猫の殺処分が倍増、「もう飼えない」成長した猫の保護が急増する背景とは 名古屋市
2019年4月7日(日) CHUKYO TV NEWS
名古屋市では昨年度、猫を殺処分した件数が前の年から倍増しており、その裏側には深刻な事情があるといいます。
その事情とは。
引き取り手を待つ猫たち(名古屋市動物愛護センター)
多くの猫が保護される名古屋市動物愛護センターで引き取り手を待つ猫たち。
最近、保護される猫にある変化があるといいます。
「(こちらの猫は)11歳ですね。3月の半ばぐらいに来たと思います。大人の猫が多いですね」(名古屋市動物愛護センター 島崎亜紀さん)
実は、“大人の猫”の引き取り件数が、平成29年度の42匹から昨年度は約6倍から7倍にも増えているといいます。
「平成29年度は 10匹以上の収容は1件しかなかったが、昨年度はたくさんの10匹以上の収容があったというのが大きいです。飼い主さんが病気になったりとか、どんどん増やしてしまったり」(名古屋市動物愛護センター 島崎亜紀さん)
猫の殺処分数の推移(提供:名古屋市)
名古屋市によると、年々減少傾向にあった猫の殺処分数は2017年度の76匹から昨年度(2月末)は174匹へと倍以上になりました。
飼い主が猫を“どんどん増やしてしまう”というケースは去年5月、東海地方でも問題になりました。
住宅で世話が行き届かない状態で、40匹以上の猫を飼育し、付近の住民に迷惑をかけ続けたとして、住人の姉妹が強制的に退去となったのです。
この件でも、多くの猫がセンターに保護され、その後すべての猫が引き取られました。
引き取られた猫には問題も
しかし、こうした多頭飼育の現場から引き取られた猫には難しい問題があることも。
「この子なんか外の世界を全然知らないで3年やってきたので、怖くて怖くて、1か月近く、まともにご飯が食べられなくて」(名古屋市動物愛護センター 島崎亜紀さん)
多数で飼われていた猫は管理が行き届かず、健康状態のよくない猫や、人に対して警戒する猫が多く、なかなか譲渡されるのが難しいといいます。
名古屋市内で多頭飼育されている猫
名古屋市内のとある住宅でも、60代の男性が増えすぎた飼い猫に悩んでいました。
「(最初は)4匹。みんなここで生まれて増えた」(名古屋市内に住む 60代の男性)
部屋は契約上、猫を飼うことはできません。
もともと猫好きだった男性が8年前に拾ってきた4匹の猫は、数年で60匹まで増えました。
「部屋がめちゃくちゃで、臭いとかね」(名古屋市内に住む60代の男性)
男性には予想外の出来事だったといいます。
その後、周辺住民がボランティアに相談。ボランティアとともに改善に努め現在では30匹にまで減ったといいます。
しかし、今も引き取り手を探してはいるものの、すべての猫に避妊手術を施すことはできていません。
ねこけん動物病院(東京・杉並区)
東京・杉並区にある「ねこけん動物病院」。こちらの動物病院では、野良猫や飼い猫の去勢・避妊手術を多いときは1日に25匹も行っています。
猫が繁殖しすぎてしまった多くの現場を見てきた溝上さんは、「多頭飼育してしまっている状況を、増えれば増えるほど人に言えなくなってしまう。表に出づらいと思います。予備軍はたくさんあると思います」(溝上奈緒子さん)
犬などに比べ鳴き声の小さい猫は数が増えても周りも気付けず、表面化しにくいという側面も。
名古屋市は今後、多頭飼育の際の届け出の義務化やワクチンの助成金などを検討するとともに、ボランティアや管理組合と連携して深刻な事態になる前に状況を察知していきたいとしています。
中京テレビNEWS
<くらし調査隊>
「ペット禁止」市営住宅で多頭飼育(名古屋市)
2019年4月6日(土) 中日新聞
名古屋市内の市営住宅に住む男性から、同じ住宅に「猫を数十匹飼っている部屋があり、臭いや鳴き声で迷惑している」との情報が寄せられた。
同市の市営住宅では、猫を40匹以上飼っていた姉妹が昨年六月に強制退去となった事案もあった。ペット飼育を禁止しているはずの市営住宅で、なぜ問題が相次ぐのか。
男性の住む市営住宅を訪ねた。
「ベランダ側の窓を開けると臭ってくる。夜は音が気になって眠れない」と、男性の家族は表情を曇らせた。猫は3カ月ほどの妊娠期間で出産し、1回に3~6匹を産む。
さらに、近親でも交配するため増えやすい。
知識不足などから、短期間に増えて飼い主の手に負えなくなる「多頭飼育崩壊」は各地で起きている。
強制退去となったケースでは、臭いや鳴き声で近隣に迷惑をかけたとして、市が明け渡しを求めて初の提訴に踏み切り、名古屋地裁が請求を認めた。
担当の住宅管理課は、男性が暮らす市営住宅の件も把握していた。
「30匹ほどいるが、市民団体の協力を得て避妊・去勢手術をさせるなど、飼い主が減らす努力をしている」と舟橋正規主査は説明する。
定期的に部屋を確認し、「悪化すれば法的措置を取る」と告げているという。
ここまで深刻化したのは、他には強制退去の例だけという。
同課によると、市営住宅は計6万戸あり、ペットに関する苦情は月15~20件ほど。
そのたびに現場を確認し、指導している。
ただ、市営住宅を訪ねて気になったのは、敷地のあちらこちらに「ふん・尿をさせないで」との自治会の張り紙があること。
男性も「犬を抱いたり、散歩させたりする住人を見かける」と話す。
市営住宅では、飼育が禁止されているはずなのになぜだろうか。
同課によると、市営住宅条例に明確に飼育の禁止をうたう規定はない。
具体的な動物の名前を入れると、それ以外は飼ってよいことになってしまい、「明文化しない方が対応しやすい」ためという。
そこで、騒音などの迷惑行為を禁じる条文に基づき、入居時に「飼育しません」との誓約書を提出してもらっている。
強制退去となったケースも、迷惑行為としての措置だ。
市は、対策として10匹以上を飼う場合の届け出義務付けを検討している。
しかし、今回の件でも協力する動物愛護団体「花の木シェルター」の阪田泰志さん(34)は「10匹でも既に手に負えなくなっている可能性があるし、届け出ない飼い主もいるはず」と指摘する。
「多頭飼育で崩壊する飼い主には、猫に依存していたり、1匹数万円の手術費用が出せなかったりする人が多い。
低所得者向けに費用を安くする仕組みづくりや、医療のサポートが必要」と話す。
(小中寿美)
市営住宅を管理する外郭団体は、飼育をやめて知人に預けるなど手放すよう呼び掛けている=名古屋市内で(一部画像処理)