殺処分ゼロを目指すために施設を一新した「大阪府動物愛護管理センター」
2019年6月3日(月) いぬのきもち
真新しいセンター外観。ベンチやテーブル、犬をつなぐ場所も設置。左には犬の運動場が完備。
もともと収容犬だった「ししまる」と「ちょろまる」。愛嬌たっぷりの姿が来場者をとりこ
譲渡対象犬の飼育室。奥側のスペースは一般の方が入れる場所で、ガラス越しに見学が可能。
人と動物がともに幸せに暮らせるよう開所されたセンター
2017年8月、羽曳野(はびきの)市に開所された「大阪府動物愛護管理センター」。
愛称の「アニマル ハーモニー大阪」は、公募で集まったなかから選ばれました。
緑豊かな環境と真新しい建物のコントラストが印象的な外観から一歩足を踏み入れると、やさしい色合いの空間「ふれあいコーナー」が目に入ります。
ここではセンターのモデル犬「ししまる」「ちょろまる」の2頭といつでもふれあうことができます。
このセンターには、手術室、レントゲン室、トリミング室など、動物の健康管理に必要な設備がそろっています。
また飼育スペースは、譲渡対象の犬と観察中の犬とそれぞれ分けて収容。譲渡対象の犬は必要に応じて血液検査のあとに狂犬病予防などのワクチンの注射が打たれるなど、健康管理をしっかり行ったうえで譲渡されています。
センターを新しくするにあたり、災害時の備えが万全に整えられました。
たくさんの犬を収容できるよう、仕切り板で1部屋から2部屋になるつくりにし、多くの動物を収容しなければならない状況に備えています。
実際に災害が起こり、収容頭数が限界を超えてしまったときはプレハブの設置も考え、駐車場が活用できるよう上下水道も整備。
またドッグフードやペット用品の備蓄に関しては、いくつかの企業と「災害協定」を結んでおり、有事の際は「流通在庫備蓄(提携した企業の商品を買い取ったうえで、そのまま在庫として保管を委託。
必要なときに届けてもらう方式)」により保証されています。
真柳敦夫さん
大切に飼ってほしいから譲渡条件はしっかり設ける
このセンターができる前は「犬管理指導所」の名称で、狂犬病予防法に基づき、犬の捕獲や処分などの業務を中心に行っていました。
現在は犬猫たちの譲渡に力を入れ、社会全体で殺処分がゼロになることを目指しています。
その一環として、譲渡の前は職員が飼育環境の確認のため、家庭訪問を行います。
問題がなければその後、譲渡前講習会を受講し、ようやく希望の犬と対面。
「譲渡犬が新しい飼い主さんのもとで幸せに暮らすために必要なこと」と、職員の皆さんは考えています。
また、大阪府では「動物愛護管理基金」が創設されました。
「今までの予算では、収容動物たちの食事やおやつ、居住空間を整えるなど、最低限必要な費用にあてる分しかまかなえませんでした。譲渡率を上げるためには、トレーニングやトリミング、外部の動物病院で行う治療や入院など、こまやかなケアの必要性を感じています。寄付によりそれが実現できそうで、ありがたく思っています」と真柳さんは話します。
【お話を伺った方】
真柳敦夫さん:
センター開所時から所長を務め現在2年目。これまで4000名ほどの来客と、自治体からの視察を数多く受け入れている。今後の新たな取り組みも模索中。
出典/『いぬのきもち』2018年12月号「犬のために何ができるのだろうか」
取材・撮影・文/尾﨑たまき
※保護犬、飼い主さんの情報は2018年11月10日現在の情報です。
いぬのきもちWeb編集室