死んだ愛犬を再生 韓国のクローン犬ビジネス
2018年11月5日(月) MBSニュース
「死んだペットがそっくりそのまま蘇る」クローン技術を使って愛犬と遺伝情報をもった犬を作成する、そんなビジネスが韓国にあります。
手掛けたクローン犬は1300匹あまり、1匹約1000万円で愛犬を復活させるといいます。
その依頼のほとんどは、アメリカやドバイなどの海外から、そして日本からも・・・。
倫理的な批判もあるなか、ビジネスとしてクローン犬を生み出すその現場を取材しました。
クローン犬は1匹1000万円
「韓国・ソウルのスアム生命工学研究院。病院のような雰囲気ですね。この中でクローン犬が作られているということなんです」(辻憲太郎解説委員)
韓国・ソウル市内にあるスアム生命工学研究院。10年前からビジネスとしてクローン犬を作成しています。
さっそく、犬の鳴き声がする部屋に案内されました。
「これが・・・クローン犬ですか?」(辻解説委員)
「全部クローン犬です」(スアム生命工学研究院 王載雄(ワンゼオウン)研究員)
「6匹いますけど、全部同じということなんですか?」
「そうです。1匹のオリジナル犬の細胞の核を使って複製したので、全部同じです」
「子犬のころはそんなに違いはわからないかもしれないですけど・・・確かに白いぶちの入り方なんかが全部一緒ですね」
現在、このケアルームにいる約30匹の子犬はすべてクローン犬。
産まれてから依頼者に引き渡すまでの約半年間はワクチン接種や検疫を受けるため、ここで育てられています。
クローン犬1匹の価格は1億ウォン。
日本円で約1000万円です。
「韓国国内からの依頼はほとんどありません。北アメリカが50%ぐらい、あとの50%はいろいろな国です。現在ここにいるほとんどがドバイからの依頼です」(王載雄研究員)
Q.お客様は富裕層が多い?
「富裕層の方はもちろんいます。でも中間層の方でも、自分の車を売ったりして依頼される方もいます」
これまでに作成したクローン犬は約1300匹。死んでしまった愛犬がそっくりそのまま蘇るとあって、世界中からいろいろな犬種の依頼が来ているといいます。
代理母犬がクローン犬に授乳
このビジネスのきっかけは何だったのでしょうか。
「きっかけはクローン犬を初めて作った研究所でもあるということと、『技術は人に近づかなければならない』という研究所の思いがあるので、商業化するべきだと考えました」(王載雄研究員)
Q.この犬は?
「代理母犬です。授乳のためにいます。ここにいる代理母犬がクローン犬を出産しました」
Q.犬種は雑種ですか?
「雑種です」
代理母となる犬はさまざまな犬種の親になるため、体が大きく落ち着いた性格の犬が選ばれます。
負担がかからないよう代理母犬になるのは1回だけと決められています。
「代理母犬から生まれたクローン犬がお母さんのおっぱいを吸っていると。やっぱり自分から生まれたということをわかっているんでしょうかね。お母さんもおとなしくお乳をあげています」(辻解説委員)
クローン犬が誕生するまで・・・
クローン犬はどのようにして作られているのでしょうか。
実験室に入れていただきました。
「細胞は液体窒素で保管しています。細胞を管理して犬の死後にクローンを作る人もいます。1つのボックスに100個ぐらいのキューブが入っていて、1つのキューブに1000万の細胞が入っています」(王載雄研究員)
何匹分が保管されているは企業秘密とのことですが、依頼があればここから細胞を取り出してクローン犬を作ります。
「オペ室から卵子が運ばれてくると、こちらの部屋でクローンを複製します」(王載雄研究員)
クローン犬を作るには複製したい犬の体細胞から遺伝情報が入った核を取り出します。
そして、代理母となるメス犬の卵子を取り出し、その卵子からも核を取り出します。
そして・・・
「取り出して空になった卵子に遺伝情報が入った核を入れるんです」(王載雄研究員)
複製したい犬の核が卵子に入ることで卵子から代理母の遺伝情報は消え、クローン犬のもとである胚ができるのです。
その胚を代理母犬の子宮に入れ着床。
こうしてクローン犬が生まれるのです。
出産の現場へ
「1か月後に超音波で妊娠しているかどうかを確認します。その1か月後にクローン犬が誕生します」(医師)
術室への入室が許されました。
「特別な許可をいただきまして、手術室に入らせてもらいました。まさにこれからクローン犬誕生の瞬間を目撃することになります。代理母犬が運ばれてきました。まもなく手術が始まります」(辻解説委員)
自然分娩はできないので、帝王切開で取り出します。依頼されているのはヨークシャテリアのメスのクローンです。
「子宮の中に1匹入っています」(医師)
取り出された子犬は、すぐに保育器に入れられ体温が下がらないよう処置が行われます。
鳴き声をあげませんが、母犬の麻酔の影響で眠っているだけなので大丈夫なのだそうです。
「出てきましたね。10分ぐらいで帝王切開の手術が終わりまして、代理母とは全く似ても似つかないヨークシャテリアですね」(辻解説委員)
20分後、目覚めたクローン犬。
か細いながらも産声をあげ、無事に成功となりました。
Q.クローン技術をビジネスに使うと、倫理的な問題・批判が指摘されると思うが?
「新しい技術やアイデアは最初、どうしても拒否反応や反対する声が上がります。例えば人工授精が初めて行われたときも『あれはサタンの仕業だ』とか『神の仕事、領域に人間が入った』とかいろいろな批判がありましたが、今は受け入れられています。クローンという技術もいずれ愛される、そういう時代がくると思います」(スアム生命工学研究院 王載雄研究員)
(11月5日放送 MBSテレビ「ちちんぷいぷい」内『辻憲の「コレだけ」ニュース』より)