土に埋められ・・・
元飼い主が入院・・・
ご長寿猫の28の物語が本に
2018年1月14日(日) sippo(朝日新聞)
まろ眉のマロン(16歳)=祥伝社/ケニア・ドイ
愛猫が“元気に長生きするには、どんな工夫が大切なのか――。
その秘訣を探るように、15歳以上の猫と家族を訪ね、役立つ情報と印象的なストーリーをつづった書籍『ご長寿猫がくれた、しあわせな日々』(祥伝社)が発売された。
「うちの猫『こじろう』が15歳を越えたあたりから通院回数が増え、家族の負担も増えてきたので、他のシニア猫の暮らしを“のぞいてみたい”と思ったんです」
著書のケニア・ドイさん(日本人カメラマン)が、企画の動機を語る。
埋められていた16歳の「だい」(右)と「ちぃ」=祥伝社/ケニア・ドイ
本書には、ケニアさんが2015年からサイト「フェリシモ猫部」の連載「猫又トリップ」で取り上げた15歳~24歳(人の年齢に換算して75歳~100歳位)の猫たちが続々と登場する。
連載後に旅立った猫もいるが、長く命を紡いできた道程や背景はさまざまだ。
たとえば、“偶然の出会い”が今にいたる茶白猫の兄弟。
「だい」と「ちぃ」(合わせてだいちぃ=大地)は16年前、他の兄弟と一緒に、雑草が茂る空き地に埋められていた。
たまたまそばを通りかかった女性が、子猫の鳴き声を聞きつけた。
不自然に花が植えられた土を掘ると、石の下にもがき苦しむ子猫が3匹いた。
まだ生後1~2週間だった。
そのまま家に迎え入れた。
1匹はよそにもらわれ、2匹はそのまま女性宅で育った。
「16歳を過ぎてからは2匹とも腎臓病の予防食に変えて、取材から2年経た18歳の今も元気にしています」とケニアさん。
『ご長寿猫がくれた、しあわせな日々』(祥伝社)
生きるには、まず“運”が大事なのだ。
もちろん、フードの内容や、住む環境も。
大人になって家と飼い主が変わった、こんな猫の例もある。
18歳のチンチラミックス(♀)の「モコ」は、飼い主の入院により、医師を通じて、今の家族である女性が“一時預かり”をした。
飼い主はモコの趣味やごはん内容とともに「太らせるな!」と注意を書いたノートを託し、女性はそれを守った。
「8年経つ今もモコは足腰が強く、階段も軽快に上がる。元の飼い主さんは亡くなりましたが、一時預かりで生まれた“責任”を全うしたご家族だからこそ、ご長寿モコが存在している」(ケニアさん)
もともとの連載タイトルにもある「猫又」というのは、長生きした猫が妖怪になって、尾が二つに分かれるという伝説だが、実際、ご長寿猫には時として不思議なことも起きるようだ。
16歳のブリティッシュショートヘアの「栗(マロン)」は、ケニアさんが取材に行く前に腹水がたまり、救急病院に駆け込んだ。
「拘束型心筋症」ほか多くの病名がつけられ、「いよいよだ」と飼い主が自宅に連れ帰り、介護の準備をすると、けろっと回復してしまったのだという。
「『やっぱり家が最高!』という気持ちは動物も同じですね。持って生まれた力を生かせるかどうかは、家族の判断力にもよるのかもしれません。だからこそ飼い主さんは皆、勉強熱心です」
人の4倍の早さで年を取り、飼い主の年齢を飛び越えてしまう猫は、人生の鑑だともいえる。
その表情は、哲学者のようだったり、笑みを浮かべるようだったり、あどけなかったり、味わい深い。
最近、100匹目のご長寿猫を取材したというケニアさんは、この仕事は意味があり、やめられないと話す。
「世話の焼けるご長寿猫ですが、子猫とは違った可愛さがあり、尊敬もします。長年かけて築いた飼い主さんとの信頼関係があり、『人間はこわいものじゃない』『同じ生き物だ』と認識しているのか、(隠れたりして)取材がダメになることが極端に少ないんですよ」
ハウツー本としてはもちろん、猫の奥深い魅力や生きる尊さを感じさせてくれる一冊だ。
【写真特集】ご長寿猫それぞれにドラマ
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ご長寿猫の28の物語が本に
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