「ドクタードッグ」を知っていますか?
元保護犬が広げる笑顔の輪
2019年3月12日(火) デイリー
キキ君はドクタードッグとして笑顔を届けている(画像はイメージです)=whyframeshot/stock.adobe.com
「ドクタードッグ」という言葉を聞いたことはありますか?
トレーニングを受け、認定試験に合格した後に、病院や高齢者施設、学校などを訪問する犬のことです。
日本では「セラピー犬」と呼ばれることが多いですが、1991年に香港で設立されたアジア動物基金が運営するプログラムでは「ドクタードッグ」と呼ばれ、国際統一ルールの下、認定を受けた犬たちがアジア各国で活動しています。
兵庫・西宮市に暮らすチワワのキキ君(4歳)もドクタードッグの一員として、多くの人に笑顔を届けています。
キキ君は保護犬でした。
多頭飼育崩壊により行政機関に保護され、5年前に動物福祉団体「ペッツ・フォー・ライフ・ジャパン(PFLJ)」に引き取られたのです。
里親さんはすぐに見つかりました。
先住犬のララちゃん(マルチーズとトイプードルのミックス、8歳)を飼われていたTさんです。
当初は抱っこしても手のひらの上で立ったまま固まっていたり、散歩にも行きたがらなかったキキ君ですが、お姉さんであるララちゃんがうまくリードしてくれ、徐々に慣れていきました。
「私たちよりも、ララが先にキキとの関係を築いてくれました」とTさんは振り返ります。
ララちゃんはすでに、アジア動物基金のドクタードッグプログラムに参加しているPFLJでトレーニングを受け、資格を持っていました。
そこでTさんは一緒に活動できるようにと、キキ君もドクタードッグにすることを決めたのです。
ドクタードッグはどのような環境でも落ち着いていられなければいけません。
そして、ハンドラーである飼い主さんの指示は絶対です。
例えば「マテ」は犬の基本的なしつけのひとつですが、ドクタードッグはオスワリでマテ、フセでマテ、食事中にマテ…など、さまざまなパターンが求められます。
もちろん、飼い主さんが解除してくれるまで動いてはいけません。
警戒心が強く、集中力も長続きしなかったというキキ君。
オヤツへの執着もそれほどなかったため、トレーニングには少し時間が掛かりましたが、Tさんは根気強くキキ君と向き合い、16年12月、晴れて認定試験に合格することができました。
17年から活動を始め、今では病院、高齢者施設、保育園、小学校など、どんな施設にでも行けると言います。
PFLJの募金活動にも参加しますし、大阪市内の百貨店で開催されたイベントに“出演”したことも。
ドクタードッグとしてだけでなく、PFLJへの支援を呼びかける“PR犬”の役割も担っているのです。
「表情のあまりなかったお年寄りが、キキをなでながらニコニコされていたり、子どもたちが喜んでいる姿を見ると、やっぱりうれしいですよね。お役に立てているのかなと。保護犬を迎えてゴールじゃない。新しい世界へキキが連れて行ってくれています」(Tさん)
PFLJからはこれまでに約80頭のドクタードッグが誕生していますが、そのうち1割程度が元保護犬とのこと。
最近は比率が増えているそうです。
「施設を訪問したり募金活動をしていると、“こんなにお利口な子が元保護犬なの?”と驚かれることがあります。保護犬に目を向けてもらうきっかけにキキがなれているのであればうれしいです」(Tさん)
ドクタードッグは飼い主と愛犬が一緒に参加できるボランティア活動。
キキ君たちの訪問を心待ちにしている人たちがたくさんいます。
キキ君、これからもみんなを笑顔にしてね!
(神戸新聞特約記者・岡部充代)
特定非営利活動法人
ペッツ・フォー・ライフ・ジャパン(PFLJ) http://www.pflj.org/