「ロボットは相棒」元年 アイボが12年ぶり復活
2018年1月8日(月) 中日新聞
全国の百貨店で初めてできた高島屋新宿店のロボット売り場。多くの家庭用ロボットが並ぶ=東京都で
1999~2006年に15万台超が作られたソニーの犬型ロボット「アイボ」が12年ぶりに復活する。
「ワンワンワン」と犬の鳴き声を意識し、戌年(いぬどし)の1月11日に発売される。
アイボだけでなく、近年、相次いで登場する家庭用ロボット。
20年には国内全世帯の5%(265万)に普及するとの予測がある。
人工知能(AI)やインターネットの活用で進化した「小さな相棒たち」は、私たちの未来の暮らしを変えるかもしれない。
◆時代の流れ
「話しかけると応えてくれる。一人暮らしの母が喜ぶかな」。
東京・新宿の高島屋新宿店で、東京都世田谷区の主婦手島伊佐乃さん(48)が見比べていたのは高さ30センチほどのロボットたち。
「こんにちは。お友達になって」と呼び掛けてくれ、ネット上の情報を基に人の質問に答えてくれる。
ここは昨年10月に全国の百貨店で初めて設けられたロボット売り場。
価格は数千円から約30万円までと幅広い。
担当の田所博利さんは「AIへの期待が大きく、購入者は高額でも納得してくれる。目標を超える売れ行きだ」と話す。
大手玩具メーカーのタカラトミーで累計25万台超が売れたロボットシリーズなどを手掛ける木村貴幸さんは「玩具は大人が子や孫に、あるいは自分のために買うことが多い。しかし約5万台が売れた『ロビジュニア』は一割が子から高齢の親へのプレゼントだった。こんなにシニアに支持されるとは」と驚く。
多くの人に愛されるようになったロボット。
「少子高齢化」は背景にある一つのキーワードだ。
ペットの世話に自信がない高齢者が購入したり、介護施設が入居者との会話を想定して使ったりする例が増えた。
日本人は、鉄腕アトムなどのアニメを通じてロボットを仲間として受け入れてきた。
技術の進歩で会話や動作のレベルが上がり、親しみはさらに増した。
◆市場拡大期
ソフトバンクが人の感情認識や接客ができる人型の「ペッパー」を、トヨタ自動車が人の表情を読み取って会話をする「キロボミニ」を発売するなど、近年、多くの企業が家庭用ロボット事業に参入している。
これは企業側に「ネットにつながるロボット」を新たな商機につなげたいとの思惑があるためだ。
ロボットを通じて購入者の生活パターンを把握できれば、その情報は次の商品開発などに役立つ。
月々の使用料や通信料を徴収すれば継続的な収入を得られる。
ソニーはアイボを通じた他社との協業を検討。
将来は、一人暮らしの高齢者が長時間アイボと接しない「異常時」に警備会社が出動する、といったサービスが始まるかもしれない。
これからのロボットについてコンサルタント会社「ロボットスタート」の望月亮輔さんは「『この人はどんな話題を好むか』などの情報を覚え、最適な提案や会話ができるようになる」と指摘。
その上で「テレビやラジオと同じように『一人一台』時代になるのではないか」と話し、ロボットが生活に欠かせない存在になると予想した。
(妹尾聡太)
<aibo(アイボ)> ソニーの犬型ロボット。
人工知能の「AI」「相棒」などから命名した。
全長約30センチ、重さ約2・2キロ。
飼い主との触れ合いや成長の記録はインターネットを通じ外部に保存される。
ソニーは飼い主の同意を得てこれらの記録を集め、アイボのAIを発達させる。
本体価格は21万3840円。
これと別に利用料(3年一括払いなら9万7200円)が必要。
昨年11月の発表以来、数量は非公表だが3回の予約販売分が完売した。
2018年1月11日(木) NHK NEWS WEB
ソニーは、12年前に業績不振で生産を打ち切った家庭用の犬型ロボットの後継機を11日、発売しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180111/k10011285271000.html
AI=人工知能を搭載して性能を向上させたのが特徴で、AIを活用した製品やサービスは家庭向けの分野でも激しさを増しています。
ソニーが発売した家庭用の犬型ロボット、aiboは、業績不振のさなかにあった2006年に生産を終了したロボットの後継機です。
東京・港区の本社では、犬の鳴き声の「わんわん」にちなんで午前11時1分から記念のイベントが開かれ、事前に購入を予約し抽選で選ばれた5組にロボットが手渡されました。
今回のロボットは、小型カメラと体じゅうに付けられた20のセンサーで周りの様子を検知しながら、歩き回ったり、尻尾を振ったりします。
カメラで捉えた画像をAIが分析して、飼い主をはじめ人の顔を区別し、相手によって異なる表情や反応をします。
感情を表現する瞳の部分には画質が鮮やかな有機ELを使い、手足の関節にはAV機器で培ったメカの技術を生かした小型モーターを使うことで、より本物の犬に近いこまやかな動きを実現したとしています。
そして、AIが飼い主とのやり取りを学習し、ロボットごとに個性的に成長していくのが特徴です。
本体の価格は19万8000円で、これとは別にネットを通じて機能をアップデートするサービスが月額2980円で提供されます。
当面は国内向けに販売しますが、今後、海外でも販売する方針です。
ロボットを受け取った40代の男性は「この日を待っていました。大事に育てたいです」と話していました。
7歳の男の子は「だっこをすると重いけれど一緒にボール遊びをしたいです」と話していました。
ソニーが12年ぶりに犬型ロボットを復活させ、ロボット事業に参入した背景には、AIの技術が急速に進化し家庭向けの製品やサービスでも競争が激化していることがあります。
開発を担当した川西泉執行役員は「今後、違う形のロボットの開発も検討していく」と話していました。
家庭のリビングルームでAI競争激しさ増す
今回、ソニーが犬型ロボットを復活させた背景には、家庭のリビングルームを舞台にしたAI=人工知能の技術の国際的な開発競争が激しさを増していることがあります。
家庭向けの製品に搭載するAIの技術では、アメリカの大手IT企業のアマゾンとグーグルが、音声で家電製品の操作などを行う「AIスピーカー」で先行しています。
ソニーとしては、これ以上遅れを取れば、AIを活用した家庭向けの新たな製品やサービスで主導権を完全に奪われてしまうという危機感があります。
こで、ソニーはメーカーとして培ったものづくりの技術を生かせるロボットと、AIを組み合わせる戦略を選びました。
「aibo」は、その第1弾に位置づけられた製品で、今後、AIを搭載したロボットで市場の開拓を目指す方針です。
ただ、AIをめぐる国際競争は、企業の業種や規模の枠も越えて激しさを増していて、消費者のニーズに合う製品やサービスをより早く、競争力のある価格で打ち出せるかが問われています。
You Tube https://www.youtube.com/watch?v=ZfcrdQf4TWw