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「猫の街」長崎、殺処分数全国ワースト 県が新しい「共生」模索

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「猫の街」長崎、殺処分数全国ワースト 県が新しい「共生」模索

2017年5月25日(木) 西日本新聞


街でくつろぐ猫にカメラを向ける「ねこさるく」の参加者。耳には不妊去勢治療を施した証明の切り込みが施されている

街を歩けば猫に出合う-と言われるほど長崎には猫が多い。
いわゆる「野良猫」だ。
愛らしい姿を目当てに訪れる観光客がいれば、モチーフにした菓子や雑貨もある。
一方で殺処分が後を絶たず、長崎県内の猫と犬を合わせた処分数は2014、15年度の2年連続で全国トップ。
「生」と「死」が交錯する街で、「共生」を模索する取り組みが少しずつ進んでいる。

今月13日、長崎市中心部の丸山公園。
市内を歩いて魅力を探る観光イベント「さるく」の一つ、猫と触れ合う「ねこさるく」の参加者が集まった。
リピーターを含め県内外から13人。
日傘やTシャツにデザインを施した根っからの猫好きも。
主宰する神徳典子さん(47)が「かわいい猫たちに会いに行きましょう」と盛り上げ、路地裏へ。
細く入り組む石畳は格好のすみか。
寝転ぶ姿に「くうぅ、癒やされる」と夢中でシャッターを切る参加者たち。
インターネットで知った東京都の会社員斉木一郎さん(50)は「のんびりしている姿がいい」。
1時間半の散策を楽しんだ。
神徳さんは殺処分が多い現状を知り、04年に有志で「長崎猫倶楽部」を発足、子猫の引き取り先探しを始めた。
自腹で野良猫に不妊手術をしたこともある。
手術の痕跡があれば処分対象にならないためだ。
こうした実情も含めて効果的に啓発しようと、12年にさるくをスタートした。
「命を大切にすることで、街の魅力はもっと増す」と考える。

長崎に野良猫が多い背景
県のまとめによると、15年度に県内で殺処分された犬と猫の数は全国最多の4370匹。
うち猫が3585匹に及び、県や市の施設に持ち込まれた数の95%が処分された。
野良猫が産み落とした子猫が大半だ。
施設は県内7カ所。
一定期間内に引き取り先が見つからなければ処分される。
鉄製の箱(縦・深さ50センチ、横1メートル)に猫や犬を入れて鍵を掛け、二酸化炭素を流入して失神、死に至らせる仕組み。
この間、約10秒。
長崎市の施設、市動物管理センターの松下明嗣所長は「生かしてやりたいが、センターですべてを飼育するのは不可能だ」と漏らす。死骸は焼却する。
長崎に野良猫が多い背景には特有の地形や気候がある。
(1)車が入れない坂道が多く、事故に遭う確率が低い
(2)温暖なため冬場に凍死しない
(3)海に面して魚など食べ物を得やすい
民間グループ「長崎の町ねこ調査隊塾」によると、長崎市内のある地区で確認した1ヘクタール当たりの野良猫の数(猫密度)33匹は、北九州市の住宅地の5倍に及ぶという。


グラフ

県の負担で野良猫の不妊去勢治療
殺処分を減らすため、県は野良猫に対する不妊去勢治療の推進事業を本年度から拡充。繁殖を抑えることで、野良猫の生息を適正な規模に絞り込む計画。
犬も含めた殺処分数を19年度までに2185匹に減らす。
推進事業は14年度に処分数が全国ワーストになったことを受け、翌15年度にスタート。
町内会など地域住民の同意を得られた場合に限り、その地区の野良猫の不妊去勢治療を県の負担で行い、治療済みの猫は耳に切り込みを入れて区別する。
その代わりに、治療を行った猫が生涯を終えるまで地域ぐるみでえさやトイレの世話をする。
地域も応分に負担する新しい「共生」の試みだ。
年間約40匹に実施してきたが、応募が多いため本年度から200匹に拡充。
長崎市は同様の制度を一部住民負担(2千円)で14年度から導入、大村市は本年度から住民負担ゼロで取り組む。
県は引き取り先への譲渡推進も図り、これまで年2回だった譲渡会を6回に増やす。
こうした取り組みは全国で進み、各県とも殺処分は大幅に減少。
長崎県内の処分数も減っているが、県生活衛生課は「まだ全国的に多い水準だろう。少しでも殺処分を減らせるようにしたい」としている。

ネズミ駆除で飼育推奨も
国内に猫が持ち込まれたのは奈良時代にさかのぼる。
大陸から贈られた貴重な経典、穀物をネズミから守り、愛玩動物としてもかわいがられた。
人間との「共生」が成立していた。
猫が人間を救う決定的な出来事がある。
14世紀の欧州で猛威を振るい、国内では明治時代に患者が発生した感染症ペスト。
熊本県小国町出身の細菌学者、北里柴三郎(1853~1931)は1894年、ペスト菌がネズミを介して広まることを突き止め「感染防止のため、一家に1匹猫を飼うとよい」と提唱。
国も全国に猫の飼育を推奨する通知を出した。
だが、終戦後は下水道の普及で衛生環境が改善され、木造住宅に代わってマンションなど気密性の高い家が増えたことでネズミは減少。猫の「役割」も低下した。
長崎に多い大陸由来の尾曲がり猫の生態系などを調べる「長崎尾曲がりネコ学会」の高島茂夫会長は「ネズミを駆除する必要が薄れたからといって、人間がこれまで頼ってきた猫を一方的に迷惑がるのはおかしい」と指摘している。


「生かしてやりたいが・・・」殺処分に使用される鉄製の箱


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