種なのですが)。
ただ、動物(厳密には、法律で定められた「愛護動物」)の殺傷・虐待事案があれば、刑事事件として警察は捜査を始めますが、言葉を話せない動物は被害を伝えることができません。
また、密室で行われる場合が多いことなどから検挙が難しいといった事情で、警察は捜査に消極的なこともあり、スムーズに進まないこともあります。
そのような場合には、適切な告発手続をすることが、捜査機関の後押しにつながる場合もあります。
普段は、獣医師と弁護士が連携する場面はあまりないように思いますが、こと動物虐待で刑事告発をする場合は、両方の専門家が関わることになります。
ケガをした動物や動物の死骸があった場合、すべて人が故意にやったものとはいえません。
動物の殺傷・虐待事件を適切に進めるには、動物の専門家である獣医師の協力は必須です。
一方で、刑事手続や警察に詳しい獣医師はあまりいないでしょう。
◆動物虐待を防ぐために
近年、動物の不審な死因を多面的・科学的に解明する「法獣医学」の研究も進んでおり、法律の世界と獣医の世界が近づいているように感じます。
将来的には、各都道府県またはエリアごとに、動物虐待事案に対応するための獣医師と弁護士の連携体制を整備できればよいと考えています。
弁護士の確保、費用面の問題などの課題があり、一足飛びにできるものではありませんが、全国各地で徐々にそのような体制が整えば、動物虐待事件が起きたときに適切な対応を取ることが可能となります。
また、そのことが動物虐待の抑止にもなりうると思います。