ハリソン・フォードの犬への“愛”と“絆”に心震える!
『野性の呼び声』特別映像公開
2020年2月15日(土)
俳優のハリソン・フォードが、名犬と冒険を繰り広げる主人公を演じる映画『野性の呼び声』より、特別映像が公開された。
実生活でも愛犬家のハリソンが犬への深い愛を語る姿や、主人公と犬の強い絆を描く本編映像を収めている。
原作は、米国を代表する作家ジャック・ロンドンの同名タイトルの名作冒険小説で、映画化されるのは今作が8作目。
危険すぎる地上最後の秘境カナダ・ユーコン準州でたった独り、未開の地を求め旅するソーントン(ハリソン)と、温暖なカリフォルニアでペットとして育ち、数奇な運命によって犬ぞりを引くことになる奇跡の名犬バックの出会い、そして友情で結ばれ“最強の相棒”となった2人がさらなる未開の地を求め“最高の冒険”へと旅立つ姿を描く。
映画『野性の呼び声』ソーントン役のハリソン・フォードと名犬バックの場面写真
メガホンをとるのは、ディズニー・アニメーションで『ライオン・キング』『アラジン』『美女と野獣』などの名作を生み出してきたクリエイター、クリス・サンダース。
特別映像は、ソーントンとバックの言葉の壁を越えた“強い絆”を描く本編映像と、ハリソンの犬への愛に満ちたコメントを収めたもの。
愛する息子を失い孤独な旅を続けるソーントン(ハリソン)が、犬ぞりの先導犬を務めるバックと出会い、共に美しく雄大な大自然を旅する中しだいに強い絆で結ばれていく様が映し出され、最後は「お前は最高の相棒だ…」と優しくささやくソーントンに、バックがピッタリと寄り添う感動的な場面で締めくくられている。
コメント映像でハリソンは「ずっと犬と暮らしているが、犬にも個性がある。愛情を持って接すれば犬は愛を返してくれる」と犬への愛情あふれる言葉を残している。
また、実生活でも犬を飼っているハリソンは「今は4匹の犬を飼っているよ。どの犬も救助されたり、保護されたり街角で見つかった犬ばかりなんだよ」と愛犬とは劇中のソーントンとバックのような出会いであったことを明かした。
続けて「それぞれ違う性格だから、私との関係性もそれぞれの特徴や性格によるんだ。映画の中で、“私の犬も同じようなことをしていたな”と思い出させてくれる瞬間もあったよ」と、撮影中にバックを通して自身の愛犬との生活を振り返っていたことも明らかにしている。
映画『野性の呼び声』は2月28日より全国公開。
You Tubeより
https://www.youtube.com/watch?v=mg6IJHz8u8A
https://www.youtube.com/watch?v=DhJxa7Oe_dE
https://www.youtube.com/watch?v=Qz06HXVRDcM
ジャック・ロンドン『野性の呼び声』
文学どうでしょう
立宮翔太の読書ブログです。
日々読んだ本を紹介しています。
2012年03月29日
テーマ:アメリカの作品
野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)/ジャック ロンドン
¥500
Amazon.co.jp
ジャック・ロンドン(深町眞理子訳)『野性の呼び声』(光文社古典新訳文庫)を読みました。
キプリングの『ジャングル・ブック』の時にも少し触れましたが、動物が主人公の物語というのは、多くは人間社会の縮図として描かれます。
擬人化された動物たちは、動物的本能ではなく、人間的倫理観で行動するわけです。
もう少し分かりやすく書きますね。
動物世界は本来、弱肉強食による食物連鎖があってこそ成立している世界です。
ところが、物語ではそこに「弱いものをいじめてはいけない」というような、道徳的な考えが加わります。
そうすることによって、人間的な絆が生まれ、感動的な物語になりますが、その一方で、食うか食われるかという野生の過酷さや残虐性は失われます。
人間社会の縮図として以外の描き方もあります。
犬や猫などのペットが登場する、よくあるファミリーものの映画では、動物は人間の家族の一員として描かれます。
人間と愛情が通いあう存在として描かれるわけですね。
擬人化された動物か、あるいは愛玩の対象としての動物か。
多くの作品がこのどちらかの描き方をしているのに対し、『野性の呼び声』というのは、全く違ったテイストを持った作品です。
物語の舞台となるのは、ゴールドラッシュ時代のアラスカ近辺。
金を発掘すれば大金持ちになれるわけですから、開拓者たちがどっと押し寄せて来ます。
とても寒く、雪の降り積もる大地。
移動手段として、犬ぞりが使われています。
犬ぞりというのは、まあ馬車の小型版と考えてください。
馬の代わりに何頭かの犬が、荷物を乗せたそりを引っ張るわけですね。
この犬ぞりを引っ張る犬、バックが物語の主人公となります。
バックは犬ぞり用の犬として生まれたわけではなく、お金のためにお屋敷から盗まれた犬なんです。
つまり、家庭的な愛情に包まれ、なに不自由ない暮らしをしていた犬が、ある日突然、人間に棒で殴られ、ムチで叩かれるようになり、毎日毎日、雪の上でそりを引っ張り続けるという、辛く苦しい日々を送ることになってしまうんです。
驚き、とまどい、怒り、打ちのめされ、それでも気高く、誇りを持って生きていくバック。
バックの過酷な運命の先には、一体なにが待ち受けているのか?
注目すべきなのは、バックとの距離感です。
物語は擬人化されたバックの視点で語られていくわけではなく、ノンフィクションのような淡々とした文体で書かれていきます。
動物に寄り添うわけでも、かといって人間に寄り添うわけでもない、そういう絶妙なバランスを持った文体なんです。
ややかたい文章ではあるものの、バックの考えていることがなんとなく分かり、バックに感情移入もできるのに、変にバックを擬人化していないところが、すごくいいんですね。
それが、甘ったるいファンタジーではなく、骨太で濃厚な物語世界を作り出すことに成功しています。
人間的倫理観の下にたどり着く安直なハッピー・エンドではなく、それよりも一段階上の領域に到達しているラストのあの空間は、ただ息を飲むしかない、驚きや興奮に近い感覚でもって読者の心を揺さぶります。
非常にシンプルな話で、シンプルな話なだけに一層面白い作品です。
200ページくらいの短い小説なので、興味を持った方はぜひ読んでみてください。
おすすめの1冊ですよ。
◆作品のあらすじ
セントバーナードの父、スコッチシェパードの母に生まれたバック。
判事のお屋敷で暮らしています。
体重は140ポンド(訳注によれば約63キロ)で、父親ほど大きくはないですが、いずれは父親のあとをついで、旦那さまの狩猟犬として活躍することになるだろうと言われています。
バックの様子は次のように書かれています。
仔犬のころからの四年間、彼が送ってきたのはつねに満ち足りた貴族の暮らしだった。
それゆえ、鼻持ちならぬほどプライドが高いし、ちょっぴり自己中心的なところもある。
井のなかの蛙、大海を知らずで、田舎紳士がときとしてこういう弊に陥るが、ちょうどそれとおなじだ。
とはいえバックは、それでもよくおのれを律し、けっしてたんなる甘やかされた番犬に成りさがってはいなかった。
(12ページ)
文体と、バックとの距離感は常にこんな感じです。
近くもなく、遠くもない、ちょうどいいバランスですよね。
ややかたいですが、わりと読みやすい文章です。
屋敷の庭師見習いが、バクチでお金をスってしまい、悪い心を起こすんですね。
バックをこっそり連れ出して、売り払ってしまうんです。
バックはなにがなんだかよく分からないまま、貨物列車で遠くまで運ばれていきます。
その後は荷馬車でさらに運ばれます。
プライドの高いバックは、自分への不当な仕打ちに腹を立てるわけです。
激しい怒りに燃えるバックの前に現れたのは、棍棒を持った男。
バックは何度も何度も男に立ち向かいますが、その度に強く叩きのめされます。
人間には敵わないということを、身を持って学ばされるわけです。
バックの生まれて初めての挫折です。
彼はたたきのめされた(そのことはわかっていた)。
だが、心まで打ちのめされたわけではなかった。
(中略)男の棍棒は、ひとつの啓示であった。
それは原始の掟が支配する領域への第一歩であり、そこへの途中で、いまその掟の洗礼を受けたのだ。
この避けがたい生の実態は、やがて、より過酷な様相を帯びてくるが、そうした局面に恐れることなく立ち向かってゆきながらも、同時に彼はそれを、生まれ持った本性が呼びさましてくれた、隠れたる抜け目のなさで受けとめてゆくことになる。
(26ページ)
バックはさらに売られ、船で運ばれます。
バックが初めて雪を知る場面も非常に印象的なので、ぜひ注目してみてください。
バックは郵便物を運ぶ犬ぞりの、チームの一員となります。
他の犬たちも、それぞれ個性があります。
しっかりそりを引く犬もいれば、仮病を使ってずるしようとする犬もいます。
バックは頭がいいので、すぐにそりの引き方を覚えます。
バックが実力をつけてくると、問題となって浮上してくるのが、誰がそのチームのリーダーとなって、他の犬たちに指令を出すかです。
弱い犬をかばい、強い犬に立ち向かうバックは、やがてリーダーの犬と激しい闘争をくり広げることになります。
バックは力強く、たくましく成長していきます。
何度か売られ、別の主人の下で犬ぞりを引きます。
主人の扱い方は様々ですが、いずれにせよ辛く苦しい生活です。
そんなある日・・・。
とまあそんなお話です。
バックというのは、強く、誇り高い犬です。
野生の厳しさにぶつかったら、ただ打ちのめされるのではなく、それを乗り越えていこうとする、そういう犬なんです。
そんなバックの姿に、いつしか物語に引き込まれてしまいますよ。
バックの主人となる人々の性質は様々ですが、中には本当に愚かな人もいて、人間の強欲だとか、あさましさをあぶり出すような物語でもあります。
その一方で、愛情を通わせたご主人のために、力を込めてそりを引くバックの姿がとても印象的でした。
賭けの場面のところですけども。
白銀世界でたくましく生きるバックの汗や、凍りかけた毛先のかたさや、吐く息の白さまでもが伝わってくるような、リアルな作品です。
興味を持った方はぜひ読んでみてくださいね。