ネコノミクスの影に隠れる捨て猫問題
中には支援ボランティアの活動場所を選んで捨てていく不届き者も
2018年1月16日(火) キャリコネ
一般社団法人ペットフード協会が2017年1月に発表した「平成28年全国犬猫飼育実態調査結果」というデータがある。
これによると、犬が987万8000頭、猫は984万7000頭、合わせて1972万5000頭にも上る。
(文:松本ミゾレ)
特に猫の飼育頭数が伸びていて、ここ数年は右肩上がり。
最近ではこの猫ブームを"ネコノミクス"なんて呼んでいる。
あと数年もすれば、猫がペットの代名詞になる可能性が高い。
しかし、これら多くの飼い猫全てが、本当に適正な飼育環境下にあるのかといえば、残念ながらそうとは言えない。
地域猫は元々人間に飼われていた猫たち 放置すれば生態系に影響
あなたもしばしばテレビやネットニュースで目にするだろうが、世間には飼い猫の世話が行き届かず、繁殖も止められずに飼育崩壊を引き起こしてしまう無責任な飼い主も多い。
多頭飼育崩壊は非常に悲惨だ。
食事も満足にあたえられず、無尽蔵に繁殖し、怪我や病気も放置され、体力のない猫から死んでいく。
飼育途中で飽きてしまい、捨ててしまう愚かな飼い主もいる。
そしてこういう飼育放棄をする連中の中には、無責任にも、他に多くの猫が暮らしているコミュニティを選んで猫を捨てる人もよくいる。
僕はここ2年ほど、特定の地域に住み着き、飼い主のいない猫、いわゆる地域猫の生活を個人的に追っている。
地域猫は、ボランティアの人たちから体調管理や食事の世話などを受けて、大抵は自然公園なんかで静かに暮らしている。
見かける猫の毛色は実に様々だが、いずれも元々そこにいたわけではなく、人間によって捨てられてしまった猫ばかりだ。
そのまま放置していれば次々に繁殖し、衛生面でも悪影響を及ぼしてしまう。
また、別の動物が襲われる可能性も上がる。
無責任な人々がペットの猫を捨ててしまうことによって、捨て猫が生態系に影響を与えてしまう。
これは実に悲しいことだ。
しかしこれは当然猫が悪いわけではない。
自分たちが好き好んで迎え入れておきながら、一方的に捨ててしまう人間が悪いのである。
飼う前に飼い主の資質があるか検討し、飼ったなら責任を持って大切にして
ところで、地域猫を見守るボランティアの人々というのは、地域猫が暮らしているコミュニティに数人から数十人ほどいることが多い。
中高年が多いが最近は若い猫好きの人もいて、自費でご飯を用意したり、猫の排泄で汚れる公園の掃除をしたり、誰かが置きっぱなしにした、アリがたかる猫の餌を処分している。
雨の日も風の日も、それこそ春夏秋冬365日、毎日のように地域猫の様子を見守っているのだから、誰にでもできることではない。
自治体によっては、野良猫は無料で引き受ける病院もあるが、避妊にはお金がかかる。
具合の悪い猫の診察代だってボランティアの自腹だ。
猫を捨てた連中は、自分の不始末を、捨てた猫がその一生を終えるまでに見ず知らずの善意の他人に肩代わりさせ続けているわけだが、きっとそんなこと思いもしないだろう。
なんせ、猫を捨てたらその後どうなるかすら考えようとしない人々なのだから。
笑えないことに、地域猫とボランティアの関係性を知った者の中には「あ、じゃああそこに捨てればいいか」とばかりに猫を放置する奴までいる。
するとボランティアの人たちはその新入りを苦労して捕獲し、病院で検査をしてもらい、避妊を施し、その子が死ぬまで世話をし続ける。こんな不条理って許されるのだろうか。
日本人はブームに弱い。
かつて消費者金融のCMの影響で小型犬が人気になったことがあるが、そのブームが過ぎれば捨てられ、殺処分される犬の数も相当なものだった。
自分がペットの飼い主の資質があるかどうかより先に、欲しいか欲しくないかでペットを迎え入れてしまうのが、この国の人たちの困ったところだ。
2016年度の殺処分数は犬が1万424頭、猫は4万5574頭。
ペットブームの影に、こういう数字が隠れている。
動物はおもちゃではなく家族だ。
せめて家に迎え入れたからには、一生涯大切にしてもらいたいと思う。