<病院勤務犬>介助には向かなかったけど・・・患者の癒やしに
2016年12月1日(木) 毎日新聞
入院患者を笑顔にしているミカ=釣田祐喜撮影
身体障害者を助ける介助犬の適性はなかったが、全国でも珍しい病院の「勤務犬」に転身、入院患者の癒やしの存在として活躍する犬がいる。
スタンダードプードルの「ミカ」(6歳、雄)。
聖マリアンナ医科大病院=川崎市=で週2回活動する。
優しい目と、黒い巻き毛に覆われた愛らしい姿で、心身の病や出産などで不安を抱えた人を勇気づける。
担当医が先月、神戸市であった日本身体障害者補助犬学会で取り組みを発表した。
勤務犬は、同病院小児外科の長江秀樹医師(41)らが導入。
きっかけは2012年、白血病で入院していた子供に「犬と遊びたい」と頼まれたこと。
病棟で犬との面会を実現させた。
こうした動物介在療法は患者の不安を和らげ、闘病に前向きに取り組むよう促し、治療の効果を上げると期待されている。
長江さんは13年、日本介助犬協会(横浜市)の高柳友子事務局長に相談した。
たまたま協会で訓練中だったミカは繊細な性格で介助犬としては不向きとされた。
だが、体をなでられると喜ぶなど、人と触れ合うのが好きで、協会は「動物介在療法に向いている」と判断。病院への貸与を決めた。
担当の看護師が自宅で世話しながら、ミカの心身の調子を日々確認。
病院の職員証も発行され、昨年4月から活動を始めた。
医師でもある高柳さんによると、治療のパートナーとして特定の犬を病院で定期的に活動させるのは珍しいという。
ミカは「出勤日」に産科、小児病棟などで1日当たり5~6人の患者と会う。
今月14日の出勤日。
産科病棟の病室では、切迫早産で入院中の女性(36)がミカと長江さんを迎えた。
空きベッドに座ったミカの腰を女性がさすると、ミカは気持ち良さげに横たわった。
女性は「点滴を何度も取りかえて憂鬱になりがちだが、ミカちゃんに触ると気持ちが落ち着き、頑張れる」とリラックスした表情。
長江さんは「人では難しい、患者の『やる気のスイッチ』をミカは押せる」。
ミカを訓練した日本介助犬協会の桜井友衣さんは「介助犬でなくても、新しい仕事で大切な役割を果たしている。ミカに『すごい』と伝えたい」と語る。
【釣田祐喜】
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