老犬 愛され天国に 虐待保護余生は幸せ
2014年3月1日 読売新聞
虐待を受け、愛媛銀行に保護された老犬「タロー」が、同行の「ひめぎんグラウンド」で1年余り平穏な余生を過ごし、老衰で死んだ。
28日、職員やグラウンドで練習する愛媛マンダリンパイレーツ選手らの手で、グラウンドの一角に埋葬された。
「最後はみんなに大切にされ、幸せだったのでは」。職員らは手を合わせた。
愛媛銀行は社会貢献として、捨て犬、猫の譲渡会を開くなど、動物愛護に力を入れている。2013年1月、同行の中山紘治郎会長が、松山市内の民家で子犬の頃からつながれたまま飼育を放棄された老犬が2匹いると聞き、飼い主と交渉して譲り受けた。
そのうちの雄がタローで、もう1匹の雌がモモ。
名前は行員が「桃太郎」をもじって付けた。
首は首輪がめり込んで化膿(かのう)し、体は汚物まみれだったという。
同グラウンド管理人で嘱託職員の青木強志さん(71)が、管理人室の横にフェンスを立てて犬舎にし、飼育することになった。
2匹とも散歩をしたことがなかったのか、外に連れ出そうとしても、青木さんの周りをぐるぐると回るだけだった。
青木さんは毎日根気よく外に連れ出し、3か月ほどで散歩ができるようになった。
近所の住民が餌をやったり、練習に来た選手らがなでたりするうち、2匹はだんだんと人なつこくなっていった。
選手と一緒にランニングすることもあった。
金城雅也選手(25)は「毎朝、練習に来ると、タローはしっぽを振って駆け寄ってきた。みんなタローが大好きだった」と振り返った。
タローは2月25日朝、立てなくなった。
26日午後、青木さんと行員に見守られながら、管理人室で静かに死んだ。
察したように、犬舎にいたモモが「ワンワンワンワン」と鳴いたという。
28日、桜の若木が植わったグラウンドの片隅に、青木さんらが穴を掘り、タローを埋葬した。
自主練習中の選手ら約30人も手を合わせた。
青木さんは「タローも幸せだったと思うが、自分も幸せをもらった。犬は大切に育てたら、気持ちを返してくれる。少しでも不幸な犬が減ってほしい」と話した。
県によると、2012年度に県内で殺処分された犬は1196頭だという。