全英感動!奇跡の出会い 3本足の犬と難病少年
奇跡体験!アンビリバボー 5月1日(木) オンエアー
今年2月、イギリスで出版された1冊の本が 今、大きな話題を呼んでいる。
そこに記されているのは、虐待を受け足を失った犬と、難病に苦しみ、生きる事に絶望してしまった少年のエピソード。
傷を抱えた両者の出会いは、後にイギリス中を感動の渦に巻き込む奇跡を起こす。
今から3年前、ロンドンの動物病院に一頭の犬が救急搬送された。
生後半年ほどのアナトリアン・シェパードという大型犬が瀕死の重傷を負っていた。
その日、動物病院に鉄道会社の運転手から、とても大きな犬が電車に跳ねられ横たわっていると連絡があった。
だが、長年様々な動物を治療してきた獣医にとって、それはとても奇妙なことだった。
成長すると体長80cmにもなるアナトリアン・シェパードは、堂々たる外見に反して非常に慎重な性格で知られている。
そんな犬が注意不足で列車事故に遭うとは考えづらかったのだ。
後に出版された本によると、飼い主から虐待を受けていたというこの犬は線路に固定されていた可能性があるという。
その後、犬は医師たちの懸命の努力により一命を取り留めた。
だが、損傷の激しかった左の後ろ足はやむなく切断された。
超大型犬が足を失うと、成犬となった時、自らの体重を支える事ができず、寝たきりになってしまうケースが多い。
そのため、なかなか引き取りたいという人も現れないのだ。
それでも保護団体は、この可哀想な犬を救おうと「ハチ」という名前をつけ、様々なサイトで飼い主を募集。
しかし、引き取ってくれる人は中々現れなかった。
引き取り手がなければ、殺処分の処置をとらざる得ない場合もあった。
だが、呼びかけを始めてから およそ半年後。
ドックトレーナーのコリーン・ホーキンスさんが「ハチ」の飼い主募集の記事に目を留めた。
しかし・・・コリーンさんとウィルさん夫妻には、オーウェン君という一人息子がいた。
だが彼は、ある問題を抱えていた。
それは、『シュヴァルツ・ヤンペル症候群』。
全身の筋肉が常に硬直してしまう先天性の難病である。
筋肉は通常、力を入れることで硬直するが、この症候群の場合、意思とは関係なく、常に筋肉が緊張し、硬直した状態になる。
そのため、骨の成長が妨げられ、歩行も困難になる。
世界でも約100例しか報告されておらず、治療法も分かっていない。
それが彼が持って生まれた病気だった。
小学校に通い始めたオーウェン君は、この頃から自分が他人と違う事に悩み始めた。
中でも一番の悩みだったのが・・・ 「なんでオーウェンっていつも変な顔をしてるの?」と友達にからかわれることだった。
実は、顔の筋肉も硬直しているため、常に目が開けづらく、口を尖らせた顔つきになってしまうのだった。 いつしか他人の視線を極端に怖がるようになってしまったオーウェン君は、やがて学校も休みがちになり、ついには家の外に出る事さえ嫌がるようになってしまったのだ。
さらに、薬を飲む事を嫌がり、飲まなくなってしまった。
夫婦がインターネットで3本足のハチと出会ったのは、そんなある日のことだった。
実はこの家には、すでにピクセルという犬がいた。
息子はもちろん、ピクセルにとっても大きな障害犬は恐怖ではないか?
不安は大きかった。
しかし、コリーンさんの強い願いで、一度見に行くことにした。
ハチは虐待を受けたトラウマで人間不信に陥っていた。
だが、とりあえず2週間だけあずかり、試してみる事にしたのだ。
いよいよ、ハチを迎える日がやって来た。
だが、警戒心からか、ハチは玄関先で足を止めてしまった。
そこで、コリーンさんはまず ハチの警戒心を解くためにリードを離して、家の中を自由に探検させることにした。
するとこの時、とても不思議な事が起こった。
初めてやって来た家にも関わらず、まるで元々知っていたかのように、一目散にある場所に向かっていったのだ!!
1階にハチの姿が見当たらず、心配になった両親は慌ててオーウェン君の部屋へ駆け込んでいった。だが、そこには・・・驚くべき光景が!!
オーウェン君の膝に頭を乗せて甘えるハチと、ハチをなでているオーウェン君がいたのだ!!
それが全ての始まりだった。
ハチはこの家に来た最初の日から、片時もオーウェン君のそばを離れようとしなかった。
ぴったりと寄り添うハチ。
それは、人間不信になった犬とは思えない姿だった。
そして、そんなハチの存在は、やがてオーウェン君にある変化をもたらすようになった。
それは・・・ハチが足のために薬の混ざった食事をとるのを見て、再び薬を飲み始めたのだ。
どんなに大変な状況でも、前向きに生きる姿勢をハチから学び取ったオーウェン君。
こうして、失いかけた笑顔をハチと一緒に少しずつ取り戻していったのである。
だが1つだけ、どうしても取り戻せないものがあった。
外に出て行く事だけはどうしてもできなかった。
そこで コリーンさんは、足を失い人間が信じられなくなったハチが自分からオーウェン君と友達になろうとしてくれた・・それが、どれだけ勇気の要ることだったかを話した。
人間不信だったはずのハチが勇気を出して自分を信じてくれた。
それなのに、自分は過去のトラウマを引きずりあと一歩が踏み出せない・・・。
しかし・・・オーウェン君はある日、ウィルさんに「ハチを散歩に連れて行きたい」と言ったのだ!
オーウェン君はついに、自らの意思で外の世界に飛び出していったのだ!
すると・・ハチに惹かれて、見知らぬ子供たちが集まって来た。
そして、足が1本ないハチに「かわいそう」という子供たちに、オーウェン君は今までにないほど はっきりとした口調でハチがどんなにスゴイのかを話して聞かせた。
どれだけハチがスゴイ犬なのかをただ伝えるために。
すると・・・子供たちの親が「スゴイのはあなたも一緒よ。そんな犬を散歩させてあげるなんて偉いわね」とオーウェン君をほめてくれた。
最初は大好きなハチの話を誰かに聞いてもらいたいだけだった。
だが、つい最近まで他人の目を見ることもできなかった少年は、その時、生まれて初めて他人と関わる喜びを知ったのだ!!
その後、オーウェン君はハチと一緒に出かける先々で、色んな人にハチの話を聞かせることが何よりの楽しみになり、ついには、多くの人が集まるドッグショーにも出場。
そして 昨年3月、彼らは世界最大のドックショー、Crufts(クラフト)で犬と人間の友情に与えられる賞、『Friends for Life賞』の最終候補にノミネートされたのである。
そして・・・『Friends for Life賞』を見事に受賞。
そこには、外を出ることを恐れ、生きることに絶望していた少年の姿はどこにもなかった。
あれから1年、オーウェン君とハチはどうしているのか?
彼らの家を訪ねると、何と家族揃って出迎えてくれた。
現在は、毎日学校にも通っているというオーウェン君だが、ハチとの友情は今も当然変わっていない。
最後にオーウェン君に将来の夢を聞いてみると・・・。
「ハチと一緒に世界中のいろんな所に行ってみたい」