幸せになった保護犬・保護猫たちを見て
ペットサイト「sippo」が写真集を刊行
2019年8月16日(金) 好書好日(朝日新聞)
ペットサイト「sippo(シッポ)」から、写真集『みんなイヌ、みんなネコ』が刊行されます。
登場する100匹はみんな元保護犬・保護猫。
撮影したのはすべて飼い主という異色の写真集です。
制作経緯や魅力などをsippoの山田裕紀編集長につづってもらいました。
めめ(左)とクリパ=いずれも『みんなイヌ、みんなネコ』から
「保護犬」「保護猫」という存在をご存じでしょうか?
野良犬・野良猫として生まれたり、手放されたりして飼い主がいないため、自治体の施設や動物愛護団体などに一時保護された犬や猫のことです。
自治体の施設に収容され、もらい手がなく一定期間が過ぎると、殺処分される運命にあります。
2017年度には全国で計10万648匹の犬や猫が引き取られ、4万3216匹が殺処分されました。
このうち猫が3万4854匹を占め、2万1611匹は生まれたばかりの子猫でした。
そんな命を奪われる犬や猫を減らそうと、全国各地の自治体や愛護団体が努力を続けています。
かわいい存在を知ってもらいたい
理屈や先入観ぬきに、ペットショップなどで売られている犬や猫と同じように、保護犬や保護猫がかわいい存在だと知ってもらう。
そんな目的で、ペットサイトsippoは2016年9月から、写真展を中心としたチャリティーイベント「みんなイヌ、みんなネコ」を毎年開いています。
多くの人に気軽に見てほしいと考え、あえて写真展のタイトルに「保護犬」「保護猫」とはうたっていませんが、展示している写真はすべて元保護犬や元保護猫です。
撮影したのは、それぞれの飼い主。犬や猫が飼い主に見せる穏やかな表情から、幸せな暮らしぶりが伝わってきます。
それぞれ出会いのエピソードや飼い主の思いなどメッセージを添えて展示しています。
かわいい写真と、そこに書かれた率直な言葉に心打たれると、写真展は大変好評で、今年で4年目を迎えました。
ただ、会場と期間が限られるため、写真集にしてほしいという声が各地から寄せられ、出版に至りました。
それぞれにあふれる飼い主の思い
写真集『みんなイヌ、みんなネコ』には、今年の写真展の出展作品を中心に100点を収録しています。
飼い主さんのメッセージも写真展同様、それぞれの写真に添えてあります。
その一部を紹介すると……
《ふくちゃんがうちに来てから毎日笑っています。ゴミ箱をあさって逃げ回ったり、ベッドに骨が隠してあったり、おじいさんみたいなイビキをかいたりするけど、皆ふくちゃんが大好きです。生きててくれてありがとう、ふくちゃん》
《過去にあなたたちを傷つけ捨てた「人間という生き物」をもう一度信じてくれてありがとう。お互いを慈しみ支え合うあなたたちの姿から、たくさんの幸せと気付きをもらっています。これからもずっと一緒にいてね》
《動物に流行なんていらない……私たち人間と同じで一人一人、一匹一匹に個性や性格があって、みんなそれぞれの魅力がある。可愛がれば可愛がるほど可愛くなる。人間も動物も大切なのは愛情だと思います》
保護犬・保護猫を譲り受けることを普通のことに
写真集に登場する犬や猫たちもかつて保護犬、保護猫でしたが、今では新しい家族のもと、元気に幸せに暮らしています。
保護犬や保護猫を譲り受けて飼うことが、普通のこととしてもっと広がれば、人間の都合で命を落とす不幸な犬や猫を減らすことができます。
「犬はみんな犬、猫はみんな猫。すべての犬や猫、そして人が幸せになれる社会にしたい」
そんな思いから写真集を作りました。
売上の一部は、公益社団法人「アニマル・ドネーション」を通じて動物保護団体に寄付する予定です。
浅田美代子さんらトークショー 「保護犬、保護猫を迎え入れて」
愛犬家の俳優・浅田美代子さんと、朝日新聞の太田匡彦記者によるトークショーが17日、東京・新宿の京王百貨店で開催中のチャリティーイベント「みんなイヌ、みんなネコ」で行われた。
2人のトークは、保護犬や保護猫と暮らす楽しさから、動物をめぐる制度の課題にまで及んだ。
会場は満席で、大勢の来場者が立ち見で聴き入った。
保護犬や保護猫について語る浅田美代子さん
浅田さんは4匹の元保護犬と、太田記者は2匹の元保護猫と暮らしているという。
保護犬や保護猫の魅力について、浅田さんは「助けてもらったという感情があるのかと思うぐらい、いい子になる。しつけができないのではと思っている人も多いけれど、できますよ」と話した。さらに保護団体を通じて犬や猫の病気について知ることができ、譲渡の前のトライアル期間もあるため、「避けて通らず、飼ってみようと思ってほしい」と続けた。
太田記者は、事前に分かる情報はペットショップよりも保護犬・猫の方が多いと述べ、「ペットショップでは、こんな病気があるとは書かないし、店の人は犬や猫の性格が分からない。保護犬・猫の場合は、保護団体のボランティアが性格を見極めていて、その家庭に合った犬や猫を迎えることができる」と語った。
また太田記者は、ペットが高齢になり看取るのがかわいそうとの理由で手放すケースがあることを紹介し、「最後まで犬や猫を看取ることを含めて飼うということ。医療費で10万円、20万円というお金がかかることもあるので、自分の経済力を確認することも必要」と述べた。
浅田さんは「犬や猫を飼うには覚悟が必要。安易に飼ってしまうのはよくない」と指摘した。
保護犬や保護猫と暮らす魅力を語った浅田さん(左)と太田記者
「保護犬・猫を飼ってくれる人、増えてうれしい」
2人のトークは、6月に成立した改正動物愛護法にも及んだ。
浅田さんは、繁殖業者やペットショップの飼育施設の広さや1人あたりの飼育可能数の「数値規制」について、具体的に定めることが明記されたものの、数値の検討はこれからとなることに触れ、「注視していかなくてはならない」と語った。
同法では、日本犬が8週齢規制の例外になったことなども説明。
浅田さんは「改正しなくてはいけないことが山ほどある。次の法改正に向かって取り組んでいきたい」と話した。
またこれから取り組みたいこととして、「飼い主に向けて最後まで飼いましょうとか、もっと伝えていく場を設けていきたい」とも話した。
会場では、元保護犬・猫たち約100匹の写真展が行われている。
浅田さんは、「保護犬・猫を飼ってくれる人が増えて嬉しい。飼っている人を見ると私も、と思うかしれない」と期待を寄せ、約1時間のトークは終了した。