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次の動愛法改正に向けて動き出した超党派議連

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鼎談 尾辻秀久×福島瑞穂×松野頼久
 次の動愛法改正に向けて動き出した超党派議連

2016年12月24日(土) sippo(朝日新聞)

たくさんの課題を積み残した2012年の動物愛護法改正。
次の法改正に向けて、超党派の議連が動き出した。
主眼は動物取扱業者への規制強化。
良貨が悪貨を駆逐するために──。
「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」の3人が語り合った。
(司会・構成/太田匡彦 撮影/加藤夏子)


(左から)尾辻秀久・自民党参院議員、福島瑞穂・社民党参院議員、松野頼久・民進党衆院議員

――司会 まずは議連を立ち上げた背景について教えて下さい。
尾辻 日本ではいまだに年間10万匹近いの犬猫が殺処分されています。愛玩動物をこれほど殺さない国にしたい、と考える国会議員が集まったのが始まりでした。私自身は実は犬派ですが、我が家にも猫がいて、皆さんとにかく動物が好きで参加してくれました。

松野 僕はもう10年くらい殺処分や動物取扱業者の問題に取り組んできて、国会でも取り上げてきた。そんななかで福島さん、尾辻さんの熱意で議連が立ち上がり、当然のこととして参加しました。

福島 小学生のころ、近所の家で飼っていた犬が私によくなついていました。 田舎だったということもあり、当時の風潮として、放し飼いにされていました。その犬がある日、野犬狩りにあって保健所に連れて行かれたんです。父と一緒に連れ戻しに行ったのですが、そこにはたくさんの犬がいました。みんな思い詰めたような表情をしていたのが強く印象に残っています。それが私がこの活動にかかわるようになった原点です。

尾辻 「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」という名称にしたのは、皆さんが集まりやすいようにするため。単に「動物愛護」と言うとさまざまに議論が広がってしまう。動物愛護をしようというのに、人間同士がケンカしていてもしょうがないですから。


松野頼久議員(まつの・よりひさ)

殺処分問題解決へ 大量生産、大量消費という形を改める(松野頼久議員)

――司会 11月21日の総会では、動物愛護法改正に向けたプロジェクトチームを立ち上げました。
松野 目標を「殺処分ゼロ」に置いているのですが、殺処分の問題を解決するためにはやはり繁殖業者や流通・小売業者の問題に取り組みを広げていかないと、結局は真の意味での殺処分ゼロは達成できないという現実があります。

福島 論点がたくさんあり、どこにフォーカスするかを話し合っているうちに何年もたってしまってはいけません。だからこの度、動物愛護法の改正案を議連として作ろうということになり、松野さんに座長になってもらいました。

――司会 前回法改正以降の課題はどこにあるという認識ですか?
松野 やはり生体の繁殖から流通、小売りまでにかかわる第一種動物取扱業者の問題が大きいです。特に8週齢規制を確実に実施することが重要で、さらには取扱業を認可制にしたい。ただ僕たちは、ペットショップや繁殖業者を目の敵にしているわけじゃない。今の大量生産、大量消費という形を改めて、良質なところにきちんとやっていってほしいと思っています。
加えて、地方自治体の引き取りの取りのあり方についても検討が必要かもしれません。前回の改正で悪質なリピーターや業者からの引き取りを拒否できるようにした。性善説に立って改正したら、業者が野山に遺棄したり、引き取り屋という最悪のビジネスが活況を呈したりした。もし現行法のまま残すなら、各地方自治体が動物取扱業に対してきちんとチェック機能を働かせる状態にしないといけない。

福島 札幌市の動物愛護管理条例で8週齢規制が努力義務化されるなどの流れができてきていますが、8週齢規制が望ましいということは打ち出していかないといけない。8週齢規制の導入にはマイクロチップの問題をどうするのか、ということもからんできますね。それから犬や猫を飼育する際のケージの大きさを数値規制することも大切な課題。動物虐待の定義も論点として出てくると思います。超党派の議連として、いい提案をしていきたいです。

――司会 総会の際には尾辻会長から「議連としての数値を盛り込みたい」という趣旨の発言もありました。
尾辻 私は会長の立場で、皆さんの声を聞いて「この辺かな」と思うところでまとめたい。皆さんの声を聞いているとそういう感じだったから、じゃあその辺はやらせてもらうのがいいかなと。議連としては、その方向で行きましょうということです。

福島 松野さんからは繁殖制限の話も出ました。

松野 動物愛護法では、例えば「動物を殺す場合の方法」について「できる限り苦痛を与えない方法で」と書かれています。ところが、ではその方法とはなんぞや、ということは書かれてない。繁殖制限や飼養施設規制もそうなんですね。尾辻先生もおっしゃっているように、ぼやっとした言葉で書かれているこうした条文の中身を詰めていく必要があると思っています。


尾辻秀久議員(おつじ・ひでひさ)

法律による根拠で環境省を後押し それも議連の仕事(尾辻秀久議員)

――司会 地方自治体と環境省の関係はいかがですか。
福島 議連を作ってつくづく思ったのは、動物愛護行政が自治事務だということもあり、環境省のイニシアチブがとにかく弱い。そして首長さんの意識によって、自治体のがんばり具合にものすごく差がある。まず環境省に頑張ってもらうには、やはり国会がイニシアチブを取って、超党派でものを言い、動物愛護法をきちんと変える議論をすることが一番いいと思う。

尾辻 環境省を見ていると、「がんばろう」と思っていることは感じる。ところが、環境省が都道府県や市町村と話をした時に、「なんの権限があって言うのか」と開き直られているんじゃないか。環境省が自信を持ってしっかりものが言えるような環境を作らないといけない。そのためには、法律による根拠を作ってやらないといけない。「この法律に基づいているんです」と言えば、都道府県や市町村もちゃんと聞くでしょう。今度の法改正では、環境省ががんばれるような環境作りも我々の大事な仕事だと思っています。

松野 歴史的経緯を言えば、もともと狂犬病予防法があって、これは厚生労働省。さらに獣医師の関連の獣医師法があり、これは農林水産省。そこに環境省の動物愛護法という観点が入ってくる。動物に関する法律が整理できていないのも、いまのいびつな状況の原因であると思います。たとえば、繁殖業者のもとで子犬や子猫が生まれるときは、獣医師立ち会いのもとでなければいけないという法改正も必要だと考えています。そこで獣医師が出生証明を書けば、週齢がきちんと管理でき、安全な出産もでき、繁殖現場に獣医師の目も入るようになる。そうなると獣医師法もからんでくるわけです。

尾辻 環境省が動物愛護を掲げてやろうとすると、以前までの流れとは違う流れになるから、現場でお互いやりづらいところがあるんですね。2020年には、日本でオリンピック・パラリンピックが開催される。そこまでには、うまく整理しておかないといけないですね。

――司会 さらには、自治体が指導・監督しやすいように数値規制を入れていくと。
尾辻 そういうことですね。

福島 良貨が悪貨を駆逐するようになればいいんですよ。

松野 飼い主の皆さんも「安いから買う」という認識ではなく、飼育時も含めて「ある程度のコストは払ってもいい」という人たちが増えていると思います。

尾辻 面倒を見るのはお金がかかるよね。我が家では、娘が飼っている猫の医療費に一番お金がかかっている。

松野 犬や猫を手厚い体制のなかできちんと飼いたいという人たちを増やしていかないといけません。

尾辻 日本人は基本的にやさしい。みんなでその気になれば、日本の動物たちはより楽しく幸せに暮らせるようになるだろうと思っています。

――司会 法改正に向けて、議連の役割はますます重くなる。今後のスケジュール感や各党の議連との兼ね合いは?
松野 まず超党派議連として、独自に法改正に向けて意見を集約したい。各党の議連と超党派の議連の調整もこれから必要になってくる。環境省の中央環境審議会での検討も並行して行われるでしょう。


福島瑞穂議員(ふくしま・みずほ)

8週齢が望ましい 超党派議連としていい改正案を(福島瑞穂議員)

福島 議連には自民党から共産党まですべての党が入っているので、よく議論をして、いい案を作りたいですね。

尾辻 座長にはご苦労をかけるけれども、この超党派議連の案をまとめていただくと同時に、各党にある議連と十分打ち合わせしていただいて、最初からそことの意見を交換して超党派議連の案ができると、非常にまとまりやすい。党派によって意見が違ってくるのでこれはなかなか難しいのですが、ぜひまとめていければと思います。

(朝日新聞タブロイド「sippo」(2016年12月発行)掲載)

尾辻秀久議員(おつじ・ひでひさ)
1940年生まれ。自民党参院議員。厚生労働相などを歴任。超党派議連の会長。

福島瑞穂議員(ふくしま・みずほ)
1955年生まれ。社民党参院議員。消費者少子化担当相などを歴任。超党派議連の事務局長。

松野頼久議員(まつの・よりひさ)
1960年生まれ。民進党衆院議員。内閣官房副長官などを歴任。超党派議連の会長代行。


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