「ねこあつめの家」 猫好きにはたまらない
大人気スマホゲームの映画化にスターネコが大集合
2017年4月15日(土) 産経新聞
「猫映画は増えたが、猫ファンの気持ちを真剣に考えた作品は少ない」と語る永森裕二プロデューサー(岡本耕治撮影)(写真:産経新聞)
空前の猫ブームの最中、スマートフォンの人気ゲームアプリケーション「ねこあつめ」を映画化した「ねこあつめの家」が東京・新宿武蔵野館などで公開中だ。
ひたすら猫が来るのを待つだけ、というゲームの特徴を生かし、劇中でもほぼ何も起こらない奇妙な作品。企画・脚本を務めた永森裕二プロデューサー(48)は「ねこあつめユーザーに寄り添った作品。落ち着いて、ほんわかした映画だってあってもいい」と訴える。
■何も起こらない!
「ねこあつめ」はエサやおもちゃを設置して、猫が現れるのを待ち、ながめるだけ-という地味なゲームだ。
しかし、シンプルな仕掛けと猫の愛らしさが受けて、2000万ダウンロードを記録。
人気は海外にまで及んでいる。
「幼獣マメシバ」(2009年)や「猫侍」(13年)など動物映画を数多く手がける永森プロデューサーは、「『猫侍』ファンの大半が、ねこあつめユーザーだった。興味を持つうち、映画化できるのでは、と思い始めたんです」
永森さんは、15年春にゲームの開発元「ヒットポイント」(名古屋市)に連絡を取るが、反応は否定的だった。
「映像化の話は多数来たが、猫同士がしゃべるような、ゲームの内容にそぐわないものばかりで、全部断っていたそうです」
ヒットポイント側の要望は、「アプリユーザーの気持ちに寄り添った作品であってほしい」というもの。
「つまり、ほんわかしていて、毒がなくて悪が登場しない内容。でも映画は何か“外圧”がないと盛り上がらない。悩みましたが、人間が猫を勝手にながめ、少し癒やされる内容にすればいいかと」
この提案に開発側も「それならば」と納得。
スランプ中の小説家(伊藤淳史)が住み着いた田舎の一軒家に、猫が次々と姿を見せ始め・・・という物語が誕生した。
猫の豆知識も飼育のノウハウも、愛らしいサービスショットもほぼなし。ヒロイン役の忽那汐里(くつな・しおり)と伊藤のラブロマンスすらない。
永森さんは、「本当になにも起こらない。でも、見ていると落ち着いて、ふんわりできる映画だってあっていいのでは」と語る。
■スター猫が集結!
「ねこあつめの家」は、CHOYA梅酒のCMのシナモン、映画「先生と迷い猫」(15年)のドロップ、「猫なんかよんでもこない」(16年)のりんごなど、動物プロダクション所属の計16匹の“スター猫”が大挙出演する豪華作品。
「動物映画は、普通はかわいさ優先で選ぶ。でも、今回は猫を多数登場させるので、“実力”重視。必然的にスター猫が集まることになった」と永森さん。
調教できる犬と違い、猫の撮影は実に困難だ。
「普通の猫は現場からすぐ逃げる。でも今回出演の猫たちはカメラ目線で3秒じっとしていられるとか、道を横切る、屋根の上にちょこんと座っている、といった動きができる。みんな天才。これまでで一番楽でした」
気になるギャラについては、「それはちょっと言えませんが、動物は高い。人間より高いかどうかは、俳優によります。これだけそろえるのは、相当ぜいたくです」ということだった。
■猫ブームの背景は
インターネットには猫の写真や動画があふれ、猫映画も多数登場。
空前の猫ブームといっていい。
永森さんは「ブームに気づいたのは、3年前くらい。でも、合理的な理由は誰にも説明できないのでは。個人的に思うのは、動きがトリッキーでかわいく、自分勝手ですり寄ってこないのがいい。また、屋内飼いが多いから、散歩で公の場に連れ出す犬に比べて、プライベートな感じがするのも大きいのかも」と分析する。
犬映画と猫映画を手がけるうち、犬・猫ファンの間に大きな違いがあることに気づいた。
「犬ファンは、シバイヌなど自分が飼っている犬種以外に、ほぼ興味を持たない。だから、犬映画の犬種選びは重要。一方、猫ファンはどんな猫でも『猫だ~』とかわいがる。どこかの島に野良猫が多数いると人が詰めかけますが、野良犬がいっぱいいる島には、たぶん誰も行かない・・・というか危ない。まあ、犬派のほうが冷静ですね」
「かつての『名犬ラッシー』のような賢い動物が活躍する映画は、はやらない」ともいう。
「今、人気があるのは、犬や猫のハプニング動画。しつけた動物による、きちっとした芝居には、もはや需要がないのでは」
最後に、「いろいろな映画があるが、心を落ち着けるとか、何も考えないですんだとか、そういうことにお金を払う習慣が広がるとうれしい。ぜひみなさんお誘いの上で見てほしい」と語った。
(文化部 岡本耕治)
■ねこあつめ
スマートフォン向けゲーム。2014年にリリース。庭先にごはんとグッズを置いておくとネコがやってくる。ネコがお礼に置いていく「にぼし」を集めてグッズなどに交換し、さらにネコを招くのが基本的な遊び方。関連書籍、グッズも多数販売。
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ねこあつめの家
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