<九州豪雨>飼い犬、8日後に救出 がれきの中 福岡・朝倉
2017年7月18日(火) 毎日新聞
豪雨で損壊した民家のがれきの中から8日後に救出されたグンソウと、治療にあたる坂田院長=福岡県朝倉市甘木で2017年7月15日午後1時5分、山下俊輔撮影
九州北部豪雨で損壊した福岡県朝倉市の民家のがれきの中に閉じ込められた飼い犬が8日後に救出された。
衰弱していたが、今は回復しつつある。
救われたのは小型犬ポメラニアンの雄で名前はグンソウ。
飼い主で同市山田の柿農家、菊池勝昭さん(56)は「グンソウは私たちの家族。見つかってうれしかった。早く元気になってほしい」と祈っている。
【グンソウが見つかった損壊した民家】
豪雨が襲った5日、山間部の奈良ケ谷川沿いに建つ菊池さん宅には、またたく間に膝上ほどの水が流れ込んできた。
菊池さんは孫2人を含む家族5人や、別の住民らとともに避難。
その夜はふもとにある大分道の山田サービスエリア内の建物に身を寄せ、やっと一息ついた。
ただ、そこにグンソウはいなかった。
連れ出す余裕はなかった。
「無事でいてくれ」と念じた。
数日後、自宅へ続く道路の流木や土砂の撤去が進んだ。
ようやく自宅に戻ると、変わり果てた風景があった。
柿を植えた川岸は大きく削られ、裏山の土砂崩れで自宅横の蔵は倒壊し、自宅内にも大量の流木などが入り込んでいた。
被害の大きさに、「避難があと30分遅かったら、危なかった」と体が震えた。
グンソウは交通事故に遭って右足をあまり動かせなかった。
「グンソウのことは半分諦めてしまった」。
そんな思いで、がれきの撤去作業を続けていた13日、がれきの隙間(すきま)に衰弱したグンソウの姿を菊池さんが発見した。
触ると、体が温かかった。生き抜いていた。
がれきが折り重なり、奇跡的に空間ができていた。
ただ飲まず食わずで過ごした影響で衰弱は激しく、腹部の皮膚はただれていた。
菊池さんはグンソウを抱きかかえて水を飲ませた。
「命があって良かった」
グンソウは今、坂田犬猫病院(同市甘木)に入院し、点滴や抗生物質の投与など治療を続けている。
同病院の坂田雷太院長(48)は「最初は危ないと思ったが、今は回復傾向にある。何とか助けたい」と話している。
【山下俊輔】