<栃木・犬大量死>繁殖業者が遺棄か 人気犬種に偏り・・・
2014年11月8日(土) 毎日新聞
生きていた犬
◇「改正動物愛護法が影響か」
小型愛玩犬ばかり計71匹の死骸が栃木県内の2カ所で相次いで見つかった事件は、県警が廃棄物処理法違反の疑いで調べているが、容疑者の特定には至っていない。
ミニチュアダックスフントなど一部の人気犬種に偏っており、捜査関係者は繁殖業者が遺棄した可能性があるとみている。
目立った外傷はなく、薬物の投与を疑う業界関係者もいる。
県警によると、犬の死骸は10月31日と11月1日に宇都宮市の鬼怒川河川敷で44匹、同月5日には西に約20キロ離れた那珂川町の林道わきの崖下で27匹が発見された。
死因は明らかになっていない。
那珂川町の現場周辺では、一緒に捨てられたとみられる5匹が生きたまま保護された。
二つの場所は近くを同じ国道293号が通る。
発見された犬はミニチュアダックスフント、トイプードル、コーギーなど犬種が不明なものを除けば全て純血種だった。
歯石の付着状況から推定される年齢は5~10歳。
ほとんどが避妊・去勢手術を受けていなかった。
雌は乳房の大きさから、複数の出産経験があるとみられる。
健康管理は行き届いておらず、多くはやせ細り、爪も伸びていた。
人気犬種に偏り、遺棄された頭数が多いことから、捜査関係者は「飼い犬とは考えにくい。繁殖業者が捨てた可能性がある」と話す。
宇都宮市の現場では、飼い主の情報が入ったマイクロチップを埋め込んだ犬の死骸も見つかっており、県警は容疑者特定の鍵になるとみて捜査している。
多くの犬が遺棄された背景として、東京都内の元繁殖業者の男性(48)は「昨年9月施行の改正動物愛護法が影響しているのではないか」と指摘する。
法改正で自治体は、業者からの引き取り依頼を拒否できるようになった。
小型犬は出産を重ねると1回に産む頭数が少なくなる傾向があり、業者にとっては飼育経費がかかり負担になる。
この男性は「養いきれない犬を薬物で処分し、山などに捨てる悪質業者も多い」と業界の舞台裏を明かし、「今回も薬物を使った可能性がある」と指摘した。
動物愛護団体「日本動物福祉協会栃木支部」の川崎亜希子支部長は「業者の仕業だとすれば、ペットを単なる商売道具として見ているとしか思えない。身勝手な考えが、動物の一生を台無しにしている。もっと動物の命について考えて仕事をしてほしい」と憤っている。
【加藤佑輔、田中友梨】