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老漁師と愛犬、12年間毎日出航

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太平洋に、老漁師と相棒の犬1匹 12年毎日出港、キンメを追う

2017年5月4日(木) sippo(朝日新聞)


徳永さんの船に乗るジョン

12年間、毎日のように漁船に乗っている犬がいる。
高知県奈半利町に住む漁師の愛犬だ。
名前はジョン(オス、12歳)。
今日もご主人の船の上、最盛期に入ったキンメダイを追って、黒潮の流れる太平洋へと向かう。
真夜中、ジョンは軽トラックの荷台に乗って、徳永悦男さん(77)と加領郷(かりょうごう)漁港に着く。
徳永さんがひざを痛めているので、車は妻の通子さん(72)が運転している。
午前1時、悦漁丸(7・3トン)に乗り、太平洋は遠く室戸岬沖約60キロへと向かう。
夕方に漁港に戻るまでの15時間ばかり、徳永さんとふたりきりの時が流れる。
2度の食事も一緒だ。
沖に出ると、魚群探知機で漁場を探る。
針を70個つけた約400メートルの縄を海中に沈め、魚がかかるのをひたすら待つ。

■相棒ジョンが話し相手
青い水平線と遠くを走る船影しか見えない。
聞こえるのは風と波の音だけだ。
「今日はよう釣れたな」「暑いな」「大きい入道雲が見えるぞ」。
徳永さんは甲板で昼寝をしているジョンに話しかける。
「海の上は退屈なんだ。ジョンが話し相手さ。女房よりも過ごす時間が長いよ」と徳永さん。
足摺岬と室戸岬の間の太平洋がふたりの世界だ。
徳永さんは中学を出て、すぐにカツオの一本釣り漁船に乗った。
25歳で独立し、船を持った。
漁師生活は52年になる。
犬が好きで、船に乗せるのが夢だった。
2005年10月、生まれたばかりの子犬を室戸からもらってきた。
「犬は大きくなってからは船に乗らない」と徳永さん。
すぐに船に乗せて漁に出た。
ジョンは2日間だけ船酔いしたが、それからは平気だった。
しけや台風でなければ毎日、海に出る。
漁が終わる時間になると、ジョンは船倉の冷凍庫をのぞき込む。
たくさん釣れたときは明るい顔をするが、釣れなかった時はしょんぼりしているらしい。
シイラなど変わった魚が釣れるとほえる。
真っ赤なキンメダイをカゴいっぱいにして漁港に帰った21日、ジョンは得意そうに「ワンワン」とほえた。
すると「ジョン元気か?」と他の漁船から声が飛んだ。
徳永さんは「孫より可愛いんだ。ジョンは大事な相棒だよ」。
狂犬病の予防接種を打つ日には、ジョンは船に乗らない。
そんな時は本当に寂しいそうだ。
徳永さんとジョンがとったキンメダイは、長距離トラックで東京の築地市場へと運ばれていった。

キンメダイを水揚げする徳永さん見つめるジョン


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