「日本犬」を天然記念物から世界遺産に! 秋田犬など6犬種存在
2018年11月9日(金) 夕刊フジ
【人とペットの赤い糸】
今年2月に行われた平昌(ピョンチャン)五輪の女子フィギュアスケート金メダリスト、アリーナ・ザギトワ選手(ロシア)に、日本の秋田犬保存会から雌の秋田犬をプレゼントされたことが大きく報道された。
世界の在来種や絶滅した犬種まで含めると、700~800種類の犬が存在している。
日本では明治から昭和初期にかけて、洋犬の移入などによって雑化が進んだ時期があり、日本犬絶滅の危機があった。
これに危機感を抱いた研究家の斎藤弘吉は1928年、日本犬の復興を呼びかけ、日本犬保存会を創立した。
日本犬保存会や各犬種の保存に尽力していただいた方々のおかげで、日本犬は6犬種存在している。
日本犬保存会は、「日本犬標準」を34年に制定した。
文部省によって、31年から37年にかけて、日本犬は国の天然記念物に指定された。
古い順から、秋田犬(大型)▽甲斐犬(中型)▽紀州犬(中型)▽柴犬(小型)▽四国犬(中型)▽北海道犬(中型)-となる。
国の天然記念物は傷つけたり、採取することを禁じている。
また、天然記念物に指定された犬は猟犬として利用してはならない。
日本犬の遺伝子的特性は最もオオカミに似ているとされている。
各犬種を簡単に紹介したい。
秋田犬は秋田県大館地方を中心に飼育されていた。
大型でしっかりした体格。
性格は穏やかで誠実な面を持っているが、元々は獲物を追い立てたり、闘犬として活躍する時代もあった。
秋田犬の忠実さを一躍有名にした忠犬ハチ公は、東京帝国大学農学部(現東京大学農学部)教授の上野英三郎氏に飼われていた。
東京・渋谷の銅像も有名だが、東京大学農学部には上野教授とハチの銅像がある。
甲斐犬は甲斐地方(山梨県)の山岳地方の狭い地域で繁殖され、鹿や猪狩りにひるまないように育てられた。
四肢がすっきりした鹿型とずんぐりした猪型がある。
紀州犬は和歌山県から三重県の熊野地方の山岳部で猪狩りなどに用いられていた。
すっきりした鼻筋やピンと立った三角耳と細い三角目を持っている。
柴犬は山岳地帯で狩猟犬として活躍していた小型の土着犬だ。
先住民族とともに南方から渡来したものと考えられている。
四国犬は、昔「土佐犬」と呼ばれていた。
四国山地に存在していた土着犬で、その風貌からオオカミと間違えられることもある。
猟犬としても勇敢な性格で、番犬にも適している。
北海道犬は昔から原始の姿そのままの原種犬として、優秀な獣猟犬である。
絶滅寸前までいったが、現在は北海道犬保存会が管理しながら大切に種を守っている。
西洋でさまざまな種のかけ合わせでつくられた犬と違い、日本犬は長年に渡って大切に守られてきている。
この日本犬を世界遺産にしようではないかという運動が日本犬を愛し、保存に尽力されている方々から起こっている。
日本犬を世界遺産として、日本古来の尊い生命を未来につないでいくことができたら、何と素晴らしいことだろうか。
■越村義雄(こしむら・よしお)
一般社団法人「人とペットの幸せ創造協会」会長。同ペットフード協会名誉会長。一般財団法人日本ヘルスケア協会理事、「ペットとの共生によるヘルスケア普及推進部会」部会長など。