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16歳の愛犬を亡くした心理カウンセラーが考えるペットロス

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愛犬の死から3年。
新しい子を迎えたい気持ちと「過去」にしたくない気持ち 

2020年1月13日(月) 女子SPA! 

<16歳の愛犬を亡くした心理カウンセラーが考えるペットロス Vol.30>
心理カウンセラーの木附千晶さんは、16年一緒に暮らしたゴールデン・レトリーバー「ケフィ」を2017年1月に亡くしました。
ケフィはメニエール病などと闘い、最後は肝臓がんのために息を引き取ったのです。
前後して3匹の猫も亡くし、木附さんは深刻なペットロスに陥ってしまいます。
自分の体験を、心理カウンセラーとして見つめ、ペットロスについて考えてきた本連載をまとめた電子書籍、『いつかくるペットの死にどう向き合うか』(12月13日発売)を出版した木附さんに、「愛する者をなくした悲しみと向き合うこと」について聞きました(以下、木附さんの寄稿)。


【写真】木附さんが16年間一緒に暮らした、ゴールデン・レトリーバーの「ケフィ」
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◆愛する者の死は、世界が崩れるような喪失感
長年、生活を共にしてきたパートナーであり、わが子ともいえるペット(伴侶動物)を失うことは、はかり知れないほど大きな喪失感をともないます。
愛する者の死は、残された者に衝撃を与え、悲しみや寂しさ、後悔などの心の痛みや、それまでの世界が崩れていくような失望感をもたらします。
「最愛のペットを看取って以来、心に穴が空き、人生の道しるべを失ったかのようです」
「普段は立ち直ったつもりでいるのですが、辛いことや悲しいことがあって孤独を感じると、今も『あの子のもとに行きたい』と思ってしまいます」
愛犬「ケフィ」を亡くした当時、私が勤務していたカウンセリングルームで開いていたペットロス・セミナーに参加していただいた方々からは、そんな言葉も聞きました。

◆辛く、苦しくても逃げないことが大切
かけがえのない愛着の対象を失ったことを受け入れていく「喪の作業」はとても辛く、苦しいものです。
でも、逃げずに、「しっかりと悲しむ」ことが大切です。
苦痛から逃れたくて、「相手は人間ではないのだから」と自分を納得させようとしたり、「早く忘れよう」と思ったりしてはいけません。
仕事などに没頭して気を紛らわそうとしたり、周りの人たちを心配させまいと、「早く元気にならなければ」と先を急ぐことは禁物です。
悲しみから目を背けてしまうと、かえって心がダメージを受けたり、孤独から抜けられなくしてしまうこともあります。


宮古島でのケフィ

◆「たかがペット」「新しいペットを飼えばいい」が傷つける
残念なことに、ペットを失うことの悲しみを理解できない人もいます。
「たかがペットじゃないか」という態度や「新しいペットを飼えばいいじゃないか」という言葉が、愛するペットを見送った人をどれほど傷つけるのか、想像できない人も少なくありません。
そういう人たちに囲まれていると、「動物のことでこんなに嘆き悲しむ自分はおかしいのではないか」と自分を否定したり、恥じたりしてしまうこともあります。
ペットロス・セミナー参加者の中には、心ない人々から二次被害、三次被害を受けている方が何人もいました。
「何食わぬ顔で出勤し、ちゃんとし結果を出さないといけないことが辛かった」
「だれにもわかってもらえないと知っているから、会社のトイレや人気のない会議室で泣いている」
人間であれば、葬儀や忌引きなどがあり、少しだけでも社会生活から遠ざかることもできます。
法要など「みんなで故人を偲び、泣くための場」が用意されていたりもします。
しかし、ペットの場合には、そうしたセレモニーや社会的配慮はありません。

 
雪山をかけるケフィ

◆悲しみを分かち合って
ペットの喪失について語ったり、その感情を受け止めたりしてもらえる場が、世の中にはほとんどないのです。
愛情が大きければ、悲しいのは当たり前。
大切な者を見送ったのだから、泣いて当然です。
そんなこともわからない人たちとは距離を取りましょう。
ペットが与えてくれる深い愛情や喜びを知らない人など放っておいて、存分に悲しみましょう。
できたら、同じように大切なペット見送った経験がある人や、ペットが与えてくれる幸せを知っている人、嘆き悲しむ自分をそのままで受け入れてくれる人に話を聞いてもらいましょう。
大きな喪失体験と向き合うには、悲しみをだれかと分かち合うことが必要です。

◆後悔があるならなおさら、誰かと共有を
ペットロス・セミナーでは、悲しみも後悔も含めたペットへの思いを自由に話してもらいました。
もちろん、話したくない人は話さず、聴いているだけの方もいました。
静かに涙する人の時間をみんなで共有したときもありました。
なかには、もう何年もその悲しみにとらわれている人もいました。
そういう方の多くは看取りの課程で大きな後悔を抱えていました。
「獣医さんの言うとおりにしたのが間違いだったのではないか」
「もっと早く病気に気づいてあげればよかった」
「息を引き取ったとき、そばにいてあげられなかった」
同じ体験をし、ペットがもたらしてくれる幸福を知っている人たちとの分かち合いは、後悔も軽くしてくれます。
ひとりで抱え込んでしまい、忘れようとすればするほど、後悔は大きくなります。
悔いがあるならば、その思いを言葉や形にし、できるだけだれかと共有することをお勧めします。

◆「覚悟」が後悔を軽くしてくれる
そして今、まさにペットとの闘病生活を送っている人、看取りのまっただ中にいる人は、目の前で起きていることを見つめてください。
私たちは辛い現実から目を背け、「こうあって欲しい願望」を信じ込もうとしがちです。
私もそうでした。
でも、それでは困難や辛いことを予想して、それを受け止めるための「覚悟」ができません。
少しずつ消えていこうとする命を見つめ、小さな喪失体験を積み重ね、正解のない闘病や介護に悩みながらも向き合う。
――そうやって死の恐怖に向かって、愛する者と共に苦しむことが、「覚悟」をともなう看取りにつながる気がします。
「覚悟」ができなければ、たくさんの後悔を残してしまうことになります。
「人は否認するものだ」とわかっているだけでも、きっと「覚悟」に一歩近づくことができるはずです。

◆ようやく決心して、新しい子を迎えた
2017年1月に愛犬の「ケフィ」が亡くなり、当連載を始めたのが2017年4月。
カウンセラーという仕事柄、ペットロスについてはよくわかっていましたが、それでも喪失感は想像以上でした。
気持ちがようやく落ち着いた2019年9月まで計29回にわたって、自分の経験をふまえて「いつか来るその日」とどう向き合ったかをお伝えしてきました。
ケフィが亡くなってもうすぐ3年。
新しい子を迎えたい気持ちと、ケフィのことを「過去」にしたくない気持ちがせめぎ合っていましたが、ようやく決心をし、2019年秋、ゴールデン・レトリーバーの「ケノン」を家族に迎えました。

<文/木附千晶>

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【木附千晶】
臨床心理士。子どもと家族カウンセリングルーム市ヶ谷共同代表。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの力を伸ばす 子どもの権利条約ハンドブック』など。著書に『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』など。


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