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Channel: 動物たちにぬくもりを!
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書籍「ゼロ!」

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動物愛護管理法の改正など、動物愛護の環境が整えられ始めている今でさえ、年間約20万頭もの犬猫が殺処分されている。
しかし、約10年前、熊本市動物愛護センターは「動物を殺すのは、嫌だ!」という当たり前の気持ちをはじめて口にし、「殺処分0をめざす!」と公に発表した。
「そんなのは夢物語だ!」との揶揄する声にもひるまず、彼らは一歩一歩進んだ。
そして!!・・・
今、この国でいちばんカッコイイ行政マンたちの感動のリアルストーリー。

動物愛護センターの実情を知る人ほど、絶対に不可能と揶揄した殺処分ゼロ。
そのなかであえて「ゼロをめざす」と宣言した、熊本市動物愛護センター元所長の松﨑正吉氏。
手前の犬は2年2か月と19日という同センター最長保護期間を経て、市内一般家庭に譲渡された。
“生きるチャンスを追求する行政施設”の象徴的存在だ。
心に傷を負った犬は、人間に強い恐怖心を抱くタイプが多い。
コミュニケーションが難しいため家庭犬にむかない、という理由から譲渡対象にならないケースもある。
しかし、実際は根気よくアプローチすることで変化を見せる犬は多い。
職員の地道なケアによって、殺処分をのがれた犬は数えきれない。
命の尊さや強さ、動物のかわいらしさを知り尽くしている職員にとって、殺処分はもっとも辛い仕事だ。
「仕事だから」では割り切れない怒りや悲しみが、この状況を少しでも変えたいという原動力になっている。
しつけ方法や犬の気持がわからないまま「こんな犬はもう飼えない」と動物の引取りを求める飼い主は多い。しかし職員からみれば「おまえたちいいコなのに、なんで置いていかれんとイカンだったんだろうねぇ」という犬がほとんど。
保護犬たちに愛情を注ぎ、適切なトレーニングをすることも命を救う仕事のひとつなのだ。
保護している犬たちに、少しでも快適に過ごしてほしいと考えている職員。
予算も設備もないなかで、暑さ寒さをしのぐため工夫を重ねている。
かつてより仕事は大幅に増えたが、それで文句を言う職員はいない。
年々減少する犬の殺処分にくらべて、猫については高い殺処分率のままだった同センター。
ガス処分機に入る猫のほとんどが離乳前の子猫だったが、マンパワーや予算不足を理由に対応できずにいた。
しかし、市民ボランティアの協力をきっかけに、世話に手間がかかる子猫を救うことが可能に。現在は職員も“猫連れ通勤”をしながら子育てに参加。
こうして救われた多くの猫が、新しい飼い主のもとでしあわせに暮らしている。
飼い主から飼育放棄された流行犬種。
愛護センターに保護されたときは毛が伸び放題で、まるで汚れたモップのようだった。
新しい飼い主をさがすためには、外見を整えることも大切。職員によるシャンプーやトリミングで、本来の姿に戻ることができた。
殺処分ほぼゼロの実現によって、全国から注目を集めた同センター。
県内外から多くの賞賛の言葉が集まったが、職員の多忙な日々はかわらない。
ここは動物を殺処分しない行政施設ではなく、動物を殺処分しないように今も職員が最大限の努力を続ける行政施設なのだ。
譲渡会の日、市民ボランティアから寄付されたバンダナでおしゃれした保護犬。
これまで大切に世話してきた動物たちに新しい飼い主が決まることは、職員にとって最大の喜びだ。








片野ゆか(かたの・ゆか)
1966年東京生まれ。
05年『愛犬王 平岩米吉伝』で第12回小学館ノンフィクション大賞受賞。
『旅する犬は知っている』(KKベストセラーズ)、『犬が本当の「家族」になるとき』(講談社)、『アジワン~ゆるりアジアで犬に会う』(ジュリアン)、『ポチのひみつ』(集英社文庫)など著書多数。
話題を呼んだ『北里大学獣医学部 犬部!』(ポプラ文庫)は、二誌同時コミック化(『犬部! ボクらのしっぽ戦記』高倉陽樹・画 はまなかあき・シナリオ協力 小学館「少年サンデー」、『犬部!』衿沢世衣子・漫画 秋田書店「エレガンスイブ」)もされている。


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