「お母さん 助けて・・・」
殺処分ゼロ願い、犬の目線で女子中学生が絵本制作
2018年10月20日(土) 福井新聞
「お母さん 助けて・・・ 息が 苦しいよ・・・」
柴犬「サクラ」は、飼い主の女性「お母さん」に助けを求めながら、ガス室の中で横たわり、やがて息絶える。
犬や猫の殺処分をなくしたいとの思いを込め、福井県鯖江市の中学生、吉崎莉菜さん(14)が制作していた絵本「赤い首輪~私の命はどうなるの」が完成した。
犬猫の殺処分ゼロを訴える絵本を描いた吉崎莉菜さん。
原画の一部を個展で紹介している=福井県鯖江市まなべの館
サクラの目線で、殺処分されるまでを描いたストーリーに「途中から涙で次のページが見られませんでした」「胸が苦しくなった」などの感想が届いている。
「ペットショップ××店セール! 柴犬5万円~、チワワ3万円~、トイプードル5万円~」。
そんなうたい文句が書かれたチラシをお母さんが手にするところから、絵本は始まる。
ショップのガラス越しに犬の「私」は喜ぶ。
「この人が私のお母さんになってくれるのかな」「やったー!私のお母さんになってくれた」
「ある日お母さんは私に赤い首輪をプレゼントしてくれた」。
1歳の誕生日にはケーキももらい「はじめて食べるケーキの味はすごくおいしかったな~」。
やがて、お母さんは留守にすることが多くなり、遊んでくれることもなくなっていく。
留守番中にごみ箱をひっくり返してしまったり、壁を傷つけてしまったりした私をお母さんは怒り、たたくようになった。
ある日、お母さんは私を保健所へ連れていく。
「処分されることになりますがいいんですか?」という職員の問い掛けに「仕事が忙しくて世話が無理なので」。
やがて私はガス室へ送られる。
「私は必死に扉をひっかいた。大きな声で『助けて』と叫んでも、扉は開かなかった」
立つこともできなくなった私は回想する。
「お母さんと遊んだり 散歩したり あの時にもう戻れないのかな・・・」。
だんだん意識がなくなる中で、最後に見た光景は、同じように処分される犬たちが次々と倒れていく姿だった。
殺処分について知った吉崎さんは昨年夏ごろから絵本の制作を決意。
ネットで現状を調べるなどし、1年以上かけて完成させた。
「たくさんの犬や猫が、人間の身勝手な理由で殺処分されていることを知ってもらいたい。捨てられる子が少なくなり、殺処分が減れば」と訴える。
動物愛護活動に取り組む女優の杉本彩さんが絵本を読み、写真共有アプリ「インスタグラム」で「鉛筆に込められた思いがじんじんと伝わってきて胸が熱くなります」と紹介するなど県内外から反響が寄せられている。
1500円(税込み)。
同市道の駅「西山公園」などで販売されている。
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