ペット14匹が死亡、原因は生協で買ったペットフードか?悲しすぎる事故の真相
2019年9月16日(月) 女子SPA!
写真はイメージです(以下同じ)
2019年8月16日、食材宅配などを行う生活協同組合(生協)「生活クラブ連合会」が公式サイト上に掲載した、組合員向けニュースは、愛犬や愛猫と暮らしている多くの飼い主さんを震撼させました。
そこにはなんと、生活クラブ連合会が販売したペットフード「犬猫用ササミ姿干し 無塩」という商品からサルモネラ菌と大腸菌群が検出され、組合員59人が飼うペット計68匹に嘔吐や下痢などが見られ、その内の14匹が死亡したという事実が記されていたのです。
菌に汚染されていたのは一商品ではない疑いが…
この商品は北海道内の「ノースペット」で製造されていたもの。
J-CASTニュースの取材によれば、2017年秋に再販売されてから毎月8000~9000個売れるほどの人気商品だったそう。
本件を受け、農林水産省はノースペットから改善報告を受けた後、抜き打ちの立ち入り検査を実施。
改善を確認し、再発防止を指導しました。
しかし、9月3日、また新たな事実が発覚。
ノースペットは「牛干し商品」もサルモネラ菌に汚染されていた疑いがあることを公表。
商品の出荷は停止され、現在は第三者機関に検査が依頼されています。一体なぜ、こんな事態になってしまったのか…。
そこには、業者の不注意だけではなく、動物愛護法で定められている「ペットフード安全法」の“抜け穴”も大きく関係しているように思えます。
ペットフードは「食品」ではないという矛盾
ペットフード安全法は、2009年から施行された法律。
きっかけは、2007年にアメリカで有害物質・メラミンが混入した輸入材料により製造されたペットフードを食べた犬猫が、死亡するなど健康被害が発生したことでした。
その後、日本でもメラミンが混入している恐れがあるペットフードが輸入・販売されていることが分かり、ペットフードの安全性を確保するために設けられたのです。
しかし、ペットフードは現在の日本では「食品」として見なされていません。
そのため、食品衛生法やJAS法、健康増進法の規制も受けないのです。
生活クラブ連合会でも「生活用品」と位置付けており、細菌基準はなかったといいます。
また、ペットフード安全法の「製造の方法の基準」には「微生物を除去するのに十分な効力を有する方法で行うこと」との記載がありますが、どんな方法を使い、どれくらいの温度で何時間加熱するのかなどをは何も具体的には記されていません。
口にするものなのに食品ではなく、具体的な細菌除去法も明記されていない。
業者の注意不足だけでなく、法律のそんな曖昧さも、今回の事件を引き起こすきっかけになったように思えてなりません。
死亡した14匹と商品との因果関係はわからないけれど
ノースペット側はメディアの取材に対し、商品が原因で健康被害が起きたとは断定できないとはしたものの、加熱処理が不十分だった可能性は示唆しました。
今回検出されたサルモネラ菌は強い毒性があるものではなく、死亡した14匹のうちの多くは高齢や病気がちだったため、因果関係ははっきりしていないとのこと。
たまたま病死の時期と重なったのかもしれませんが、もしそのフードが引き金だったとしたら…。
基本的に、どんな年齢のどんな状態の犬猫が口にしてもおいしく安全に食べられて当たり前なのが、ペットフードのあるべき形なのではないでしょうか。
年老いたり、体調が悪かったりする愛犬・愛猫に少しでも何か口にしてほしいと願い、食べ物を選ぶ……。
飼い主の愛情を、業者が裏切ってはいけないはず。
業者には、そんな飼い主が安心して食べさせられる食品を作ってほしいものです。
また、名ばかりの安全法ではなく、人間と同じような基準で守られる法令を作ったり、ペットフードも食品を見なすなど基礎的な対策が行われていってほしいとも切に思いました。
自分のあげた食事で命を落とす愛犬
Twitter上では本品を口に、苦しみながら亡くなっていったと飼い主さんが投稿しているワンちゃんの動画も上がっています。
小さな体を痙攣させているワンちゃん…なぜこんな悲しことが起きたのか?
因果関係はまだはっきりとはしていませんが、この事件を契機にしてペットフードがどれほど曖昧に守られているかを多くの人が知ることは大切でしょう。
人の体が毎日口にする食材でできているのと同じように、動物の体は日頃口にするペットフードやおやつで作られています。
愛犬や愛猫にとってみたら、ペットフードは命そのものだといえるのです。
<文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291